アシックスという名前を聞くと、スポーツシューズやランニングを思い浮かべる方が多いでしょう。でも、アシックスという会社そのものについては、意外と知られていないかもしれません。この記事では、アシックスの会社概要から、創業の歴史、企業理念、そしてグローバルに広がる現在の展開までをじっくり掘り下げて紹介します。
アシックスとはどんな会社？
アシックス株式会社は、兵庫県神戸市に本社を置く日本の総合スポーツ用品メーカーです。社名の「ASICS」は、ラテン語の格言「Anima Sana in Corpore Sano（健全な身体に健全な精神があれかし）」の頭文字を取ったもの。この理念がそのまま企業の精神として受け継がれています。
創業は1949年。戦後間もない時期に、創業者・鬼塚喜八郎氏が「スポーツを通じて青少年を健全に育てたい」という思いから立ち上げたのが始まりです。当初は「鬼塚商会」として、神戸の小さな工場で靴づくりを始めました。
現在では、ランニングシューズを中心に、テニス、バスケットボール、バレーボールなど多種多様なスポーツ用品を手がけ、世界中にファンを持つブランドへと成長しています。
鬼塚喜八郎が生んだ理念と社名の由来
アシックスの原点は、創業者・鬼塚喜八郎氏の人間教育への熱意にあります。終戦直後、希望を失いがちだった若者たちに「スポーツを通して未来への希望を持ってほしい」という想いで、彼は靴づくりを始めました。
社名の由来である「Anima Sana in Corpore Sano（アニマ・サナ・イン・コルポレ・サノ）」は、単なる言葉の引用ではなく、アシックスの経営哲学そのもの。身体の健康だけでなく、心の健やかさを支える――それがアシックスの使命とされています。
この精神は今も「ASICSスピリット」として、製品開発や企業活動の根底に流れ続けています。
アシックスの歴史：神戸の小さな工場から世界的ブランドへ
アシックスの歴史を振り返ると、まさに挑戦と革新の連続でした。
創業初期：バスケットボールシューズの誕生
創業翌年、鬼塚氏は初のバスケットボールシューズを開発します。その着想源は、なんと「タコの吸盤」。滑りにくい靴底をつくるため、タコの足の吸着構造をヒントにしたといわれています。この独創的な発想が、アシックスの“技術で勝負するメーカー”としての原点になりました。
成長期：オニツカタイガーの確立
1950〜60年代には、陸上競技用やマラソン用のシューズを次々に発表。「Onitsuka Tiger」として知られるブランドは国内外で高く評価され、オリンピック選手にも採用されました。ここで培われたノウハウが、のちのアシックス製品の技術基盤となります。
合併と社名変更：アシックス誕生
1977年、オニツカ株式会社がジィティオ株式会社、ジェレンク株式会社と合併。ここで現在の「株式会社アシックス」が誕生します。この合併により、シューズだけでなくスポーツウェアやアクセサリーも扱う総合メーカーとしての道が開かれました。
企業理念と「ASICSスピリット」
アシックスの企業理念は、「健全な身体に健全な精神を」という普遍的な思想です。単にシューズを作るのではなく、スポーツを通して人々の心と体を豊かにすることを目指しています。
アシックスが掲げる「ASICSスピリット」には、以下の価値観が含まれています。
- 誠実さと挑戦：ものづくりに対して正直であり、常に改善と革新を続ける姿勢。
- 多様性と調和：世界中の人々がスポーツを楽しめるよう、多様な文化や価値観を尊重する。
- 持続可能な社会への貢献：環境に配慮した製品づくりや事業活動を推進する。
この理念は、単なるスローガンではなく、従業員一人ひとりの行動指針として浸透しています。
アシックスのグローバル展開
アシックスは現在、世界中でビジネスを展開するグローバル企業へと発展しました。
本社は神戸にありますが、海外拠点はアメリカ、ヨーロッパ、アジアなどに広く分布。販売拠点や生産拠点も国際的に配置されており、製造・流通・販売の一体体制を築いています。
