お気に入りの革靴を手に入れたとき、つい毎日でも履きたくなってしまいますよね。「足元が決まると仕事のやる気も出るし、何よりこの一足が一番歩きやすいんだ」という気持ち、よくわかります。
しかし、結論からお伝えすると、革靴を毎日履き続けるのはあまりおすすめできません。なぜなら、その習慣があなたの相棒である靴の寿命を、驚くほど縮めてしまっている可能性があるからです。
今回は、革靴を長く、そして美しく愛用するために知っておきたい「履く頻度」の正解と、避けては通れない「雨の日」のレスキュー方法について詳しく解説していきます。
なぜ革靴を毎日履いてはいけないのか
「毎日履いたほうが足に馴染むのでは?」と思うかもしれませんが、実は革にとって毎日の着用は過酷な労働環境そのものです。その最大の理由は、私たちが無意識にかいている「汗」にあります。
人間は1日歩くと、足の裏からコップ1杯分(約200ml)もの汗をかくと言われています。革は天然素材であり、非常に吸湿性に優れています。そのため、かいた汗の多くは靴の内側に吸収されていきます。
問題は、この水分が乾くまでの時間です。一度たっぷり湿気を吸った革が芯までしっかり乾くには、最低でも24時間、できれば48時間ほどかかるとされています。
もし毎日同じ靴を履き続けてしまうと、中が乾ききる前に再び大量の汗が供給されることになります。常に湿った状態の革は、繊維が緩んで型崩れしやすくなり、雑菌が繁殖して強烈なニオイの原因にもなります。いわば、生乾きの洗濯物をずっと着続けているような状態なのです。
これを避けるだけでも、靴の寿命は劇的に変わります。
理想的なローテーションは「1日履いたら2日休ませる」
革靴の寿命を最大限に延ばすための黄金律は、3足の靴でローテーションを回すことです。
- 1日目:Aの靴を履く
- 2日目:Bの靴を履く(Aは休息)
- 3日目:Cの靴を履く(AとBは休息)
- 4日目:再びAの靴を履く
このサイクルであれば、それぞれの靴に2日間の休息、つまり「完全乾燥」の時間が与えられます。
「3足も揃えるのはお金がかかる」と感じるかもしれません。しかし、1足を毎日履き潰して1年でダメにするよりも、3足を用意して適切に休ませながら履くほうが、結果として5年、10年と長持ちします。トータルのコストパフォーマンスを考えれば、複数足でのローテーションは非常に賢い投資と言えるのです。
まずは、どんなスーツにも合う黒のストレートチップを1足、少しカジュアルなブラウン系のプレーントゥを1足。そこに、雨の日でも気兼ねなく履けるガラスレザー 革靴やラバーソールのタイプを1足加えるのが理想的なスタートラインです。
脱いだ後の「3分」が靴の寿命を決定づける
ローテーションと同じくらい大切なのが、家に帰って靴を脱いだ後のケアです。疲れているときはつい玄関に脱ぎっぱなしにしてしまいがちですが、ここで一手間かけるだけで、靴の表情は見違えるほど良くなります。
まず最初に行いたいのが、馬毛ブラシを使ったブラッシングです。
外を歩いた靴には、目に見えないホコリや砂がたくさん付着しています。これらを放置すると、革に必要な油分がホコリに吸い取られ、乾燥やひび割れの原因になってしまいます。ササッと表面を払うだけでいいので、まずはブラッシングを習慣にしましょう。
そして、ブラッシングの次には必ずシューキーパーを入れてください。
靴は歩行時の動きによって、甲の部分に深いシワが入ります。脱いだ直後の温かく湿った状態のときにキーパーを入れることで、そのシワをピンと伸ばし、反り返りを防いで型崩れを修正してくれます。素材は吸湿効果のある木製(レッドシダーなど)が特におすすめです。
これだけで、靴の「しゃきっとした佇まい」が翌朝以降もキープされます。
雨の日のダメージを最小限に抑える事前対策
革靴にとって、雨は最大の天敵です。水分は革を硬くし、シミやカビを誘発します。しかし、ビジネスの場では雨の日でも革靴を履かなければならない場面もありますよね。
