冬場や乾燥した時期、作業中に「バチッ」とくる静電気。実はこの静電気、ただ不快なだけでなく、電子部品の破損や火災の原因になることもあります。そんな静電気を抑えるために欠かせないのが「静電防止機能付き安全靴」です。ここでは、静電気対策を重視した安全靴の選び方やおすすめモデルを、現場のリアルな視点から紹介していきます。
なぜ静電気対策が必要なのか
静電気は、歩行や摩擦などで体に電気がたまることで発生します。人間の体は絶縁体に近く、逃げ場のない電気が金属などの導体に触れた瞬間、一気に放電します。この瞬間的な放電が、電子部品の破壊や可燃性ガスへの引火につながることがあるのです。
特に、以下のような職場では静電気対策が欠かせません。
- 半導体や電子部品の製造ライン
- 化学薬品や塗料を扱う現場
- 粉じんやガスが舞う可燃性環境
- 精密機器の組立・検査工程
このような現場では、人や靴にたまった電気を安全に逃がす「静電防止機能付き安全靴」が必要です。
静電防止安全靴の仕組みと規格
静電防止靴は、体にたまった静電気を靴底を通じて床面に逃がす構造になっています。一般的なゴム底靴は絶縁性が高く、電気が逃げにくいのに対し、静電防止靴は電気抵抗が適度に低い素材を採用。これにより、放電をゆるやかに行い、安全に帯電を防ぎます。
JIS規格に基づいた性能
日本では「JIS T 8103（静電気帯電防止靴）」という規格があり、これに適合した製品が静電防止靴として販売されています。靴底から床面までの電気抵抗が規定範囲内であることが条件です。
- 一般静電靴（ED）：通常の工場・屋内環境向け
- 特種静電靴（EDX）：可燃性ガスや粉じんが多い特殊環境向け
- 導電靴（EC）：さらに低抵抗で、強電界下の現場向け
作業環境に応じてこの区分を確認することが、まず大切なポイントです。
静電防止安全靴を選ぶポイント
では、どんな基準で選べばよいのでしょうか。単に「静電防止」と書いてあればOKというわけではありません。
1. 作業環境を考える
静電気の影響度は環境によって異なります。電子工場のように微細な電流でもトラブルになる現場では特に慎重な選定が必要です。一方で倉庫や物流施設など、摩擦が多く乾燥した環境でも静電対策靴は有効です。
2. 規格表示を確認する
カタログや靴のタグに「JIS T 8103」「ED」などの表記があるか確認しましょう。これが静電防止性能の証です。
3. 他の安全性能もチェック
静電防止機能以外にも、現場では次の性能が求められます。
- 耐滑性（滑りにくい靴底）
- 耐油性（油を扱う現場向け）
- 耐踏抜き・耐衝撃性能（先芯入り）
- 軽量性・通気性（長時間作業での快適性）
現場によっては、防水性やBoaシステムなども選定基準になります。
4. サイズとワイズ（幅）の合う靴を選ぶ
安全靴は足にフィットしていないと、正しく放電できない場合があります。足のサイズだけでなく、幅（E、2E、3Eなど）を確認して選ぶことが大切です。
静電防止安全靴の正しい使い方
せっかく良い靴を選んでも、使い方を誤ると性能を発揮できません。以下のポイントを意識して使いましょう。
- 靴底の清掃を怠らない：ゴミや油が付着すると導通が悪化します。
- インソールを定期的に交換：汚れや湿気で放電性能が落ちることがあります。
- 摩耗チェックを習慣化：靴底がすり減ると静電気が逃げにくくなります。
- 湿度に注意：極端に乾燥すると放電しにくくなるため、適度な湿度を保つことも大切です。
定期点検や交換サイクルを決めておくと、現場の安全を保てます。
静電防止安全靴のおすすめモデル
ここでは、国内外で人気の高い静電防止安全靴を紹介します。どれも実績のあるメーカー製で、作業内容や環境に合わせて選べます。
ミドリ安全 SL-615S 静電スニーカータイプ
軽量で履きやすく、樹脂先芯入り。静電防止性能と通気性を両立したモデルで、電子部品やクリーンルーム作業に最適です。
ジーベック 85112 静電セフティシューズ
コストパフォーマンスの高い定番モデル。幅広設計で長時間の作業でも疲れにくく、カラーバリエーションも豊富です。
ミズノ オールマイティ AS C1GA1811
スポーティなデザインながらJIS静電規格対応。滑りにくいソールと高いクッション性で、屋内外どちらでも快適に使えます。
シモン 耐滑静電プロスニーカー
耐滑性能と静電防止を両立。油・水の多い現場や塗装ブースにもおすすめです。
弘進ゴム ファントム F-3010 LC
リーズナブルで導入しやすい静電モデル。軽作業や倉庫作業など、頻繁に履き替える現場に最適です。
これらのモデルはすべて、JIS T 8103に準拠した静電防止性能を持っています。用途や作業内容に合わせて、軽量性・デザイン・価格のバランスを見ながら選びましょう。
現場別・おすすめの選び方
電子部品・精密機器工場
微小な静電でも故障の原因になるため、特種静電靴（EDX）がおすすめ。通気性や軽量性も重視しましょう。
塗装・化学工場
可燃性ガスや粉じんがある現場では、より強い静電気対策が必要。耐油・耐滑性能を備えたモデルが安心です。
倉庫・物流センター
カートやパレットとの摩擦で帯電しやすいため、一般静電靴（ED）で十分対応可能。価格と耐久性のバランスを重視すると良いでしょう。
よくある質問と注意点
Q. 静電防止靴を履けば完全に静電気は防げますか？
A. 完全にゼロにはなりませんが、発生を大幅に抑えることができます。靴の性能に加えて、床材や湿度管理も重要です。
Q. 普通の安全靴と何が違うの？
A. 一般的な安全靴は物理的な保護を目的としていますが、静電防止靴は電気を逃がす性能を持っています。両者を兼ね備えたモデルも多くあります。
Q. 静電防止靴の寿命は？
A. 使用頻度や環境によりますが、半年〜1年程度で交換するのが目安です。摩耗や汚れが見えたら早めの交換をおすすめします。
静電防止安全靴を導入するメリット
- 製品トラブルや事故のリスクを軽減
- 作業者の不快感を解消し集中力を維持
- 職場全体の安全基準を高められる
- 靴の導入ルールを整えることで品質管理がしやすくなる
静電防止靴は、コスト以上に「安心」を買うための装備といえます。導入後は定期的に靴底やインソールの状態を点検し、劣化してきたら交換しましょう。
静電気対策に最適な安全靴で快適・安全な現場を
静電気は目に見えませんが、確実に事故や不良を引き起こす要因になります。だからこそ、現場の足元からしっかり対策を。
「静電防止機能付き安全靴」を選ぶことは、作業者だけでなく製品や設備を守る第一歩です。
自分の作業環境や用途に合った一足を選んで、快適で安全な毎日を過ごしましょう。
