ニューバランスの数ある名作の中でも、1990年代のハイテクスニーカーブームを象徴するモデルとして知られるのが「ニューバランス1600」です。登場から約30年を経てもなお、ファッション愛好家やスニーカーファンの間で根強い人気を誇る理由はどこにあるのでしょうか。この記事では、1600の歴史、特徴、履き心地、そして復刻モデルの魅力までをじっくり解説していきます。
1990年代に誕生したハイエンドモデル「ニューバランス1600」
ニューバランス1600が登場したのは1994年。当時は世界的にハイテクスニーカーが流行しており、ニューバランスもその流れの中で「1000番台シリーズ」の上位機種として1600をリリースしました。価格は当時で3万円を超えることもあり、ランニングシューズとしては高級な部類に入ります。
しかし、それだけの価値がある完成度を誇っていたのがこのモデル。単なるスポーツシューズではなく、デザイン性や素材、履き心地まで徹底的にこだわり抜かれており、ファッションスニーカーとしての評価も高まりました。
1600は「機能性×高級感×ファッション性」という三拍子を兼ね備えた存在。ニューバランスの中でも“通好み”のモデルとして知られるようになります。
高機能を支えるテクノロジー:ABZORBとENCAPの融合
ニューバランス1600が高く評価された最大の理由は、そのテクノロジーの進化にあります。
ミッドソールには「ABZORB(アブゾーブ)」が初めて1000番台シリーズに搭載されました。これは衝撃吸収性に優れた素材で、着地の衝撃を和らげながら推進力へと変換する仕組み。ランニング中の安定感と疲労軽減を実現しました。
さらに、安定性を高める「ENCAP(エンキャップ)」構造も採用。柔らかいクッション素材を硬質のポリウレタンで包むことで、衝撃吸収と安定感を両立しています。
この組み合わせが、当時のランニングシューズとしては非常に先進的で、今でも履き心地の基準となる完成度を誇っています。
デザインの特徴:クラシックとハイテクの絶妙なバランス
1600のデザインは、一目で「90年代の名作」と分かる存在感を持っています。スエードとメッシュを組み合わせたアッパーは、通気性と高級感を両立。ボリュームのあるフォルムながら、シルエットはすっきりしており、カジュアルにもストリートにもマッチします。
サイドの「N」ロゴはやや控えめで、全体のトーンを上品にまとめるデザイン。トゥ部分のカーブや厚めのミッドソールが、見た目にも安定感を与えています。
オリジナルモデルはアメリカ製(Made in USA)で、生産精度の高さも魅力の一つ。細部まで丁寧に作り込まれた造形が、ニューバランスらしいクラフトマンシップを感じさせます。
復刻モデル「CM1600」シリーズの登場
オリジナル発売から年月が経った現在、1600は復刻モデルとして再び注目を集めています。代表的なのが「CM1600」シリーズ。素材やソール構造を現代向けにアップデートしつつも、デザインは当時の雰囲気を忠実に再現しています。
また、限定カラーやショップ別モデルも多数展開されています。日本限定仕様の「CM1600LE」や、海外コラボレーションによる「UBIQ × New Balance 1600 “English Crown”」「UBIQ × New Balance 1600 “The Benjamin”」などは、コレクターズアイテムとして高い人気を誇ります。
こうした復刻・別注モデルは、オリジナルの技術と90年代のデザインを現代的に再解釈した“ネオクラシック”として、多くのファンを魅了しています。
履き心地レビュー:クッション性と軽さが両立
実際に履いたユーザーからの評価も非常に高いのが1600の特徴。特に多くのレビューで挙げられるのが「軽さ」と「クッション性」のバランスです。
ABZORBによる衝撃吸収力に加え、程よい反発感があり、長時間歩いても疲れにくいとの声が目立ちます。さらに足裏の安定感も抜群で、かかとからつま先までの重心移動がスムーズ。ランニングはもちろん、普段履きでも快適です。
サイズ感はややゆとりがあり、幅広タイプの足でも履きやすい傾向にあります。ただしモデルによって素材やラスト(木型)が異なるため、購入時には試着かサイズレビューの確認をおすすめします。
素材の経年変化とメンテナンスのポイント
オリジナルモデルや復刻版の一部はスエード素材を使用しているため、メンテナンスも重要です。防水スプレーを使用したり、ブラッシングで毛並みを整えることで、美しい質感を長く保つことができます。
古い個体ではソールの経年劣化(加水分解)に注意が必要ですが、これは多くの90年代スニーカーに共通する特性。状態の良い中古品を選び、定期的にクリーニングすることで長く愛用できます。
コーディネートで光る「ニューバランス1600」
ファッションの観点から見ても、1600は非常に万能な一足です。クラシックなデザインながらもボリュームがあるため、シンプルな装いのアクセントにぴったり。
細身のパンツと合わせれば都会的な印象に、ゆったりしたシルエットと組み合わせればストリート感が出ます。グレーやネイビーなどのベーシックカラーはどんな服装にも馴染み、カラーブロックモデルは足元で個性を演出します。
90年代の雰囲気を感じさせるレトロスタイルにも相性抜群で、近年の“ニューレトロ”ブームにも自然に溶け込みます。スニーカーファンだけでなく、幅広い層に愛される理由がここにあります。
購入時の注意点と市場動向
ニューバランス1600は、現在新品での入手が難しいモデルも多く、復刻や限定品はすぐに売り切れる傾向があります。中古市場では「Made in USA」仕様やコラボモデルがプレミア価格になることも。
購入時には、製造国・型番(例:CM1600LG、CM1600LEなど)、素材の状態をしっかり確認することが大切です。特にソールやミッドソールの状態は見落とされがちなので注意しましょう。
最近ではオンラインストアやスニーカー専門店で復刻版の再入荷もあるため、定期的なチェックがおすすめです。価格だけでなく、サイズ感や履き心地のレビューも参考に選ぶと失敗しにくいでしょう。
復刻モデルが示すニューバランスの普遍的な価値
1600の復刻は、単なる懐古主義ではなく、ニューバランスの哲学を再確認させる存在です。
「履き心地」「安定性」「素材へのこだわり」といったブランドのDNAが凝縮されており、現代のスニーカー市場でも色あせません。新しいテクノロジーが次々と登場する中で、1600のようなモデルが今なお評価され続けるのは、それだけ完成度が高い証拠です。
ニューバランス1600の魅力をもう一度
ニューバランス1600は、1990年代の技術革新とクラフトマンシップの象徴といえる存在です。ABZORBやENCAPといった高機能ソール、丁寧に作り込まれたアッパー、そして上品なデザイン。すべてが一体となり、履くたびに“良い靴”であることを実感させてくれます。
復刻モデルの登場によって、再び注目を集めている1600。クラシックでありながら今の時代にもフィットする一足として、スニーカーファンはもちろん、日常で快適に過ごしたい人にもおすすめです。
一度履けば、その完成されたバランスと心地よさにきっと驚くはず。時を超えて愛される「ニューバランス1600」、その魅力をぜひあなたの足で体感してみてください。


