山を歩く相棒として、足元を支えるトレッキングシューズ。ショップに行くと、最新のハイテク素材を使ったカラフルな靴が並んでいますが、その中で独特の存在感を放っているのが「レザー(革製)」のシューズです。
「レザーは重そうだし、手入れが大変そう……」と敬遠していませんか?実は、登山を長く趣味として楽しみたい人ほど、最終的にレザーのトレッキングシューズに辿り着くことが多いのです。
なぜ多くの登山愛好家がレザーを愛してやまないのか。その理由から、自分にぴったりの一足を見極める選び方、そして後悔しないおすすめのモデルまで、レザーシューズの魅力を余すことなくお伝えします。
なぜベテランほど「レザー」を指名買いするのか
最近のトレッキングシューズは、ポリエステルなどの合成繊維とゴアテックスを組み合わせたモデルが主流です。軽くて最初から柔らかく、メンテナンスも簡単。それなのに、なぜあえて重くて手入れの必要なレザーを選ぶ人が絶えないのでしょうか。
最大の理由は「足への馴染み」にあります。
天然の革は、履き込むほどに体温と水分、そして歩く時の圧力によって、あなたの足の形に合わせて絶妙に変形していきます。新品の時は少し硬く感じても、数回山を歩く頃には、まるでオーダーメイドのようなフィット感に育つのです。この「自分の足の一部になる感覚」は、形が変わらない合成繊維では決して味わえません。
また、耐久性の高さも圧倒的です。鋭い岩場を歩いたり、硬い枝にぶつけたりしても、厚みのあるレザーはびくともしません。さらに、多くのレザーモデルはソールの張り替え(リペア)を前提に作られています。5年、10年と使い込み、ソールが減ったら交換してまた歩く。そんな「一生モノ」としての付き合いができるのがレザーの醍醐味です。
レザーの種類を知れば選び方がもっと楽しくなる
一口にレザートレッキングシューズと言っても、実はいくつかの種類があります。見た目の好みだけでなく、行く山のレベルに合わせて選ぶのがポイントです。
まず、本格的な重縦走や岩場に挑むなら「ヌバックレザー」が代表格です。革の表面を細かく起毛させたもので、厚みがあり非常に丈夫。マットで高級感のある質感が特徴です。
もう少し軽やかに歩きたいなら「スエードレザー」がおすすめ。革の裏面を起毛させた素材で、柔らかく、発色が良いのが魅力です。日帰りハイキングやキャンプなど、カジュアルなシーンにも馴染みます。
そして、最高峰と言えるのが「フルグレインレザー(表革)」です。加工を最小限に抑えた自然な状態の革で、圧倒的な防水性と堅牢性を誇ります。メンテナンスを繰り返すことで美しい光沢が出てくるため、道具を育てる喜びを最も感じられる素材と言えるでしょう。
失敗しないための「レザーシューズ選び」3つのチェックポイント
レザーの靴は安い買い物ではありません。だからこそ、選ぶときには次の3つのポイントを意識してみてください。
1つ目は、自分の足型に合っているか。
海外ブランドの靴は細身でかっこいいものが多いですが、日本人の足は一般的に「幅広・甲高」と言われています。まずはシリオ P.F.431のような、日本人の足型(ラスト)を基準に設計された国内ブランドを試着してみるのが安心です。
2つ目は、重量と剛性のバランスです。
レザーモデルは、ソールが硬く作られていることが多いです。これは岩場で足裏を保護し、重い荷物を背負っても安定させるため。しかし、平坦な道を歩くのがメインなら、そこまで硬くない「コンビ素材(レザー×メッシュ)」の方が疲れにくい場合もあります。
3つ目は、ソール交換が可能かどうか。
お気に入りの一足を10年履くためには、ここが重要です。多くのフルレザーモデルはソール交換が可能ですが、軽量化を優先した一部のモデルではできない場合もあります。購入前に「この靴はソールを張り替えられますか?」と店員さんに確認するか、メーカーサイトをチェックしましょう。
本気で選ぶならこれ!おすすめのレザートレッキングシューズ15選
