「革靴を履くと、どうしても足が疲れやすい……」
「紐の通し方なんて、買った時のままでいいんじゃないの?」
もしあなたがそう思っているなら、非常にもったいないことをしています。実は、革靴の紐の通し方ひとつで、見た目の印象はもちろん、歩きやすさや足への負担が劇的に変わるからです。
ビジネスシーンで最も推奨され、多くの靴好きが「結局これが一番」と口を揃えるのが「パラレル」という結び方です。
今回は、なぜパラレルが選ばれるのかという理由から、初心者でも失敗しない具体的な手順、そして一日中快適に過ごすためのプロのテクニックまで、余すところなくお伝えします。
なぜデキる大人は「パラレル」を選ぶのか
革靴の紐の通し方には、シングル、オーバーラップ、アンダーラップなど、いくつもの種類があります。その中で、なぜビジネスマンにパラレルがこれほど支持されているのでしょうか。
最大の理由は「機能美」にあります。
パラレルは、表に見える紐がすべて水平(平行)に並びます。この整然としたルックスは、清潔感や信頼感が求められるビジネスの現場において、最高の第一印象を与えてくれます。特にフォーマルなストレートチップやプレーントゥの靴との相性は抜群です。
しかし、パラレルの真価は見た目だけではありません。実は「ホールド感」と「適度な遊び」のバランスが絶妙なのです。
パラレルは構造上、左右の紐が均等に締まるようになっています。そのため、一部だけが痛くなるような締め付けが起こりにくく、足全体を包み込むようなフィット感を得られます。また、歩行時に足が屈曲する動きに合わせて紐がわずかに動くため、足の甲への圧迫感を逃がしてくれる効果もあります。
「見た目はスマート、履き心地はタフ」
そんなワガママを叶えてくれるのが、パラレルという通し方なのです。
準備編:自分の靴の「穴の数」を確認しよう
パラレルに挑戦する前に、まずは自分の革靴の「ハトメ(紐を通す穴)」の数を数えてみてください。実は、穴の数が偶数か奇数かによって、スタート時の紐の長さ調整が変わってきます。
一般的なビジネスシューズは「5個(5穴)」や「6個(6穴)」が多いですが、ここを間違えると最後に紐の長さが左右でバラバラになり、結び直す羽目になります。
・穴の数が偶数(4穴、6穴)の場合
左右の紐を同じ長さにしてスタートして大丈夫です。
・穴の数が奇数(5穴)の場合
片方の紐をあらかじめ15cm〜20cmほど長くした状態で通し始めてください。パラレルは片方の紐が「1段飛ばし」で進む距離が長いため、最終的な帳尻を合わせるための工夫です。
準備ができたら、実際に通していきましょう。
実践!パラレルの正しい通し方ステップ
それでは、具体的な手順を解説します。言葉で聞くと難しく感じるかもしれませんが、ルールはシンプルです。
まず、一番つま先側の左右の穴に、上から紐を通します。ここがスタート地点です。この時、左右の紐が靴の内側から出ている状態になります。
次に、左側の紐(便宜上そう呼びます)を、1つ上の穴を飛ばして「3段目」の穴に内側から外側へ通します。外に出た紐を、そのまま真横にある右側の3段目の穴へ、外側から内側へ通します。これで一段、平行なラインができました。
今度は右側の紐です。これはすぐ上の「2段目」の穴に内側から外側へ通します。同じように、真横にある左側の2段目の穴へ、外側から内側へ通します。
この「1段飛ばして横に渡る」という動作を交互に繰り返していくだけです。右側の紐は「2段目→4段目→6段目」と進み、左側の紐は「3段目→5段目」と進んでいくイメージですね。
最後に、両方の紐が最上段の穴から内側から外側へ出てくれば完成です。
もし途中で「あれ?紐が足りない」とか「平行にならない」と思ったら、一段飛ばしのルールが崩れていないかチェックしてみてください。慣れてしまえば、片足3分もかからずにできるようになります。
パラレルを最大限に活かす「締め方」のコツ
せっかくパラレルで紐を通しても、締め方が悪いとその性能を100%引き出せません。多くの人がやってしまいがちなのが、最上段の紐だけを力任せに引っ張ることです。
これでは、つま先近くの紐が緩んだままになり、足が靴の中で遊んでしまいます。これが靴擦れや疲れの原因になるのです。
パラレルで靴を履くときは、まず「下から順番に」テンションをかけていくことを意識してください。
