「いつかは手に入れたい」と、靴好きの心を掴んで離さないのがイギリスの革靴です。背筋が伸びるような凛とした佇まい、それでいて履き込むほどに自分の足に馴染んでいく感覚。それはまさに、大人のための「育てる工芸品」と言っても過言ではありません。
なぜこれほどまでに世界中で愛されているのか。その秘密は、靴作りの聖地と呼ばれるノーザンプトンの歴史と、伝統的な製法にあります。今回は、初心者の方から玄人まで納得の、一生モノの相棒となるイギリス靴の魅力と選び方を、おすすめブランドとともに深掘りしていきます。
革靴の聖地、英国ノーザンプトンが愛される理由
イギリスの革靴を語る上で欠かせないのが、ロンドンから北へ約100キロに位置する「ノーザンプトン」という街です。ここは19世紀から続く靴作りの拠点で、今なお数多くの名門ファクトリーが軒を連ねています。
イギリス靴の最大の特徴は、何といっても「質実剛健」であること。イタリア靴が軽やかで色気のあるデザインを得意とするのに対し、イギリス靴は耐久性と実用性を追求しています。その中心にあるのが「グッドイヤーウェルト製法」です。
この製法は、アッパー(甲革)とソール(底革)を直接縫い合わせるのではなく、「ウェルト」と呼ばれる細い革の帯を介して縫い上げるのが特徴です。そのため、靴底が摩耗しても何度も張り替えることができ、手入れ次第では10年、20年と履き続けることが可能になります。
最高峰からコスパ優秀モデルまで!おすすめブランド10選
イギリス靴の世界は奥深く、ブランドによってその個性は千差万別です。ここからは、絶対に外せない名門から、実用性に優れたブランドまで、10個を厳選してご紹介します。
John Lobb (ジョンロブ)
「革靴の王様」と称されるのが、この John Lobb です。現在はエルメスグループの傘下にあり、世界中から最高級のレザーを優先的に確保できる立場にあります。革のキメの細かさ、しなやかさは他の追随を許しません。代表モデルの「シティII」は、まさにストレートチップの完成形です。
Edward Green (エドワードグリーン)
「でき得る限りの上質を求める」という哲学を持つのが Edward Green です。ジョンロブが圧倒的な革の力を見せつけるのに対し、エドワードグリーンは繊細な職人技と、日本人の足にも合いやすいと言われる木型(ラスト)の完成度が魅力。特に「チェルシー」のサイドのスワンネックステッチは、芸術品のような美しさです。
Crockett & Jones (クロケット&ジョーンズ)
世界で最も多くの木型を保有していると言われるのが Crockett & Jones です。数多くの有名ブランドの靴を製造してきた実績があり、デザインのバリエーションが非常に豊富。映画『007』シリーズでジェームズ・ボンドが愛用していることでも有名で、現代のイギリス靴のスタンダードといえる存在です。
Church’s (チャーチ)
「英国靴の王道」といえば、真っ先に名前が挙がるのが Church's。かつては質実剛健そのものといったブランドでしたが、プラダグループに入ってからはファッション性も高まりました。雨に強い「ポリッシュドバインダーカーフ」を採用したモデルは、実用性を重視するビジネスパーソンから絶大な支持を得ています。
Tricker’s (トリッカーズ)
英国王室御用達(ロイヤルワラント)を授かっている Tricker's は、カントリーシューズの代名詞です。メダリオン(穴飾り)が施された重厚なデザインは、スーツスタイルだけでなくデニムや軍パンなどのカジュアルスタイルにも抜群に合います。非常にタフな作りで、一生モノとしてガシガシ履き込めるのが魅力です。
Joseph Cheaney (ジョセフ チーニー)
伝統を守りつつ、現代的なエッセンスを加えるのが得意なのが Joseph Cheaney です。ノーザンプトンの自社工場で全工程を行いながらも、比較的手に取りやすい価格帯を維持している、非常に良心的なブランド。武骨なミリタリーテイストのモデルから、ドレッシーなものまで幅広く揃っています。
Sanders (サンダース)
