お気に入りの革靴を長く、美しく履き続けるために欠かせないのが靴磨きですよね。しかし、いざメンテナンスを始めようとして、多くの人が最初にぶつかる壁があります。
それが「クリームの色選び」です。
「自分の靴にぴったりの色が見つからない」「色が濃くなりすぎて失敗したらどうしよう」と悩んで、結局何もできずに放置してしまっていませんか?
実は、革靴のクリーム選びには、初心者でも絶対に失敗しない黄金のルールがあるんです。この記事では、色選びの基本から、色が合わなかった時の対処法、そしてプロも愛用するおすすめのクリームまで、あなたの悩みをすべて解決する情報を凝縮してお届けします。
革靴のクリームで「色」が重要な理由とは?
そもそも、なぜ革靴に色付きのクリームを塗る必要があるのでしょうか。
革は動物の皮を加工した天然素材です。履き続けるうちに、歩くときの摩擦や日光による紫外線、雨による水分の蒸発などで、少しずつ色が抜けて「退色」していきます。特に、つま先やかかとは擦れやすく、キズがつくとそこだけ色が白っぽく浮いてしまうこともありますよね。
色付きのクリームには、革に栄養を与えるだけでなく、抜けてしまった色を補う「補色」という大切な役割があります。正しい色を選ぶことで、使い古した靴もまるで新品のような深みとツヤを取り戻すことができるのです。
逆に、色選びを適当にしてしまうと、ムラができたり、靴本来の風合いを損ねてしまったりするリスクもあります。だからこそ、正しい知識を持って選ぶことが大切なんです。
迷ったらこれ!色選びの「ゴールデンルール」
「お店に行っても、茶色だけで何種類もあって選べない!」という方へ。まずは、どんな靴にも共通して使える3つの鉄則を覚えましょう。
1. 「実物よりもワントーン明るめ」を選ぶ
これが最も大切で、かつ失敗を防ぐ最大のコツです。もし、靴の色と全く同じ色が見つからない場合は、必ず「実物よりも少しだけ明るい(薄い)色」を選んでください。
なぜなら、革にクリームの油分や水分が浸透すると、視覚的に色は少し濃く見える傾向があるからです。薄い色であれば、塗り重ねることで徐々に色を調整できますが、一度濃くなりすぎた色を元に戻すには、強力なクリーナーで革を傷めながら落とすしかありません。
2. ブラウン系は「赤み」か「黄色み」かを見極める
茶系の靴は最も色の種類が多く、迷いやすいポイントです。まずは、お手持ちの靴を太陽光の下でよく観察してみてください。
- 赤系: ボルドー、バーガンディ、マホガニーなど(赤ワインのような色味)
- 黄色・オーク系: タン、ライトブラウン、キャメルなど(ベージュや黄土色に近い色味)
- 中間~濃色: ミディアムブラウン、ダークブラウン(コーヒーやチョコレートのような色味)
靴の表面で最も「色が明るい部分」に注目し、その系統に合わせたクリームを選ぶと、馴染みが非常に良くなります。
3. 黒い靴には「ブラック」一択
黒い革靴の場合は、悩む必要はありません。ブラックのクリームを選びましょう。
「無色のクリームでもいいのでは?」と思うかもしれませんが、黒い靴に無色(ニュートラル)を使い続けると、履きシワの部分にロウ分が溜まり、白っぽく浮き出てしまう「チョーキング現象」が起きることがあります。黒の深みをキープし、小キズを隠すには、やはりブラックのクリームが最適です。
「色付き」と「無色(ニュートラル)」はどちらが良い?
「色選びで失敗したくないから、全部無色でいいや」と考える方もいるでしょう。ここでは、それぞれのメリットとデメリットを整理してみます。
ニュートラル(無色)のメリット・デメリット
無色のクリームの最大のメリットは、どんな色の靴にも使える汎用性です。ステッチ(縫い糸)が白い靴や、複数の色が使われているコンビ靴には必須のアイテムです。
しかし、デメリットとして「補色効果」が全くありません。長年履いて色が抜けてしまった靴や、深い擦りキズがある靴に使っても、ツヤは出ますがキズは隠せません。また、先ほどお伝えした通り、黒い靴ではシワが白くなる原因にもなります。
色付きクリームのメリット・デメリット
色付きのメリットは、なんといっても「蘇り」の力です。色が抜けた部分を補い、キズを目立たなくさせることで、靴の寿命を格段に伸ばしてくれます。
デメリットは、衣類の裾に色が移る可能性があることや、塗りすぎると厚化粧になって革の質感を隠してしまうことです。基本的には「ここぞ」というメンテナンスの時に使うのがベストです。
革の仕上げによる「色の入り方」の違い
実は、革の種類によってクリームの色が入りやすいものと、そうでないものがあります。これを知っておくと、さらに失敗が減ります。
染料仕上げ(アニリン仕上げなど)
水滴を垂らすとスッと染み込むような、革本来の質感を活かした靴です。このタイプはクリームの色もグングン吸収します。色が入りやすいため、慎重に薄い色から試す必要があります。
顔料仕上げ(ガラスレザーなど)
