「せっかく京都を歩くなら、背筋が伸びるような良い靴を履きたい」
「歴史ある街並みに馴染む、本物の革靴を新調したい」
そんな風に思ったことはありませんか?千年の都・京都は、実は知る人ぞ知る「革靴の聖地」でもあります。路地裏に佇むビスポーク(オーダーメイド)の工房から、築百年の町家を再生した世界最高峰のブランドショップまで、この街には独自の靴文化が息づいています。
今回は、京都で理想の一足に出会いたい方、そして手に入れた靴を一生モノとして育てたい方のために、地元目線で厳選したショップやメンテナンスの名店を徹底解説します。
京都で革靴を選ぶなら。絶対に外せない3つのエリアと名店
京都の街はコンパクトですが、エリアごとに靴店の個性がはっきりと分かれています。自分のスタイルに合った一足を見つけるために、まずは主要なスポットを押さえておきましょう。
1. 伝統と革新が交差する「祇園・四条・寺町」エリア
このエリアは、世界的なラグジュアリーブランドと、日本を代表する老舗セレクトショップが共存する、革靴好きにはたまらないゾーンです。
まず訪れたいのが、祇園の新門前通にあるJOHN LOBB(ジョンロブ)京都店。英国王室御用達の最高峰ブランドですが、驚くのはその店舗構えです。伝統的な町家をリノベーションした空間は、靴を選ぶという行為そのものを特別な体験に変えてくれます。京都限定のモデルが登場することもあり、ファンなら一度は足を運ぶべき聖地と言えるでしょう。
また、寺町京極商店街にある「トレーディングポスト京都店」も外せません。ここではCrockett&Jones(クロケット&ジョーンズ)をはじめとする世界中の名靴が揃います。熟練のスタッフによるフィッティングは非常に精密で、「自分の本当の足のサイズを知ることができた」と感動するファンも少なくありません。
四条エリアのランドマークである「京都BAL」や「藤井大丸」には、J.M. WESTON(ジェイエムウエストン)などのインポートブランドや、感度の高いセレクトショップが凝縮されています。最新のトレンドとクラシックの融合を楽しみたいなら、このエリアが最適です。
2. 職人の息遣いを感じる「北野・西陣・御所周辺」エリア
「誰とも被らない、自分だけの一足が欲しい」
そんな願いを叶えてくれるのが、中心部の喧騒を離れた場所にひっそりと構える個人工房です。
北野天満宮のほど近くに店を構える「GROWOLD Shoes & Crafts」は、その代表格。ここでは「時を重ねる」ことをコンセプトに、履き込むほどに味わいが増す靴作りが行われています。オーダー会では職人と直接対話しながら、革の種類やデザインを決めていく贅沢な時間を過ごせます。
また、御所周辺や西陣エリアには、注文靴(ビスポーク)を専門とする若手からベテランまでの職人が点在しています。「Shoe Scape」のように、解剖学的なアプローチで歩きやすさを追求する工房もあり、既製品ではどうしても足が痛くなってしまうという方の救世主となっています。
3. カジュアルに革靴を楽しむ「東山・河原町」エリア
京都観光のついでに、気軽に良質な靴に触れたいなら東山エリアがおすすめです。広島発の職人靴ブランドとして知られる「スピングル京都東山」では、スニーカーのような履き心地でありながら、ビジネスシーンでも使える上品なレザーシューズが手に入ります。坂道の多い京都の街を歩き回るには、こうした機能性の高い一足も重宝します。
一生モノを育てる。京都が誇る修理と靴磨きのプロフェッショナル
良い革靴を手に入れたら、次に考えるべきは「どう維持するか」です。京都には、古いものを大切にする文化から生まれた、全国屈指の技術を持つメンテナンス店が集まっています。
1. 「凛とした姿」を取り戻す靴修理の名店
お気に入りの靴の底が減ってしまった、あるいは革が破れてしまった。そんな時に頼りになるのが「靴修理 凛靴(りんか)」です。三条大宮や河原町丸太町に店舗を構えるこの店は、単に直すだけでなく、その靴が持つ本来の美しさを引き出す「復元」に近い修理を行ってくれます。
