スケートボードカルチャーが再び注目を集める中、往年の名ブランド「IPATH（アイパス）」が静かに話題を呼んでいます。90年代後半から2000年代初頭にかけてスケーターたちの足元を支えたブランドが、再び復活を遂げたのです。この記事では、IPATHスニーカーの歴史や魅力、そして現代のストリートシーンで再評価されている理由を掘り下げて紹介します。
IPATHとは？自然体のスケーター哲学を体現したブランド
IPATHは1999年、アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコで誕生したスケートシューズブランドです。創業者のマット・フィールドとブライアン・クラウスは、当時のスケート界を席巻していた“ハイテクスニーカー競争”とは一線を画し、「自然体でスケートすること」「自分の道を歩むこと（Follow Your Path）」を理念に掲げました。
このブランドが特にユニークだったのは、単なるスポーツシューズメーカーではなく、スケートボードを「カルチャー」として捉えていた点です。ボードを通じて自由に表現すること、そして環境にも配慮したライフスタイルを大切にする姿勢が、当時のスケーターたちの心を掴みました。
他のスケートブランドと違う“自然回帰”のスタイル
1990年代後半、スケートシューズ業界はナイキSBやDC、エトニーズなどが次々とハイテク技術を投入していた時期です。エアソールや厚底クッションなど「機能性競争」が加熱する一方で、IPATHはその流れに逆行しました。
彼らが選んだのは、ナチュラルでミニマルなデザイン。余計な装飾を削ぎ落とし、素材にはヘンプ（麻）やオーガニックコットンといった自然素材を採用。履くほどに風合いが増し、スケートボードだけでなく日常生活にも馴染むスニーカーを生み出しました。
また、当時としては珍しかったサステナブルな発想をいち早く取り入れていた点も注目されます。いま世界的に広がる「エコ×ファッション」トレンドの先駆けといえる存在でした。
スケーターたちが愛した理由
IPATHが多くのスケーターに支持された最大の理由は、自由で等身大なブランド哲学にあります。
他ブランドのように大々的な広告やテクノロジーの押し出しを行わず、チームライダーには独自のスタイルを持つ個性派スケーターを起用。そこに共通していたのは「自分らしい滑り方」を尊重する姿勢でした。
スケートを“スポーツ”ではなく、“生き方”や“自己表現”として楽しむカルチャーの核にある精神を、IPATHはそのまま靴づくりに落とし込んでいたのです。
履いているだけで“主張しすぎないカッコよさ”が漂う。そんな感覚がIPATHにはありました。
代表作「Grasshopper」とは？ブランドの象徴的モデル
IPATHを象徴するモデルといえば、やはり**「Grasshopper（グラスホッパー）」**です。
丸みを帯びたシルエットに、リラックス感のあるデザイン。ボリューム感がありながらも、全体のバランスが絶妙。クッション性にも優れ、スケートボードだけでなく普段履きとしても愛されました。
さらにもう一つの人気モデル「Cats（キャッツ）」は、クラークスのWallabeeを彷彿とさせるフォルム。スケート靴とは思えない上品さと履き心地を兼ね備え、ファッションアイテムとしても評価されました。
また「Cricket（クリケット）」などのモデルではヘンプ素材を大胆に使い、当時のスニーカー業界では異例の“環境配慮型スケートシューズ”として注目されました。
こうしたモデルたちは、**機能性とカルチャー性を両立した“等身大のスケートシューズ”**として、長く記憶に残っています。
一度の消失と、復活へのカウントダウン
IPATHは2007年、アウトドアブランドのティンバーランドに買収されます。一時的にブランドの認知は拡大しましたが、コアなファンが愛していた「スケーター主導の精神」は次第に薄れ、2010年代には市場から姿を消してしまいました。
しかし、2024年。
待ちに待ったニュースが飛び込んできます。IPATHが正式に復活。創業者ブライアン・クラウスと往年のチームライダー、ケニー・リードが中心となり、かつてのモデルを現代的にアップデートして再始動しました。
復活に際して発表されたメッセージも象徴的です。
“Follow Your Path – あなた自身の道を歩め。”
ブランドが一貫して掲げてきたこの理念が、再びスケートコミュニティの中心に戻ってきた瞬間でした。
現代のストリートシーンで再評価される理由
近年、ストリートカルチャーやファッションの世界では、再びクラシックで自然体なスタイルが支持を集めています。90年代～2000年代初頭の“オールドスクール”なムードが若者の間で再燃しており、その流れの中でIPATHが再注目されているのです。
特にSNS上では、往年のスケーターだけでなく、20代の若いファッション層からも「レトロで可愛い」「人と被らない」といった声が多く見られます。
また、環境意識の高まりとともに、IPATHのヘンプ素材やオーガニックコットンといったエシカルな素材選びも再び評価されるポイントとなっています。
単なる懐古的なリバイバルではなく、「当時先取りしていた価値観が今の時代にマッチしている」――それがIPATH再注目の本質です。
IPATHのスニーカーを選ぶということ
今、スケートシーンの中で「何を履くか」は、単なる機能の選択ではなく、“自分の姿勢”の表明でもあります。
最新テクノロジーを搭載したスニーカーももちろん魅力的ですが、IPATHのようにカルチャーの背景を背負った靴には、また別の価値があります。
スケートをする人はもちろん、ストリートファッションを愛する人、環境に配慮したライフスタイルを志向する人――それぞれの“道”を歩む人々にとって、IPATHは共感できるメッセージを放ち続けています。
IPATHスニーカー再注目！スケーターカルチャーを支えた名作モデルの魅力とは
「Grasshopper」や「Cats」といった往年のモデルが復刻し、再び街に戻りつつある今。IPATHの復活は単なる懐かしさではなく、スケートボードカルチャーの再発見でもあります。
「自分らしくあること」「自然体で生きること」。
スケーターたちが長年大切にしてきた哲学を、IPATHはスニーカーという形で体現してきました。
あなたの足元にも、自分の“Path（道）”を示す一足を。
再び息を吹き返したIPATHスニーカーが、これからのストリートシーンに新しい風を吹き込んでくれるはずです。