そんなときに備えて、事前のバリアを張っておきましょう。最も手軽で効果的なのが、防水スプレーの使用です。
防水スプレーは単に水を弾くだけでなく、油汚れや泥汚れが革に浸透するのを防いでくれる役割もあります。新品のときにスプレーするのはもちろん、定期的なお手入れの仕上げにシュッとひと吹きしておくだけで、急な雨に降られても「致命傷」を避けることができます。
また、雨が降ることがあらかじめ分かっている日は、本革の底(レザーソール)ではなく、ゴム製の底(ラバーソール)の靴を選びましょう。レザーソールは水分を吸い上げやすく、滑りやすいため、雨の日には不向きです。最近では、見た目は本格的な革靴でありながら、底だけが滑りにくいラバー仕様になっているものも多く販売されています。
もし濡れてしまったら?焦らずに行うレスキュー法
どれだけ気をつけていても、ゲリラ豪雨などで靴がびしょ濡れになってしまうことがあります。そんなとき、絶対にやってはいけないのが「ドライヤーで乾かす」ことや「直射日光に当てる」ことです。
急激に熱を加えると、革に含まれる大切な油分が抜けてしまい、カチカチに硬くなってひび割れてしまいます。濡れた靴を救うには、優しさと忍耐が必要です。
- 水分を徹底的に拭き取るまずは乾いたタオルで、表面の水分を優しく叩くようにして吸い取ります。
- 内側の水分を新聞紙で抜く新聞紙を丸めて靴の中に詰めます。新聞紙は吸水性が抜群ですが、湿ったまま放置すると逆効果なので、最初の数時間は30分〜1時間おきに新しいものに取り替えてください。
- 風通しの良い日陰で乾かす靴の底を浮かせるようにして(壁に立てかけるなど)、空気が通る場所で陰干しします。完全に乾くまで丸1日から2日はかかります。
- 乾いた後の栄養補給水分が抜けた後の革は、非常に乾燥した状態です。完全に乾いたら、靴クリーナーで汚れを落とした後、靴クリームを塗ってたっぷりと栄養と油分を補給してあげてください。
この手順を守れば、ひどく濡れてしまった靴でも、再び美しい状態で履けるようになります。
靴を磨く時間は自分と向き合う時間
定期的な靴磨きは、単なるメンテナンス以上の価値があります。
自分の体重を支え、毎日あちこちへ連れて行ってくれる靴の状態をチェックすることは、自分自身のコンディションを知ることにも繋がります。
「最近かかとの外側が減りやすいな、歩き方が偏っているかも」
「この傷はあの時のプレゼンの前にぶつけたものだな」
そんな風に靴と対話しながら、ポリッシュグローブで仕上げのツヤを出していく時間は、忙しい日々の中での静かなマインドフルネスとも言えるでしょう。
きれいに磨き上げられ、手入れの行き届いた靴を履いていると、不思議と背筋が伸び、自信が湧いてくるものです。周囲からの信頼感も高まり、良い運気も運んできてくれそうな気がしませんか?
革靴を毎日履くのはNG?寿命を延ばす理想の頻度と雨の日の正しいお手入れ術
ここまで、革靴を長持ちさせるための秘訣についてお伝えしてきました。
「毎日同じ靴を履かない」「1日履いたら2日休ませる」「脱いだらブラッシングとシューキーパー」。これらは一見すると手間に感じるかもしれませんが、一度習慣にしてしまえばそれほど難しいことではありません。
たとえ高価な高級靴でなくても、丁寧に手入れされ、適切な頻度で休ませている靴には、独特の「品格」が宿ります。逆に、どんなに有名なブランド靴であっても、カカトがすり減り、履きジワが深く刻まれて乾燥した状態では、せっかくの魅力が半減してしまいます。
あなたのビジネスパートナーである革靴。大切に扱えば扱うほど、それは味わい深い表情へと変化し、あなたの足元を長く支え続けてくれるはずです。
明日から、靴箱に眠っているもう一足の靴を手に取ってみてください。そこから、あなたの愛用の一足とのより良い関係が始まっていくことでしょう。


