「これ、ほんとにバッシュなの? スニーカーじゃなくて?」
Nike Book 1を初めて見たとき、多くの人がそう思うはずです。レトロなシルエット、ワークウェアから着想を得たアッパーの質感。まるでAir Force 1のような佇まいで、コートで汗を流すためのシューズには到底見えません。
でも、です。これを履いて実際にコートに立った人たちの声を聞いてみると、「見た目だけじゃない」という言葉が何度も返ってくるんです。
今回は、デヴィン・ブッカーの初シグネチャーモデルであるNike Book 1を、実戦派バスケットボーラーの目線でとことん掘り下げていきます。おしゃれなだけじゃないのか、それとも本物の戦闘力を持っているのか。気になるサイズ感からおすすめカラーまで、忖度なしでお届けします。
なぜNike Book 1は「バッシュに見えない」のか
まずは、このシューズ最大の話題であり、最大の誤解を生んでいる「デザイン」について触れておきましょう。
開発段階からブッカー自身が掲げていたコンセプトが「Future Classic」。コートを離れたオフコートのスタイルと、試合中のパフォーマンスをシームレスに融合させること。これがすべての出発点でした。
実際に、そのシルエットにはAir Force 1、Blazer、Air Jordan 1といったナイキの名作たちのDNAが息づいています。アッパーの素材もただの合皮ではなく、デニム、キャンバス、ツイル、スエードなど、まるでヴィンテージのワークジャケットから切り出したかのような質感。ここまでクラシカルな雰囲気を持ったバッシュは、近年ちょっと記憶にありません。
だからこそ、スニーカーヘッズには刺さるし、逆に「こんなオシャレ靴で激しく動けるわけがない」という先入観も生まれるわけです。
評判はボロボロ? ネットの「使えない」評価を検証する
で、ここからが本題です。
正直なところ、ネット上では「Book 1は実戦に向かない」という声がかなり多いんです。体感的にはレビュー全体の8割くらいがネガティブ寄りじゃないか、という意見もあるくらい。
でも、これってちょっとミスリードだなと感じています。
なぜかというと、その評価の多くは「こんな見た目のシューズがバッシュなわけがない」というイメージ先行のものか、あるいはNBAレベルのハイカット、ハイスペックモデルと比較した上での厳しい意見だからです。
実際にハーフコートのピックアップゲームや、週末のバスケサークルで使っているユーザーの生の声を拾ってみると、印象はガラリと変わります。「ミッドレンジからのプルアップやステップバックが決めやすい」「まるでブッカー本人になったような感覚」といった、ポジティブな体験談がちゃんと存在するんです。つまり、このシューズの評価は「どこで、誰が、どんなプレースタイルで履くか」に大きく依存していると言えます。
実戦性能を分解! クッション・グリップ・フィット感はどうなのか
イメージ論は一旦脇に置いて、実戦性能をパーツごとに冷静にチェックしていきましょう。
クッション性:踵は弾む、前足は感じる
Nike Book 1のミッドソールには、かかと部にトップロード式のZoom Airユニットが仕込まれています。これが結構気持ちいい。着地時の衝撃をしっかり吸収しつつ、次の一歩への反発力に変えてくれる感覚があります。土踏まずのシャンクプレートと、それを囲むTPUの壁が安定性も確保しているので、ぐにゃっと沈みすぎる心配はありません。
一方で、前足部にはZoom Airは入っていません。この設計にはブッカーの明確な意図があって、「コートの感触をダイレクトに感じたい」というこだわりです。足裏全体で床を捉える感覚がほしい、ミッドレンジで抜き差しする駆け引きを大事にしたい。そんなプレーヤーには理想的な設定です。ただ、踏み切りの瞬間に「ドンッ」と跳ね返されるような推進力が欲しい人には、少し物足りなさを感じるかもしれません。