また、桂エリアにある「REPAIRIST(リペアリスト)」も、靴愛好家からの信頼が厚い一軒です。オールソール(靴底全体の交換)などの大掛かりな修理はもちろん、ヴィンテージスチールによるつま先の補強など、購入直後のプレメンテナンスでも高い技術を発揮してくれます。
2. 靴に命を吹き込む「鏡面磨き」の魔術師
靴は磨き方ひとつで表情がガラリと変わります。中京区にある「Glayage KYOTO(グラヤージュ キョウト)」は、靴磨きの概念を覆してくれる専門店です。
カウンター越しに職人が手際よく靴を磨き上げる様子は、まるでバーでカクテルを待っているかのような高揚感があります。鏡のように周囲を映し出す「鏡面磨き」を施された靴は、履く人の品格を一段も二段も引き上げてくれるはずです。自分での手入れに行き詰まったら、プロの技を借りてみるのも一つの手です。
3. 日常のメンテナンスに欠かせないアイテム
プロに任せるだけでなく、日々のケアも大切です。京都の靴店でも推奨されているのが、良質なシューキーパーとクリームです。Saphir(サフィール)のノワールシリーズなどの高級クリームや、湿気を調整してくれるコロニル(Collonil)のシュートゥリーを揃えておけば、靴の寿命は飛躍的に伸びます。
特に、京都の夏は湿気が多く、冬は底冷えするため、革にとって過酷な環境です。帰宅後に馬毛ブラシで埃を払い、シューキーパーを入れて休ませる。この一手間が、一生モノへの最短距離となります。
失敗しない!京都での革靴選び 3つのポイント
京都で靴を探す際、後悔しないために意識しておきたいポイントがあります。
ポイント1:京都の「路面」を意識する
京都の街は、風情ある石畳や、意外と凹凸のある古いアスファルトが多いのが特徴です。そのため、あまりに繊細すぎるシングルソールの靴だと、長時間歩いた際に足裏が疲れやすいことがあります。
もし観光や街歩きをメインに考えているなら、少し厚みのあるダブルソールや、ラバー(ゴム)が貼られたタイプを選ぶのが現実的です。最近ではVibram(ビブラム)ソールのデザイン性に優れたモデルも多く、スタイルを損なわずに機能性を確保できます。
ポイント2:脱ぎ履きのしやすさを考慮する
京都には、座敷に上がる飲食店や寺院、町家造りのギャラリーなど、靴を脱ぐ機会が驚くほどたくさんあります。
そのため、脱ぎ履きに時間がかかる複雑なモンクストラップや、紐をきつく締め上げるブーツタイプは、場面によっては少し不便に感じることも。スムーズに着脱できるローファーや、サイドゴアブーツ、あるいは質の高い靴べらを携帯しておくのが「京都通」の嗜みです。
ポイント3:職人との相性を大切にする
オーダーメイドを検討する場合、技術はもちろんですが、職人さんとの「対話」を重視してください。京都の職人は気さくな方が多いですが、それぞれの靴作りに対する哲学があります。
「どんな場所へ履いていきたいか」「どんな風に年を重ねたいか」を丁寧に聞いてくれるお店なら、きっと満足のいく一足が出来上がるはずです。
伝統とモダンが息づく革靴を京都で見つける旅
京都で革靴を探す旅は、単なるショッピングではありません。それは、その土地の歴史に触れ、職人の情熱を感じ、自分自身のライフスタイルを見つめ直す時間でもあります。
格式高い祇園のショップで緊張感を持って選ぶのも良いですし、西陣の工房で職人と語らいながらデザインを決めるのも素敵な体験です。そして、手に入れた靴を京都の腕の良い修理店へ預け、何十年と履き続ける。それこそが、究極の贅沢と言えるのではないでしょうか。
一足の靴が、あなたの歩く景色を変えてくれます。
次に京都を訪れる際は、ぜひ路地裏の名店を覗いてみてください。そこには、あなたのこれからの人生を支える、運命の一足が待っているはずです。
もし、今すぐ自宅でメンテナンスを始めたいなら、まずは靴磨きセットを手に入れて、手元の靴を磨いてみることから始めてみましょう。革靴を京都で嗜む喜びは、そこからすでに始まっています。