表面が樹脂などでコーティングされており、ツヤが強い靴です。このタイプはクリームの成分が中まで浸透しにくいため、少し濃いめの色を選ばないと、補色効果を実感しにくいのが特徴です。
色選びで迷った時の「裏技」的な対処法
どうしても色が決められない。そんな時にプロも実践している対処法をご紹介します。
ステップ1:目立たない場所でパッチテスト
いきなりつま先に塗るのではなく、土踏まずの内側や、靴ベラを当てる「タン(舌)」の裏側などで、少量のクリームを試してみてください。乾いた後の色味を確認してから全体に広げれば、取り返しのつかない失敗は防げます。
ステップ2:クリームを混ぜて自作する
もし、手元に明るすぎる茶色と濃すぎる茶色があるなら、パレットの上で混ぜて使うことも可能です。同じメーカーの同じシリーズのクリーム同士であれば、絵の具のように色を調整して「自分の靴専用カラー」を作ることができます。
ステップ3:ステッチを守るために
白いステッチを汚したくないけれど、革は補色したい。そんな時は、ステッチの部分だけ指先で避けて塗るか、あらかじめ無色のワックスを糸の部分に塗って「堤防」を作っておくというテクニックもあります。
メンテナンスを楽しくする!おすすめクリーム8選
それでは、色展開が豊富で使いやすい、信頼のクリームを厳選してご紹介します。
1. サフィールノワール クレム1925
世界中の靴磨き職人が愛用する最高級クリームです。油性でありながら浸透性が非常に高く、シアバター配合で革がしっとりと柔らかくなります。特にブラックの発色の良さと、茶系の色の深みは唯一無二です。
2. M.モゥブレィ シュークリームジャー
初心者に最もおすすめしたいのがこちら。カラーバリエーションが50色以上と非常に豊富で、自分の靴に似た色が必ず見つかります。水溶性で伸びが良く、扱いやすさも抜群です。
3. コロンブス ブートブラック シュークリーム
日本が世界に誇る老舗メーカー、コロンブスの最高峰ラインです。日本人の足元を支えてきたブランドだけあって、日本の革靴メーカーがよく使う色味にフィットしやすいのが特徴です。
4. サフィール ビーズワックスファインクリーム
コスパと性能のバランスが良い定番商品です。蜜蝋(ミツロウ)を主成分としており、自然なツヤと高い補色力が魅力です。カラー展開も多く、手軽にメンテナンスを始めたい方に最適です。
5. コロニル 1909 シュプリームクリームデラックス
「色を入れる」というよりは「革を最高にいたわる」ためのクリームです。浸透性が極めて高く、シダーウッドオイルの香りが心地よい逸品。無色(ニュートラル)の性能が非常に高く、デリケートな革におすすめです。
6. タピール レーダーフレーゲ
天然素材100%にこだわるドイツのブランド。リキッドタイプで塗りやすく、革に優しく栄養を届けます。自然な仕上がりを好む、オーガニック志向の方に人気です。
7. ブートブラックシルバーライン ビン入りクリーム
コロンブスの入門ラインですが、性能は十分。さらっとした使い心地で、ベタつきにくいのが特徴です。日常的なケアとして、こまめに塗りたい方に適しています。
8. イングリッシュギルド ビーズリッチクリーム
英国の伝統的なレシピで作られた、濃厚な着色力が自慢のクリームです。少し色が抜けてしまった古い靴を、ガツンと補色して復活させたい時に頼りになります。
クリームを塗る前に必ずやるべきこと
せっかく正しい色のクリームを選んでも、塗り方を間違えては効果が半減します。
まずは、馬毛ブラシでホコリをしっかり落としましょう。その後、クリーナーを使って古いクリームや汚れを取り除き、革を「スッピン」の状態に戻すことが大切です。古いクリームの上に新しい色を重ねると、色が濁ったり、層になって剥がれたりする原因になります。
クリーニングが終わったら、クリームを指先やペネトレイトブラシに少量取り、円を描くように薄く、広く伸ばしていきます。一度にたくさん塗るのではなく、「少しずつ、薄く」が鉄則です。
最後は、豚毛ブラシで力強くブラッシングしてクリームを隙間まで押し込み、布で乾拭きして余分な成分を取り除けば完了です。
まとめ:革靴用クリームの色選びで失敗しないコツ!
「革靴のクリームの色選び」は、一見難しそうに思えますが、基本さえ押さえれば誰でもマスターできます。
- 迷ったらワントーン明るい色を選ぶこと
- 茶系は「赤み」か「黄色み」かを確認すること
- 黒い靴にはブラック、迷ったら無色を活用すること
この3つのポイントを意識するだけで、あなたの靴磨きのクオリティは劇的に向上します。適切なケアを受けた革靴は、単なる履物ではなく、共に歩む相棒として美しい経年変化を見せてくれるはずです。
まずは、あなたの靴の色をじっくり観察することから始めてみてください。ぴったりのクリームが見つかれば、靴磨きがもっと楽しく、奥深い趣味に変わっていくことでしょう。
今回ご紹介したM.モゥブレィ シュークリームジャーやサフィールノワール クレム1925などのアイテムも参考に、ぜひ理想の足元を手に入れてくださいね。


