「お気に入りのトレッキングシューズ、泥だらけになっちゃったな……」
「これ、どうやって洗えばいいんだろう? 下手に水洗いして壊れないかな?」
登山を楽しんだ後、玄関で泥だらけになった相棒を見て、そんな風に悩んでいませんか? トレッキングシューズは、一般的なスニーカーと違って特殊な素材や構造の塊です。5万円近くする高価なものも珍しくありませんから、絶対に失敗したくないですよね。
実は、トレッキングシューズの寿命を左右するのは「その後の手入れ」です。正しく洗えば5年、10年と最高のパフォーマンスを維持してくれますが、放置したり間違った洗い方をしたりすると、山の中でソールが剥がれるといった命に関わるトラブルを引き起こしかねません。
今回は、初心者の方でも絶対に迷わない、トレッキングシューズの正しい洗い方と、加水分解から靴を守る最強の保管術を徹底解説します。
なぜトレッキングシューズの洗い方が重要なのか?
そもそも、なぜ「わざわざ」丁寧に洗う必要があるのでしょうか。その理由は大きく分けて3つあります。
1. 「加水分解」という最大の敵を防ぐため
登山靴のソールに使われるポリウレタンという素材は、水分と反応してボロボロに崩れる性質があります。これを「加水分解」と呼びます。泥がついたまま放置すると、泥が湿気を吸い込み、加水分解を加速させてしまいます。
2. 防水透湿機能を復活させるため
多くの登山靴には、ゴアテックスのような「水は通さないが湿気は通す」素材が使われています。表面が泥で目詰まりすると、この「呼吸」ができなくなり、靴の中が蒸れて不快になるだけでなく、撥水性も失われてしまいます。
3. 素材の劣化と悪臭を抑えるため
山を歩けば大量の汗をかきます。汗に含まれる塩分や皮脂、そして外からの泥汚れは、素材を傷めるだけでなく、強烈な臭いやカビの原因になります。
「疲れているから後回しにしたい」という気持ちは痛いほどわかりますが、次も安全に登山を楽しむために、正しいメンテナンスを習慣にしましょう!
準備するもの:専用アイテムが成功の鍵
まずは道具を揃えましょう。家にあるもので代用できるものもありますが、やはり専用品を使うのが一番の近道です。
- 専用ブラシ:馬毛やナイロン製など、素材に合わせたもの。100均のタワシは素材を傷める可能性があるので要注意です。
- クリーナー(洗剤):NIKWAX(ニクワックス) クリーニングジェルのような、防水透湿素材に対応した専用クリーナーがベストです。家庭用中性洗剤も使えますが、柔軟剤入りはNGです。
- 撥水剤:洗った後に効果を復活させるために必須です。LOX(ロックス) 撥水スプレーなどは人気ですね。
- バケツとぬるま湯:冷水よりもぬるま湯の方が皮脂汚れや泥が落ちやすいです。
- 新聞紙またはキッチンペーパー:乾燥時に使います。
失敗しないトレッキングシューズの洗い方:5つのステップ
それでは、具体的な洗浄工程に入っていきましょう。
ステップ1:パーツをバラして「丸裸」にする
まずは靴紐をすべて外します。面倒かもしれませんが、これは必須です。紐を通す金具の隙間に溜まった砂や泥は、紐がついたままだと絶対に落ちません。
次に、インソール(中敷き)を取り出します。インソールは足の裏の汗を最も吸っている場所なので、別々に洗う必要があります。
ステップ2:乾いた状態で「ブラッシング」
いきなり水につけるのは禁物です。まずは乾いた状態で、全体の泥や砂をブラシで丁寧に払い落としましょう。特にソールの溝に詰まった石や泥は、マイナスドライバーや使い古した歯ブラシを使って徹底的に取り除きます。
この「ドライブラッシング」だけで、汚れの7割は落ちると言われています。
ステップ3:ぬるま湯とクリーナーで洗浄
表面の大きな汚れが落ちたら、いよいよ水洗いです。
- ぬるま湯をバケツに溜め、靴全体を濡らします。
- 専用クリーナーをブラシに取り、円を描くように優しく洗っていきます。