グリップ力:音が違う。そしてアウトドアにも強い
アウトソールには、ヘリンボーン(山形)パターンから着想を得たトレッドが採用されています。これがまたよく鳴くんです。コートで「キュッ」と鳴るあの音、好きな人にはたまりません。
肝心のグリップ性能もかなり高いレベルで、ストップ&ゴーの多いプレースタイルでも不安を感じることは少ないでしょう。そして、ここが意外なポイントなのですが、アウトドアコートでの耐久性がかなり良好だというテスト結果が出ています。見た目が綺麗なだけに「すぐに擦り減りそう」と思いきや、ザラザラのコンクリートの上でも意外とタフに付き合ってくれる。これは嬉しい誤算です。
フィット感とサイズ選びの注意点
ここは購入前に一番気をつけてほしいポイントです。
かなり多くのレビューで「小さめ」「幅が細め」という指摘が上がっています。甲高・幅広の僕が普段履いているサイズで試着したところ、たしかに小指のあたりが当たる感じがありました。全体の長さというより、ワイズが狭いという印象です。なので、普段のナイキバッシュよりもハーフサイズアップを強くおすすめします。足幅が極端に細い人だけ、ジャストサイズで大丈夫かな、という感じです。
アッパー素材はカラーによって異なり、レザーやキャンバスなど伸びにくいものも多いので、試着できる環境なら必ず確認したほうがいいでしょう。
唯一にして最大の弱点:通気性
これは擁護できません。正直、めちゃくちゃ蒸れます。ワークウェアライクな重厚な素材感が魅力なのですが、その代償として通気性はかなり犠牲になっています。夏場の体育館での激しいゲームでは、足元にかなりの熱感がこもります。ここはもう、見た目とトレードオフだと割り切る必要がありそうです。
このバッシュは「どんな人」に刺さるのか
性能をフラットに見てきた上で、Nike Book 1が誰にとっての「ベストバイ」なのかをまとめてみます。
まず、こんな人にはドンピシャです。
- バッシュは履きたいけど、ゴツゴツした近未来的なデザインがどうしても好きになれない人。
- 試合後、そのまま街に繰り出せるような、オンオフ兼用の一足を探している人。
- ミッドレンジからのショットや、緩急を使った1on1が武器のプレーヤー。
- 「みんなと同じカリーやレブロンはちょっと…」という、通好みなチョイスをしたい人。
逆に、こんな人にはあまり向かないかもしれません。
- 最前線で高負荷なフルコートの試合を主戦場にしているガチ競技者。
- とにかくブーストやZoomXのような、ふわふわ・ドンピュッとした反発を求める人。
- シューズの通気性を何よりも重視する、汗っかきな人。
おすすめカラーは結局どれ?
カラバリが豊富なのもBook 1の魅力です。あえて「これ!」と一つ挙げるなら、初回リリースの「ミラージュV2」、もしくはオレンジのアクセントがさわやかな「サンセット」が、どんなコーデにも合わせやすくておすすめです。どうせなら、ブッカーの出身地をイメージした「フラッグスタッフ」や、デニム素材が異彩を放つ「フォレスト・グローヴ」のような「攻めたカラー」を選んで個性を主張するのも面白いですよ。
最終結論。「カッコいい」は、もう立派な性能だ
改めて問います。Nike Book 1は、本当に「使える」バッシュなのか?
答えは、イエスです。ただし、「君がどんなバスケをしたいかによる」という条件付きです。
NBAの激しい80試合を戦うための戦闘機としては、もしかしたら他のハイエンドモデルに分があるかもしれません。でも、仲間と楽しむ週末のランや、自分のスタイルを大事にしたいストリートボーラーにとって、このシューズは間違いなく稀有な選択肢です。
「カッコいいと思える靴を履く」という、それだけでテンションが上がり、プレーにもいい影響が出る。そんな純粋な喜びを思い出させてくれるバッシュ、Nike Book 1。デザインと実戦性能の見事な融合を、あなたも今日、足元から試してみませんか?


