スニーカー好きの間で長年支持されているニューバランスM998。
990番台の中でも“玄人向け”と評されるモデルですが、実際に履いてみるとその評価にも納得です。
今回は、M998の履き心地を中心に、衝撃吸収性・安定感・フィット感などを詳しく検証していきます。
M998とは?990番台の中で異彩を放つ存在
M998は1993年に登場した、ニューバランスの990シリーズ第5弾。
当時としては革新的な「ABZORB(アブゾーブ)」というクッション素材を初めて搭載したモデルです。
この素材がもたらす独特の沈み込みと反発感が、他のモデルとは一線を画す履き心地を生み出しています。
外観はクラシックなランニングシューズの流れを汲みつつも、ミッドソールの厚みや重心バランスが特徴的。
最新の厚底スニーカーのような“ふわふわ感”とは違い、「しっかり支えながら柔らかい」という絶妙なバランスが魅力です。
M998の履き心地を支える3つの要素
1. ABZORBによる優れたクッション性
M998最大の特徴は、ニューバランス初のABZORBミッドソールを採用していること。
この素材は衝撃を吸収するだけでなく、その力を反発力として返す設計になっています。
実際に履くと、かかとから着地した瞬間に柔らかく沈み、前方への推進をスムーズに感じられます。
特にヒール部は厚みがあり、約34mm。フォアフット(つま先側)は約19mmと、差(ドロップ)が約14mmあります。
この設計が、歩行時のかかと着地→つま先蹴り出しの流れを自然に導き、長時間でも疲れにくい履き心地を実現しています。
柔らかすぎるわけではなく、適度な反発があるため“沈み込み過ぎない安定したクッション感”。
これは他のニューバランスモデル、たとえばM996やM1400とは異なる独特の感触です。
2. ENCAP+C-CAPが生み出す安定性
ABZORBだけでなく、M998はENCAPとC-CAPも併用しています。
ENCAPは耐久性と安定性を高める硬質素材、C-CAPは軽量でクッション性の高い素材。
この3層構造が、着地時の横ブレを防ぎながらも柔軟な歩行をサポートします。
履いてみると足裏がブレず、自然に真っ直ぐ前へ進む感覚が得られます。
ソールの地面側がやや硬めになっているため、フニャフニャした不安定さはありません。
立ち仕事や通勤など、長時間の使用でも足が疲れにくいという声が多いのも頷けます。
3. 履き心地を高めるアッパーと内部構造
アッパーには上質なスウェードとメッシュを組み合わせた素材が使われ、通気性と柔軟性を両立。
履き口のパッドや内部のアーチサポートもよく設計されており、足を包み込むような安定感があります。
特に土踏まず部分の盛り上がりが自然で、アーチをしっかり支えてくれる感覚があります。
前足部がやや低めの設計になっており、歩くたびに自然とつま先が前に出やすい構造。
この“足が進む感じ”が、M998の歩きやすさを際立たせています。
実際の履き心地レビュー
衝撃吸収性の印象
M998の履き心地を語る上で欠かせないのが衝撃吸収性。
ヒール着地時の柔らかさは他モデルより際立っており、足裏全体に圧力が均等にかかる感覚があります。
歩き出しの一歩目から“厚みのある安心感”を感じられるのが特徴です。
海外レビューでは、「他のMade in USAモデルよりソフト」「2002Rほどではないが、クラシックモデルの中では最も快適」と評価されています。
日常使いでは十分すぎるほどのクッション性で、通勤・街歩き・旅行など幅広いシーンに向いています。
安定感とホールド感
柔らかいだけでなく、安定感の高さもM998の魅力です。
歩行中に足が左右にブレにくく、着地から蹴り出しまでがスムーズ。
アーチ部分の支えもあり、立ち姿勢が崩れにくい設計です。
ただし、ホールド感はM996やM1400のような“ピタッと包み込む”タイプではありません。
ややゆったりめのフィットで、長時間履いても締め付け感が少ないタイプ。
足幅が広い人にとっては程よく快適ですが、細身の足型の人には少し緩く感じる場合もあるでしょう。
サイズ感とフィット感
M998は基本的に標準(D)ワイズのみの展開が多く、幅広足の方は少しタイトに感じる可能性があります。
ただし、甲が低めで横幅が狭い方ならジャストサイズで問題ありません。
履き始めは少し硬く感じることがありますが、数日履くうちにスウェードが馴染み、柔らかく変化します。
「履き込むほどに足に馴染んで、クッション性がさらに感じられるようになる」という声も多く、
革靴のように“育てる感覚”で楽しめるのもM998ならではです。
他モデルとの比較でわかるM998の特徴
M996との違い
M996は軽くてスリム、ホールド感が強いモデル。
一方でM998はソールが厚く、クッション性重視の設計。
柔らかく包み込まれるような履き心地が好きな人にはM998が向いています。
M996が「走れるクラシック」だとすれば、M998は「歩き続けたくなるクラシック」。
同じ990番台でも、求める快適さの方向性がまったく異なります。
M1400やM576との違い
M1400やM576はホールド感が強く、丸みのあるフォルムで安定した履き心地。
対してM998は、足当たりが柔らかくリラックスした感覚があります。
特にソールのふんわり感は1400よりも上で、長時間歩くとその差がはっきりと感じられます。
最新モデルとの比較(990v6・2002Rなど)
最新の990v6や2002Rは、FuelCellやABZORB SBSなど新素材によって“極柔”なクッション性を実現しています。
それに比べるとM998は「クラシック+実用性」の中間的ポジション。
柔らかすぎず、しっかり地面を感じながらも衝撃を吸収してくれる安心感があります。
長時間履いても姿勢が崩れず、腰や膝への負担も少ないと感じる人が多いです。
長時間履いたときの印象と耐久性
8時間以上立ち仕事で使用しても足が痛くならなかったというレビューも多数。
ソールの反発力とアーチサポートが、長時間の使用でも快適さを保ってくれます。
また、ABZORBソールはへたりにくく、履き込むほどに足の形に馴染んで安定感が増すのも特徴です。
一方で、初日はやや硬く感じるという声もあります。
数日履き慣らすうちに素材が柔らかくなり、まるでオーダーメイドのようにフィットしていく過程も楽しめます。
この“馴染み”の感覚は、クラシックNBファンにはたまらないポイントでしょう。
M998が向いている人・おすすめの使い方
M998は以下のような人におすすめです。
- 長時間歩いても疲れにくいスニーカーを探している
- 柔らかさと安定感のバランスを重視したい
- Made in USAのクラシックモデルを体感したい
- ふわふわしすぎず、地面をしっかり感じたい
逆に、極端に軽量で柔らかい履き心地を求める人や、幅広・甲高の方にはやや合わないかもしれません。
その場合はM991や2002Rなどの別モデルも検討すると良いでしょう。
ニューバランスM998の履き心地まとめ
ニューバランスM998は、クラシックなデザインの中に確かな技術が詰まった一足です。
ABZORBによる柔らかいクッションと、ENCAP構造が生む安定感。
長く歩いても疲れにくく、足をしっかり支えてくれる安心感が魅力です。
履き心地の方向性としては「しっかりしたクッション+適度な反発+自然な推進感」。
まさに“歩くことが楽しくなるスニーカー”と言えるでしょう。
クラシックと機能性の両立を求める人にとって、M998は今でも特別な存在。
衝撃吸収性と安定感を両立したその履き心地を、ぜひ一度体感してみてください。