イギリス国防省(MOD)へ靴を供給していることで知られる Sanders。ミリタリー由来の頑丈さと、どこか無愛想でクールな雰囲気が特徴です。特に、樹脂コーティングされた革とラバーソールを組み合わせたモデルは、雨の日でも気兼ねなく履ける本格靴として人気を博しています。
Barkers (バーカー)
140年以上の歴史を誇る老舗です。職人の手仕事による伝統的な靴作りを続けており、特に異なる色の革を組み合わせたコンビシューズや、装飾性の高いデザインに定評があります。クラシックな中に遊び心を取り入れたい方にぴったりの選択肢です。
Grenson (グレンソン)
イギリス靴の伝統を大切にしつつ、非常にモダンでファッショナブルな試みを続けているのが Grenson。厚底のソールを採用したり、大胆なデザインを取り入れたりと、革靴の枠を超えたクリエイティビティを感じさせるブランドです。
Loake (ローク)
英国王室御用達を拝命しながらも、非常にコストパフォーマンスに優れた靴を提供しているのが Loake です。特にモッズ文化の中で愛されたタッセルローファーは今もなお根強い人気を誇ります。初めての本格的なイギリス靴としても、非常に入りやすいブランドと言えるでしょう。
後悔しない!イギリス靴を選ぶための3つのポイント
高価な買い物だからこそ、絶対に失敗したくないですよね。イギリス靴を選ぶ際に意識してほしいポイントを整理しました。
1. 「ラスト(木型)」との相性を見極める
靴の形を決定づけるのが「ラスト」です。同じブランドでも、ラストが変われば履き心地は劇的に変わります。自分の足が幅広なのか、甲高なのか、あるいは踵(かかと)が小さいのか。まずは店頭で複数のラストを試着し、どこにも痛みがないか、踵が浮かないかを確認することが重要です。
2. 用途に合わせた「ソール(靴底)」選び
伝統的な「レザーソール」は通気性が良く、歩いた時の音が心地よいのがメリットですが、雨の日には滑りやすく、水が浸み込む弱点があります。一方、Dainite Sole(ダイナイトソール)などのラバー底は、グリップ力があり天候を気にせず履けるのが強み。実用性を重視するならラバー底がおすすめです。
3. 「内羽根」か「外羽根」か
靴紐を通す部分の構造にも注目しましょう。鳩目部分がアッパーに潜り込んでいる「内羽根」は最もフォーマルで、冠婚葬祭や大事な商談に向いています。一方、鳩目部分が外に露出している「外羽根」は少しカジュアルな印象になり、着脱がしやすく、活動的なビジネスシーンに適しています。
ずっと大切にするためのメンテナンス術
イギリス靴を「一生モノ」にするために必要なのは、高価なケア用品よりも「習慣」です。
まず、帰宅したらすぐに Horsehair Brush(馬毛ブラシ)で全体のホコリを払いましょう。ホコリは革の油分を奪い、ひび割れの原因になります。次に、木製の Shoe Tree(シューツリー)を入れて形を整えます。これにより、履きシワが伸び、靴内部の湿気を吸い取ってくれます。
また、同じ靴を毎日履かないことも大切です。一回履いた靴は少なくとも2日間は休ませ、中の湿気を完全に飛ばしてください。月に一度、専用の Shoe Cream(靴クリーム)で栄養を補給してあげれば、革は生き生きとした輝きを保ち続けます。
まとめ:イギリス靴のおすすめブランド10選!一生モノの革靴の選び方と聖地の魅力を徹底解説
イギリスの革靴を履くということは、単に足を保護する道具を身に着けることではありません。それは、ノーザンプトンで育まれた伝統を纏い、自分だけの歴史を靴に刻んでいくプロセスそのものです。
最初は少し硬く感じるかもしれません。しかし、メンテナンスを繰り返しながら数年が経過したとき、その靴は世界で唯一、あなたの足型に完全にフィットした「最高の相棒」へと進化しているはずです。
Shoe Care Kit を揃えるところから始めても良いですし、まずは一足、お気に入りのブランドの門を叩いてみるのも良いでしょう。今回ご紹介した10ブランドの中に、あなたの人生を共に歩む一足が見つかることを願っています。イギリス靴の魅力をぜひその足で、その肌で感じてみてください。


