「雨に降られて革靴がびしょ濡れ……。早く乾かしたいし、太陽の光で殺菌もしたいからベランダで天日干ししちゃおうかな?」
ちょっと待ってください!その判断、あなたの大切な相棒である革靴にトドメを刺してしまうかもしれません。
お気に入りの革靴を長く、美しく履き続けるためには、濡れた後のメンテナンスが運命を分けます。今回は、なぜ革靴に天日干しが危険なのかという理由から、もし濡れてしまった時にプロが実践する「正しいレスキュー法」まで、詳しくお話ししていきますね。
なぜ「革靴を天日干し」してはいけないのか?3つの大きなリスク
結論から言うと、革靴を直射日光の下で干すのは絶対に避けるべきNG行為です。「お布団や洗濯物と同じでしょ?」と思ってしまうかもしれませんが、革は生き物。急激な温度変化や紫外線にはとても弱いデリケートな素材なんです。
天日干しをすることで起こる、恐ろしい3つのリスクを整理してみましょう。
1. 水分と油分のバランスが崩れて「ひび割れ」が起きる
革の柔軟性は、繊維の間に含まれる適度な水分と油分によって保たれています。直射日光にさらされると、表面から急激に水分が奪われ、同時に革を保護している大切な油分まで揮発してしまいます。
人間のお肌が乾燥でカサカサになり、放っておくとパックリ割れてしまうのと同じで、革も乾燥しすぎると「クラック」と呼ばれる修復不可能なひび割れが起きてしまうのです。
2. 紫外線による「色あせ・変色」のダメージ
太陽の光に含まれる紫外線は、革の染料を分解してしまいます。せっかくの深い色合いが白っぽく退色してしまったり、左右で日光の当たり方が違うと斑(むら)になってしまったりすることも。特に明るい茶色の靴やスエード素材は、紫外線の影響をダイレクトに受けてしまうので注意が必要です。
3. 熱による「型崩れ」と「ソールの剥がれ」
直射日光による熱は、革を硬く収縮させます。これによって靴の形が歪んでしまい、一度硬化した革は元のしなやかな形に戻すのが非常に困難です。さらに、靴の底(ソール)を接着している糊が熱で変質し、パカっと剥がれてしまう原因にもなりかねません。
もし革靴が濡れてしまったら?プロが教える「最短・安全」な乾かし方
「天日干しがダメなら、どうやって乾かせばいいの?」と不安になりますよね。大丈夫です。正しいステップを踏めば、雨に濡れたダメージを最小限に抑え、以前よりも艶やかな状態に戻すことだって可能です。
ステップ1:表面の汚れと水分を「叩くように」拭き取る
まずは、表面についた泥汚れや雨水を乾いた柔らかい布で拭き取ります。この時、ゴシゴシ擦るのは厳禁。濡れた革の表面は非常にデリケートなので、布を押し当てるようにして水分を吸い取ってください。
ステップ2:中身に「新聞紙」を詰めて湿気を吸い出す
靴の中までびっしょり濡れている場合は、吸水性の高い新聞紙やキッチンペーパーを丸めて中に詰めます。
ここで最大のポイントは、**「こまめに交換すること」**です。最初の1〜2時間は、新聞紙がすぐに水分を吸って重くなります。湿った紙を入れっぱなしにすると、逆になかなか乾かず、カビが発生する原因になります。30分〜1時間おきに新しい紙に入れ替えてください。
ステップ3:風通しの良い「日陰」でつま先を浮かせる
ある程度水分が抜けたら、直射日光の当たらない、風通しの良い日陰で干します。
この時、靴の底まで空気が通るように工夫するのがコツです。壁に立てかけたり、スノコの上に置いたりして、つま先を少し浮かせた状態で干すと、乾燥のスピードが格段にアップします。
ステップ4:完全に乾く前に「保革ケア」を行う
ここが意外と知られていない重要ポイントです。革が完全に乾き切ってしまう直前、まだ少ししっとりしているくらいのタイミングで、デリケートクリームを薄く塗ってあげましょう。
乾燥過程で失われていく油分を先回りして補給することで、革が硬くなるのを防ぎ、しなやかさを保つことができます。
「天日干ししてしまった!」後のレスキュー術。硬くなった革は戻せる?
もし、この記事を読む前に天日干しをしてしまい、靴がカチカチに硬くなってしまったとしても、諦めないでください。プロが使う手法で、ある程度の柔軟性を取り戻せる可能性があります。
硬くなった革を復活させる鍵は「加脂(かし)」、つまり油分の補給です。
通常の靴クリームよりも浸透力が高いモゥブレィ デリケートクリームなどを使用します。
- 少量のクリームを指に取り、硬くなった部分に優しく塗り込みます。
- 一度にたくさん塗るのではなく、薄く塗って時間を置き、革に吸い込ませるのを繰り返します。
- 少しずつ革が動くようになったら、手で優しく揉みほぐして繊維をほぐしていきます。
ただし、完全に割れてしまったクラック(ひび)を元通りに繋げることはできません。そうなる前に、日頃からのケアが大切なのです。
革靴のニオイやカビ対策には「日光」以外でアプローチしよう
「でも、天日干ししないとバイ菌が繁殖して臭くなりそう……」
そう思う方も多いはず。確かに日光には殺菌作用がありますが、革靴の健康を損なってまで行う必要はありません。ニオイやカビ対策には、別の安全な方法を選びましょう。
木製のシューキーパーを活用する
木製シューキーパー(シューツリー)は、形を整えるだけでなく、木そのものが持つ吸湿効果と消臭効果で靴の中を清潔に保ってくれます。特にレッドシダー素材のものは香りが良く、防虫・防カビ効果も期待できます。
専用の除菌消臭スプレーを使う
帰宅後にサッと一吹きするだけで菌の繁殖を抑えてくれるスプレーを活用しましょう。最近では銀イオン成分が含まれたものなど、非常に強力なアイテムが揃っています。
1日履いたら2日休ませる
これが最もシンプルで最強のメンテナンスです。1日履いた革靴は、コップ1杯分の汗を吸っていると言われます。その水分が完全に抜けるまでには約2日かかります。3足をローテーションさせることで、靴の寿命は飛躍的に伸びます。
まとめ:革靴を天日干しするリスクを知り、正しいケアで一生モノの相棒に
いかがでしたでしょうか?良かれと思ってやっていた「天日干し」が、実は革靴にとっての天敵だったということに驚かれた方もいるかもしれません。
最後に、濡れた時のおさらいです。
- 革靴の天日干しは絶対にNG。 ひび割れや色あせの原因になります。
- 濡れたらまずは布で水分を拭き取り、新聞紙をこまめに交換して吸湿。
- 風通しの良い日陰で、つま先を浮かせてじっくり乾かす。
- 仕上げに靴クリームで油分を補給して、乾燥ダメージを防ぐ。
「雨の日は革靴を履かない」のが一番ですが、どうしても濡れてしまうことはあります。そんな時、正しい知識で適切にケアしてあげれば、革靴は味わいを深めながら、あなたの足元を何年も支えてくれるはずです。
正しいケアを身につけて、革靴を天日干しするリスクから大切な一足をしっかり守ってあげてくださいね。
次にお手伝いできることがあれば教えてください。例えば、スエード素材の雨対策や、おすすめの防水スプレーの選び方なども詳しく解説できますよ!