特にランニングシューズ分野では、アシックスは世界トップクラスのブランドとして知られています。「GEL（ゲル）」と呼ばれる衝撃吸収素材を用いたクッション構造は、アスリートのみならず一般ランナーにも高い支持を得ています。
さらに、ライフスタイル分野では「Onitsuka Tiger」ブランドを再構築。クラシックなデザインを現代風にリメイクし、ファッションスニーカーとして人気を集めています。
スポーツパフォーマンスとライフスタイルの両立――これこそが、今のアシックスを象徴するキーワードです。
技術革新と品質へのこだわり
アシックスがここまで信頼を得てきた理由のひとつは、「徹底した技術志向」にあります。
創業当初から、アシックスは常に科学的根拠に基づくシューズ設計を行ってきました。スポーツ工学研究所を設立し、ランナーの動作解析や足の形状データをもとに、理想的なフィット感とパフォーマンスを追求しています。
例えば「GELテクノロジー」や「FLYTEFOAM」などの独自素材は、軽量性と衝撃吸収性を両立。これらの研究成果が、トップアスリートから日常のランナーまで幅広い層に支持される理由です。
品質管理も徹底しており、製品ごとに厳しいテストを実施。耐久性・フィット感・通気性など、あらゆる側面で高い基準をクリアしています。
サステナビリティへの取り組み
アシックスは環境と社会への配慮も企業活動の中心に据えています。
再生素材を使用したシューズや、製造工程におけるCO₂削減の取り組みを積極的に推進。2025年までに主要製品の90%以上をサステナブル素材へ移行する目標を掲げています。
さらに、スポーツを通じた社会貢献活動にも力を入れています。地域の子どもたちへの運動支援プログラムや、災害復興支援など、単なる企業活動を超えた社会的使命を果たす姿勢が評価されています。
アシックスの強みと他社との違い
アシックスの強みは、理念・技術・信頼の三拍子が揃っている点にあります。
- 理念の一貫性
創業から一度もぶれることのない「健全な身体に健全な精神」という考え方が、製品開発や企業姿勢の根幹にある。 - 科学的なシューズ設計
スポーツ工学とデータ分析に基づいた設計で、機能性と快適性を両立。日本らしい精密さが世界でも高く評価されている。 - グローバルなブランド力
「ASICS」「Onitsuka Tiger」という2つのブランドで、スポーツとファッションの両市場をカバーしている。 - 品質と信頼性
高い耐久性と履き心地、安定した製造品質によって、長く愛用される製品が多い。
これらの要素が重なり、アシックスは“日本が誇るスポーツブランド”として世界中で確固たる地位を築いています。
アシックスの未来展望
アシックスは今後、スポーツメーカーの枠を超え、「ウェルビーイング企業」として進化を目指しています。単なる競技用品の提供にとどまらず、人々の健康や幸福を支えるパートナーとしての立場を明確にしています。
デジタル技術を活用したヘルスケアアプリや、AIを用いたフィッティング分析など、新たな分野への展開も加速。これまでの「履く製品」中心のビジネスから、「体験・データ・サービス」までを含む総合的なブランドへと進化しようとしています。
創業者の理念を受け継ぎながら、時代に合わせて形を変える。その柔軟さこそが、アシックスが長年愛され続けてきた理由といえるでしょう。
アシックスの会社概要と特徴を振り返って
アシックスは、1949年の創業以来、「健全な身体に健全な精神を」という理念を軸に、スポーツを通して社会と人を豊かにしてきました。神戸発の小さな靴メーカーが、いまや世界を代表するスポーツブランドへと成長した背景には、技術革新への飽くなき情熱と、人の心に寄り添う哲学があります。
アスリートから日常生活を送る人まで、すべての人がスポーツを通して笑顔になれる――それがアシックスという会社の本質です。
今後もアシックスは、スポーツの枠を超えた「健康と幸福のパートナー」として、世界中で走り続けていくでしょう。
