「安全靴って、A種とかB種とか書いてあるけど、何が違うの?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?現場で履く安全靴は、ただ「丈夫」なだけではなく、用途や作業内容に合わせた明確な基準が設けられています。この記事では、A種安全靴の特徴を中心に、B種との違いや選び方のポイントをわかりやすく解説します。
A種安全靴とは?普通作業向けの高い保護性能
まず押さえておきたいのが、「A種安全靴」とはどんな靴かという点。
A種は、**JSAA規格(公益社団法人 日本保安用品協会)**によって定められた安全基準の一つで、主に「普通作業用」に分類されます。落下物や圧迫など、ある程度リスクの高い現場での使用を想定しています。
A種安全靴は、つま先部分に先芯(せんしん)と呼ばれる保護パーツが入っており、以下のような性能が求められます。
- 耐衝撃性:70ジュール(約10kgの重りを1m落とした衝撃に耐える)
- 耐圧迫性:10キロニュートン(約1トンの圧力に相当)
- 甲被(こうひ)と靴底の剥離強度が高い(200〜300N以上)
つまり、A種は「日常的に重量物を扱う作業」や「落下・圧迫のリスクがある環境」での使用を想定した、安全性能の高い靴なのです。
B種安全靴との違いを整理しよう
A種とB種の違いを一言でいえば、求められる保護性能のレベルです。
- A種(普通作業用):耐衝撃70J、耐圧迫10kN
- B種(軽作業用):耐衝撃30J、耐圧迫4.5kN
このように、A種はB種よりも約2倍以上の衝撃・圧力に耐える設計です。そのぶん構造が頑丈で、甲被やソールの素材も厚め。革や強化ゴムなどを使用するモデルが多く、見た目にも“しっかりした靴”という印象になります。
一方で、B種は軽さや動きやすさを重視。倉庫内の軽作業や、物流センターでの仕分け・ピッキングなど、足への負担が少ない現場に向いています。
つまり、「安全性を優先するならA種」「軽快さを優先するならB種」と覚えておくと判断しやすいでしょう。
A種安全靴が活躍する現場とは?
A種が求められるのは、次のようなシーンです。
- 製造工場(鉄・機械・金属加工など)
- 建設現場、設備工事、足場作業
- 物流倉庫での重量物運搬
- メンテナンス、整備、鉄骨や配管の取扱い業務
これらの現場では、工具や部品の落下、機械との接触、荷物の積み下ろしなど、足を守るための確実な保護性能が求められます。
特に、床に油や水がある環境では滑り止め機能、電気や電子部品を扱う現場では静電気帯電防止機能なども重要な要素になります。
A種安全靴を選ぶときのチェックポイント
1. 規格マークと型式認定を確認する
購入時は、靴のタグやベロ部分に「JSAA A種」と明記されているかをチェックしましょう。認定マークがある製品は、正式な性能試験をクリアしています。
2. 先芯の材質を確認
つま先の先芯には、鋼製・アルミ製・樹脂製などがあります。
- 鋼製:もっとも一般的で高強度。やや重め。
- アルミ製:軽くて錆びにくい。
- 樹脂製:軽量で寒冷地に強いが、耐久性はやや劣る。
使用環境に合わせて選ぶと快適です。
3. ソールの機能性
A種モデルには、耐油・耐滑・耐踏み抜き・静電気防止などの付加性能が付いているものもあります。
たとえば、油が多い工場では「耐油仕様」、電子機器の工場では「静電気防止仕様」を選びましょう。
4. フィット感とワイズ(足幅)
安全靴は重くて硬いイメージがありますが、最近はスニーカータイプの軽量モデルも増えています。自分の足に合ったサイズ・幅を選び、長時間履いても疲れにくい靴を探すのがポイントです。
A種安全靴のメリットとデメリット
メリット
- 高い耐衝撃・耐圧性能で足をしっかり守る
- 多くの現場規定に対応できる安心感
- 耐久性が高く、長く使える
- 付加機能(耐滑・静電気防止など)が豊富
デメリット
- B種より重く、長時間の立ち仕事では疲れやすい
- 価格がやや高い傾向
- デザインや柔軟性に欠けるモデルもある
安全性能と快適性はトレードオフの関係にあるため、用途に合ったバランスを見極めることが重要です。
最新のA種安全靴は「軽くて動ける」がキーワード
最近のA種モデルは、従来の「重くて硬い」イメージを覆す進化を遂げています。
メーカー各社が軽量化と快適性の両立を目指し、メッシュ素材やクッション性の高いソールを採用した製品を多数展開中です。
例えば、Boaダイヤルでワンタッチ着脱できるタイプや、スニーカーのように柔らかいアッパー構造を採用したものなど。
こうしたモデルは「A種の安全性能は欲しいけど、軽快に動きたい」という現場作業者に人気があります。
また、女性や若手スタッフにも履きやすいスタイリッシュなデザインが増えたことで、選択肢の幅も広がっています。
使用後のメンテナンスと買い替え時期
A種安全靴は頑丈とはいえ、消耗品です。
ソールがすり減ったり、甲部分が裂けたり、先芯が変形したりしたら保護性能が落ちます。
目安としては、毎日使用する場合で半年〜1年程度が交換のタイミング。
次のような状態が見られたら、早めに買い替えを検討しましょう。
- 靴底の溝がすり減って滑りやすくなった
- ソールと甲が剥がれかけている
- つま先部分の変形・へこみ
- かかとが擦れて安定感がなくなった
定期的なメンテナンスとチェックを行うことで、安全性能を長く保つことができます。
A種安全靴とB種、どちらを選ぶべき?
最後に、「結局どっちを選べばいいの?」という疑問に答えます。
判断のポイントは次の3つです。
- 落下・挟み込みのリスクがあるか
→ あるならA種が必須。 - 重量物を扱うかどうか
→ 重い荷物を持つ現場ならA種を推奨。 - 動きやすさを重視するか
→ 軽作業・長時間歩行が多いならB種も検討。
「安全第一」を掲げる現場では、A種が基本装備になることが多いですが、現場環境に合わせて柔軟に選ぶことが大切です。
A種安全靴の特徴と選び方まとめ
A種安全靴は、「普通作業用」として高い保護性能を備えた信頼性の高い靴です。
B種よりも重く、価格もやや上がりますが、現場の安全性を守るうえで欠かせない存在です。
選ぶ際は、規格表示・先芯素材・ソール機能・履き心地の4点をしっかり確認し、自分の足と作業内容に合った一足を選びましょう。
最近はデザイン性と快適性を両立したモデルも多く、「安全靴=重い・硬い」の時代は終わりつつあります。
足元の安全を守ることは、自分自身の働きやすさを守ることにもつながります。
次に安全靴を選ぶときは、ぜひ「A種」という選択肢を思い出してください。