- 頑固な汚れがある部分は少し力を入れますが、ゴアテックスを傷つけないよう「優しく、回数を重ねる」のがコツです。
靴の内側が臭う場合は、中にもぬるま湯を入れて、軽く揺すり洗いをしてください。汗の塩分を抜くだけでも、素材の寿命はぐんと伸びます。
ステップ4:完璧なすすぎ
洗剤成分が残っていると、それがシミになったり、撥水効果を邪魔したりします。ぬるま湯で、泡が出なくなるまでしっかりとすすぎましょう。
ステップ5:撥水加工を施す
「洗って綺麗になったから終わり!」ではありません。表面が濡れている状態で、撥水剤を塗布します。
NIKWAX(ニクワックス) ファブリック&レザー プルーフのようなタイプは、濡れた状態で使うことで成分が奥まで浸透します。撥水剤がしっかり効いていると、次回の登山で汚れがつきにくくなるというメリットもあります。
これだけは絶対にダメ! 登山靴を壊すNG行動
良かれと思ってやったことが、実は靴の寿命を縮めていることがあります。以下の3点は絶対に避けてください。
- 洗濯機で洗う「手洗いが面倒だから」と洗濯機に放り込むのは最悪です。強力な回転で靴の形が歪み、大切な防水フィルムが破れてしまいます。また、洗濯機そのものを故障させるリスクも非常に高いです。
- ドライヤーやヒーターで強制乾燥早く乾かしたい気持ちはわかりますが、熱は登山靴の天敵です。ソールの接着剤が熱で溶け出し、剥離の原因になります。また、レザー素材の場合はひび割れを起こし、二度と元に戻らなくなります。
- 直射日光に当てる「太陽の下でカラッと乾かしたい」と思うかもしれませんが、紫外線はゴムや樹脂を急速に劣化させます。乾燥は必ず「風通しの良い日陰」で行ってください。
仕上げの「乾燥」が最も重要な理由
洗い方と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「乾燥」です。
水分を拭き取った後は、中に丸めた新聞紙やキッチンペーパーを詰め込みます。最初の1〜2時間は水分をどんどん吸うので、こまめに入れ替えましょう。
完全に乾くまでには、季節にもよりますが2〜3日はかかります。「表面が乾いたから大丈夫」と思ってすぐに下駄箱にしまうと、中の芯材が湿ったままでカビや加水分解が発生します。焦らず、じっくり陰干しするのが鉄則です。
加水分解を防ぐ! 理想的な保管のコツ
せっかく綺麗に洗っても、保管方法が悪いと台無しです。加水分解を防ぎ、次のシーズンまで靴を健康に保つポイントは「湿度管理」に集約されます。
箱に入れて保管しない
新品の時に入っていた箱に入れて保管していませんか? 実はあれ、NGです。箱の中は空気が停滞しやすく、湿気がこもりやすい「加水分解の温床」です。
下駄箱の「一番上」が指定席
湿気は下に溜まる性質があります。下駄箱の最下段は最も湿気が多いため、高価なトレッキングシューズはできるだけ上段に置きましょう。
定期的に「外の空気」に触れさせる
もし長期間登山に行かない場合でも、数ヶ月に一度は外に出して陰干ししてあげてください。靴の中に備長炭ドライペット 靴用などの除湿剤を入れておくのも非常に効果的です。
まとめ:トレッキングシューズの洗い方で登山の安全を守ろう
トレッキングシューズは、単なる履物ではなく、あなたの命を支える大切な「ギア(装備)」です。
今回ご紹介したトレッキングシューズの洗い方を実践すれば、泥汚れによる劣化を防ぎ、防水機能を維持し、そして何より「加水分解」という悲劇を最小限に抑えることができます。
- 紐とインソールを外す
- ドライブラッシングで泥を落とす
- 専用クリーナーとぬるま湯で洗う
- 濡れているうちに撥水加工
- 風通しの良い日陰で数日間じっくり乾かす
この一連の流れを登山の後のルーティンにしてみてください。丁寧に手入れされた靴は、履くたびにあなたの足に馴染み、次の山行でも頼もしいパートナーになってくれるはずです。
山を歩く楽しさは、足元への信頼から始まります。正しいメンテナンスで、安全で快適な登山ライフを長く楽しんでいきましょう!