具体的には、2段目や3段目の横に渡っている紐を、指で軽くつまんで手前に引き寄せます。パラレルは紐同士が連動しているため、この動作を繰り返すことで、足の甲全体に均一な圧力がかかります。
最後に最上段をキュッと締めれば、まるでオーダーメイドのような一体感が生まれます。
また、脱ぐときも同様です。一番上の結び目を解いた後、2段目の紐を指で少し浮かせてあげてください。すると、連動して下の段までスルスルと緩んでくれます。無理に羽根を広げて革を傷める心配もありません。
靴紐選びで変わる!パラレルの表情
パラレルの美しさをさらに引き立てるなら、紐自体の品質にもこだわってみましょう。
革靴の紐には大きく分けて「丸紐」と「平紐」があります。
フォーマルな印象を極めたいなら、細めの革靴用丸紐がおすすめです。パラレルの水平ラインがよりシャープに際立ち、ドレッシーな雰囲気が強調されます。
一方で、少しカジュアルな要素を加えたり、より高いホールド感を求めたりする場合は革靴用平紐を選んでみてください。平紐は接地面が広いため、パラレルの構造と相まって、より緩みにくく安定した履き心地を提供してくれます。
また、最近では「蝋引き(ろうびき)」加工が施された紐も人気です。紐の表面がコーティングされているため、ツヤが出て高級感が増すだけでなく、摩擦が強くなるためパラレルの形が崩れにくくなるというメリットもあります。
もし今の紐が毛羽立っていたり、色が褪せていたりするなら、通し方を変えるタイミングで高級靴紐に新調するのも良い投資になりますよ。
メンテナンスが「パラレル」を長持ちさせる
パラレル結びは非常に機能的ですが、長く愛用するためには「紐への負担」も考慮する必要があります。
常に同じ場所で締め付けが起こるため、特定の箇所だけ紐が細くなったり、擦り切れたりすることがあります。月に一度の靴磨きのタイミングで、紐を一度すべて外してみることをおすすめします。
紐を外すことで、普段は隠れている「羽根」の内側の埃や汚れを落とすことができますし、革の乾燥を防ぐクリームも塗りやすくなります。
「紐を外すと通すのが面倒くさい」と感じるかもしれませんが、その手間こそが、お気に入りの一足を10年、20年と履き続けるための秘訣です。清潔な状態の革に、再びパリッとパラレルで紐を通す瞬間は、背筋が伸びるような心地よさがあります。
もし、靴の革が硬くてパラレルが締めにくいと感じる場合は、レザーストレッチャーやデリケートクリームを使って、革を柔らかく馴染ませてから調整してみてください。
足の悩み別・パラレルの微調整テクニック
人によって足の形は千差万別です。パラレルを基本としつつも、自分の足に合わせて少しアレンジを加えることで、さらに快適さは向上します。
例えば「甲高」で悩んでいる方。パラレルを通す際、甲が一番高くなっている部分だけ、一段飛ばさずにそのまま上の穴へ通してみてください。そこだけ横方向の紐がなくなるため、圧迫感が劇的に軽減されます。
逆に「足が細くて靴の中で滑る」という方は、最上段の穴を利用した「ダブルアイレット」という技法をパラレルと組み合わせるのが有効です。
最後の一段だけ輪っかを作り、そこに紐を通すことで、足首周りの固定力が飛躍的に高まります。これにより、パラレルの均一なホールド感に加え、かかとの浮きを完璧に抑えることができます。
自分の足の声を聞きながら、最適なテンションを探っていく。これも革靴を楽しむ醍醐味のひとつと言えるでしょう。
革靴のパラレル結びをマスター!基本の通し方から快適な締め方のコツまで徹底解説
ここまで、革靴のパラレル結びについて、その魅力から実践方法まで詳しくお伝えしてきました。
パラレルは単なるファッションのルールではありません。
・足全体のホールド感を高め、疲労を軽減する。
・着脱をスムーズにし、靴へのダメージを減らす。
・ビジネスマンとしての品格を足元から演出する。
これらすべての要素を叶えてくれる、最も理にかなった通し方なのです。
もし今、あなたの靴がなんとなく履きにくいと感じているなら、ぜひ一度紐をすべて抜いてみてください。そして、丁寧に、一段ずつパラレルで紐を通してみてください。
完成した靴に足を入れた瞬間、そのフィット感の違いに驚くはずです。
シューキーパーで形を整え、美しくパラレルが施された革靴は、あなたをより自信に満ちた場所へと連れて行ってくれるでしょう。
今日からあなたの革靴ライフが、より快適で素晴らしいものになることを願っています。