ここからは、信頼性の高いブランドの中から、特に評価の高いモデルを厳選してご紹介します。
まずは、登山靴の聖地イタリアの老舗ブランドから。
スカルパ キネシス プロ GTXは、フルレザーの質感が美しい名作です。堅牢でありながら、足首の動きを妨げない設計で、多くのアルピニストに愛されています。また、ザンバラン パスビオ GTXは、伝統的な製法を守りつつ、現代的な軽さを取り入れた絶妙なバランスの一足です。
ドイツの職人魂を感じたいなら、ローバー タホー プロ II GTが外せません。日本人の足にも馴染みやすい木型を採用しており、長距離を歩いても疲れにくいと評判です。
「やっぱり日本の山には日本の靴」という方には、キャラバン GK85がおすすめ。コストパフォーマンスが非常に高く、本格的なヌバックレザーを使用しながらも、手が出しやすい価格設定になっています。また、モンベル アルパインクルーザー2000も、高品質な素材を日本人の足に合わせて丁寧に作り上げた人気モデルです。
他にも、デザイン性に優れたダナー マウンテンライトは、登山だけでなくキャンプやタウンユースでも映える一生モノとして有名です。
軽量さを求めるなら、サロモン X ULTRA 4 GORE-TEXのようなモデルにレザーパーツを組み合わせたタイプもありますが、長く愛用するならやはりスポルティバ TX5 GTXのような、アプローチシューズの軽快さとレザーの保護力を兼ね備えたモデルが現代のトレンドです。
北欧のこだわりが詰まったハグロフス トレッキングシューズや、アメリカのタフな思想が反映されたキーン ピレニーズなども、それぞれ独特のレザーの風合いを楽しめます。
マムート ケント アドバンスド High GTXやミレー G G GTX、アゾロ ドリフターなども、世界中の登山道でその実力が証明されている信頼の一足です。
最後に、クラシックな見た目にこだわりたいならガルモント ベッタやハンワグ アラスカもチェックしてみてください。どれも個性的で、あなたの相棒にふさわしい風格を備えています。
レザーシューズを「一生モノ」にするための魔法の習慣
せっかく手に入れたお気に入りのレザーシューズ。10年、20年と履き続けるためには、ほんの少しのコツが必要です。
最も大切なのは「帰宅後のブラッシング」です。
山から帰ったら、まずは泥汚れを丁寧に落としましょう。泥がついたまま放置すると、革の水分が吸い取られてしまい、ひび割れの原因になります。水洗いをした場合は、必ず直射日光を避けた風通しの良い場所で「陰干し」してください。
そして、革が少し乾いてきたなと感じたら、専用のクリームやワックスで栄養を補給します。ヌバックならコロニル ヌバック・スエード用スプレーのようなタイプが、質感を損なわずに保革できるので便利です。
「手入れが面倒」と感じるかもしれませんが、実際にやってみると、クリームを塗り込むたびに深みを増していく革の表情に、どんどん愛着が湧いてくるはずです。その傷ひとつひとつが、あなたが歩んだ山の記憶として刻まれていきます。
トレッキングシューズはレザーを選んで、最高の山歩きを。
最新のハイテクシューズも素晴らしいですが、使うほどに自分の足に馴染み、共に成長していけるレザーのトレッキングシューズには、数値では測れない価値があります。
最初は少し重く感じるかもしれません。メンテナンスに戸惑うこともあるでしょう。しかし、雨上がりの泥道を歩いても浸みない安心感、ガレ場でもびくともしない安定性、そして何より、玄関で出番を待つその堂々とした佇まいは、あなたの登山ライフをより豊かなものにしてくれます。
まずはショップで、気になる一足に足を通してみてください。そして、数年後の自分を想像してみてください。その時、あなたの足元で鈍い光を放っているのは、きっと世界にひとつだけの、あなたに馴染んだレザーの相棒です。
適切な選び方と少しの手入れで、トレッキングシューズはレザーが最高の選択肢になります。あなたも「一生モノ」の一歩を、ここから踏み出してみませんか。


