韓国ファッションを語る上で欠かせない存在といえば、G-DRAGON(ジードラゴン)だろう。BIGBANGのリーダーとして世界的な音楽シーンを牽引してきた彼は、音楽だけでなくファッションにおいても“トレンドを生み出す男”として知られている。特にスニーカーに対するこだわりと影響力は圧倒的で、彼が履くだけで世界中のスニーカーヘッズが注目するほど。その独自のスタイルと哲学を掘り下げてみよう。
G-DRAGONという存在が放つファッション的オーラ
G-DRAGON(本名:權志龍/クォン・ジヨン)は、音楽プロデューサーであり、アーティストであり、そして“ファッションそのもの”とも言える人物。彼のファッションスタイルは、ストリートとハイブランド、モードとアートが混在する独特のバランスを持つ。どんな服を着ても、どんなスニーカーを履いても、それがG-DRAGONらしいと感じさせるのは、彼の美学が明確だからだ。
G-DRAGONは常に「自己表現」を軸にファッションを選んでいる。流行を追うのではなく、自分の感性とメッセージを服や靴で表現する。そのスタイルが共感を呼び、彼が履くスニーカーがたちまち“カルチャー”になるのだ。
G-DRAGONが生んだブランド「PEACEMINUSONE」
彼のファッションの中心にあるのが、自身が立ち上げたブランド「PEACEMINUSONE(ピースマイナスワン)」。2016年に誕生したこのブランドは、G-DRAGONの内面世界をそのまま形にしたような存在だ。
ブランド名は「PEACE(平和)」と「MINUS ONE(マイナス1)」を組み合わせた造語で、“完璧な平和からひとつ欠けた世界”という意味が込められている。これは、G-DRAGONが常に完璧を求めつつも、そこにある不完全さを肯定する姿勢を象徴している。
PEACEMINUSONEはアパレルだけでなく、アクセサリー、スニーカー、アートプロジェクトなど、多岐にわたる展開を行っており、彼の思想をファッションを通して発信している。
Nikeとの伝説的コラボ「PEACEMINUSONE × Nike Air Force 1 Para-Noise」
G-DRAGONのスニーカー史において、最も話題を呼んだのがNikeとのコラボレーション「PEACEMINUSONE × Nike Air Force 1 Para-Noise」だ。
このモデルは2019年にリリースされ、瞬く間に完売。特徴的なのは、履き込むほどにアッパーの塗装が剥がれ、下地にG-DRAGON自身が描いたアートワークが浮かび上がるというギミック。スニーカーが“経年変化を楽しむキャンバス”となっており、まさに彼の「ファッションはアートだ」という哲学を体現している。
さらに、シュータンに刺繍されたデイジーのロゴや、ミッドソールにペイントのようなブラシストロークが施されたディテールも印象的。PEACEMINUSONEの象徴であるデイジーの花は、“理想と現実の狭間に咲く不完全な美”を意味しており、G-DRAGONの世界観そのものと言える。
続く革新、「PEACEMINUSONE × Nike Kwondo 1」
続いて登場したのが、「PEACEMINUSONE × Nike Kwondo 1」。名前の“Kwondo”は、G-DRAGONの姓である“KWON”、韓国の武道“Taekwondo(テコンドー)”、そしてNikeのスローガン“Just Do It”を組み合わせたものだ。
このモデルは、スニーカーでありながらフォーマルシューズのようなデザインを持ち、レースカバーやブローグ装飾などクラシックな要素を融合している。全体をホワイトでまとめたクリーンなルックスながら、履く人の個性を引き立てる美しさがある。
Kwondo 1は、単なるスニーカーではなく「ジャンルを超える表現の象徴」として高く評価された。G-DRAGONの“境界を壊す”姿勢がそのまま形になった一足だ。
スニーカーを通じて伝える「自己表現の自由」
G-DRAGONがスニーカーで発信しているのは、単なるおしゃれではない。「スニーカーは、誰もが自由に自分を表現できる手段」というメッセージだ。
彼はインタビューで、「ファッションは人間の個性そのもの」と語っており、そこに上下関係やブランドの格は関係ないという考えを貫いている。
PEACEMINUSONEのスニーカーは、そうした“個性の解放”を象徴するアイテムだ。履く人の人生や感性によって、経年変化やスタイリングの解釈が変わる。それこそが、G-DRAGONが提示する「アートとしてのスニーカー」の本質なのだろう。
世界を動かすカルチャーアイコンとしてのG-DRAGON
G-DRAGONのスニーカーが特別なのは、ファッション的な魅力だけではない。彼の存在自体が、カルチャーを動かす“触媒”になっていることが大きい。
彼が履いたスニーカーは即完売し、リセール市場では高額で取引される。だがそれ以上に重要なのは、「彼が履いたことでそのスニーカーがストーリーを持つ」点だ。
たとえば、Air Force 1 Para-Noiseは“芸術を通して世界とつながる”というテーマを持ち、Kwondo 1は“境界を超えた自由”を象徴する。彼のファッションには常に「意味」があり、そこにファンは共感し、憧れる。
また、G-DRAGONは韓国国内だけでなく、パリ・ニューヨーク・東京など世界のファッションウィークでも注目される存在。彼がシャネルやルイ・ヴィトンといったハイブランドのショーに招待されるのも、単なるセレブ枠ではなく“アーティストとしての表現者”として認められているからだ。
G-DRAGONスニーカーが韓国ファッション界を席巻する理由
なぜG-DRAGONのスニーカーがこれほどまでに支持されるのか。その理由は大きく3つある。
- 芸術性と実用性の融合
彼のスニーカーは「履けるアート」であり、デザイン性と履き心地が共存している。Nikeとのコラボでは、細部までG-DRAGONの感性が反映され、完成度の高いプロダクトとして成立している。 - ストーリー性のあるデザイン
ただのスニーカーではなく、メッセージがある。履くことで“自分も表現者になれる”という共感が、世界中のファンの心を掴んでいる。 - カルチャーとしての影響力
彼が着用したものは、すぐにトレンドになる。PEACEMINUSONEはファッションを超え、音楽・アート・ライフスタイルすべてに通じるカルチャーとなった。
G-DRAGONとスニーカーの未来
G-DRAGONはこれまでのコラボで満足しているわけではない。PEACEMINUSONEは今後もNikeや他ブランドとの新しいコレクションを準備していると噂されており、次にどんな“革命的スニーカー”を発表するのか注目が集まっている。
また、彼はサステナビリティやリユースといった新しい価値観にも関心を示しており、環境意識の高いスニーカーづくりを行う可能性もある。
G-DRAGONのスニーカーは、単に履くためのものではなく、“生き方を映すアイテム”として進化し続けていくのだろう。
G-DRAGON愛用スニーカーがもたらした時代の変化
G-DRAGONがスニーカーで示したのは、ファッションの民主化と自己表現の自由だ。誰もが自分の感性を信じ、好きなものを好きなように身につける。その価値観を世界に広めた功績は計り知れない。
彼のスニーカーは、ただの靴ではなく、“アイデンティティの象徴”であり、“カルチャーの言語”である。
そしてこれからも、G-DRAGONはその一歩一歩で新しい時代を切り拓いていくに違いない。


