せっかく気に入って買った革靴。いざ外を歩いてみると、一歩踏み出すたびにかかとが「パカパカ」と浮いてしまう……。そんな経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
「サイズを間違えたかな?」「この靴は自分には合わなかったのかも」と諦めるのはまだ早いです。実は、革靴のかかとが浮く現象には明確な理由があり、適切な対策を施すだけで、驚くほどフィット感を高めることができます。
この記事では、革靴のかかとが浮く根本的な原因から、今日からすぐに実践できる裏技、そしてプロが推奨する優秀なグッズまでを徹底的に解説します。毎日履く相棒だからこそ、ストレスフリーな一足に仕上げていきましょう。
1. なぜ革靴のかかとが浮くのか?考えられる主な原因
まずは「敵を知る」ことから始めましょう。なぜあなたのかかとは浮いてしまうのか。その原因は単に「靴が大きい」だけではありません。
足の幅とボリュームのミスマッチ
靴のサイズ選びで「足長(つま先からかかとまでの長さ)」だけを気にしていませんか? 意外と見落としがちなのが「足囲(ウィズ)」です。
足の長さは合っていても、足の幅や甲の高さが靴の設計よりも細く低い場合、靴の中で足が前へと滑ってしまいます。すると、本来かかとが収まるべき場所に隙間ができ、歩くたびにパカパカと浮いてしまうのです。
日本人特有のかかとの骨格
海外ブランドの革靴に多いケースですが、欧米人に比べて日本人はかかとの骨が小さく、直線的な形をしている傾向があります。
一方で、インポートシューズのヒールカップ(かかとを包む部分)は、大きく丸みを帯びた設計になっていることが多いため、物理的にホールドしきれず、歩行時の上下運動についてこれない場合があります。
ソールの硬さが引き起こす抵抗
新品の革靴は、アウトソール(底材)が非常に硬い状態です。
歩くときは足の指の付け根が曲がりますが、靴の底が硬すぎると靴が足の動きに合わせてしなってくれません。結果として、足だけが曲がろうとし、靴のかかとが地面に残されたまま足だけが抜ける「テコの原理」のような現象が起こります。
履き口の広がりと経年変化
革は履き込むほどに柔らかくなり、持ち主の足に馴染んでいきます。しかし、それは同時に「ゆとりが出る」ということでもあります。
履き口が横に広がったり、中底のクッションが沈み込んだりすることで、購入当初よりも靴の容積が増え、かかとが浮きやすくなることも珍しくありません。
2. インソールやパッドで隙間を埋める物理的対策
「この靴をなんとかして履きたい」という時に最も即効性があるのが、市販の調整グッズを活用することです。ただし、闇雲に敷けばいいというわけではありません。
「タンパッド」で上から押さえつける
意外かもしれませんが、かかとが浮くときの特効薬は「甲」にあります。
ベロ(タン)の裏側に貼り付けるレザータンパッドを使用すると、足の甲を上から適度に圧迫し、足が前方にズレるのを防いでくれます。
かかと部分に何かを貼るよりも違和感が少なく、見た目にも影響しないため、多くの靴職人が推奨するテクニックです。
「ハーフインソール」で前滑りをストップ
靴全体に敷くタイプではなく、つま先部分だけに敷くハーフサイズのインソールも有効です。
つま先用インソールを敷くことで、指の付け根付近の隙間が埋まり、足が前へ滑り込むのを物理的にブロックします。かかとの深さを変えずに調整できるため、「かかとが浅くなって余計に脱げそう」という不安も解消されます。
「ヒールグリップ」で摩擦力を高める
かかとの内側に直接貼り付けるクッション材です。
ヒールグリップには、スエード調のものやシリコン製のものがあります。隙間を埋めるだけでなく、素材自体の摩擦力でかかとをキャッチしてくれるため、ローファーなどの紐がない靴には非常に効果的です。
3. 紐の結び方ひとつでフィット感は激変する
道具を買わなくても、今すぐ試せる方法があります。それは「紐の通し方」を見直すことです。
ヒールロック(ダブルアイレット)の活用
ランニングシューズなどでも使われる手法ですが、革靴でも応用可能です。
一番上の靴紐の穴(アイレット)を二重に使うようにして輪っかを作り、そこに紐を通すことで、足首周りのホールド力を劇的に高めることができます。これだけで、靴とかかとが一体化したような感覚が得られます。
アンダーラップとオーバーラップの使い分け
一般的に、上から紐を通す「オーバーラップ」は締まりが良く、下から通す「アンダーラップ」は圧迫感が少ないとされています。
かかとが浮く場合は、足首に近い部分だけを「オーバーラップ」で強めに締めることで、履き心地の良さを維持しつつ、かかとの浮きを抑制することが可能です。
4. 革靴を「育てる」過程で起きる問題と解決策
革靴は「育てるもの」と言われますが、馴染んでくる過程でフィット感が変わるのも事実です。
返り(ソールのしなり)を良くする
先ほど、ソールの硬さが原因でかかとが浮くと説明しました。これを解消するには、手で靴をグイグイと曲げて「返り」をつけてあげるのが近道です。
もちろん、無理な力を入れすぎて革を傷めてはいけませんが、歩行時に曲がる部分をあらかじめほぐしておくことで、靴が足の動きについてきやすくなります。
デリケートクリームでの保湿
乾燥した革は硬くなり、柔軟性を失います。デリケートクリームを塗り込んで革を柔らかく保つことも、間接的なかかと浮き対策になります。特に履き口周りや、歩行時にシワが入る部分を重点的にケアしましょう。
5. 次回から失敗しないための「攻めのフィッティング」術
今ある靴を直すことも大切ですが、次に靴を買う時に「かかとが浮かない一足」を選ぶポイントを知っておくことも重要です。
夕方の試着を徹底する
足は時間帯によって大きさが変わります。むくみが出やすい夕方に試着し、その状態でジャストサイズ、あるいは少しタイトなものを選ぶのが革靴選びの鉄則です。
捨て寸とウィズのバランスを見る
つま先に1cm〜1.5cm程度の「捨て寸」があるか確認しましょう。これが足りないと指を痛めます。
逆に、捨て寸があるのにかかとが抜けるのは、ウィズ(幅)が広すぎることが原因です。自分の足を測り、足サイズ計測器などで正確な数値を把握しておくのが理想的です。
6. まとめ:革靴のかかとが浮くストレスから解放されるために
革靴は、スニーカーのようにクッションやゴムで無理やり足を固定するものではありません。革の性質を理解し、適切な補助パーツや紐の結び方を駆使して、自分の足に「寄せていく」作業が必要です。
もし、お気に入りの靴がパカパカして歩きにくいなら、まずはタンパッドやハーフインソールを試してみてください。ほんの数ミリの調整で、これまでの悩みが嘘のように消え、背筋が伸びるような快い歩行が手に入るはずです。
正しい知識を持って対策を行えば、革靴のかかとが浮くという悩みは必ず解決できます。一歩一歩を確実に、そしてスマートに踏み出せる最高のフィッティングを目指しましょう。


