ランニングシューズ好きの間で今話題になっているのが、アシックスの「プロトタイプ」モデル。特に「MX Type-A」と「MX Type-B」という未発売の2モデルが、世界陸連(World Athletics)の承認リストに登録されたというニュースは、多くのランナーやファンの関心を集めています。この記事では、アシックスが開発中とされるこれらのプロトタイプについて、現時点でわかっている特徴や開発コンセプト、そして市場に与える可能性を丁寧に解説していきます。
MX Type-A/MX Type-Bとは?アシックスの次世代レーシングモデル
2025年9月、アシックスの2つの未発売モデル「MX Type-A」と「MX Type-B」が世界陸連(WA)の公式承認リストに登録されました。これは、市販前のシューズでありながら公式レースでの使用が許可されたということ。つまり「プロトタイプ=開発試作機」でありながら、競技の現場で実際に使える段階にまで到達しているということです。
このニュースが特に注目を集めた理由は、両モデルの設計思想にあります。
MX Type-Aは「オープンソール構造」を採用しており、ミッドソール内部の層や素材の構造が外から見えるようになっています。一方のMX Type-Bは「クローズドソール構造」で、安定性や耐久性を意識した設計になっているとされています。どちらも非常に厚いミッドソール(高スタックハイト)を持ち、いわゆる“厚底レーシングシューズ”の進化形として注目されています。
プロトタイプという存在の意味
「プロトタイプ」とは、製品化の前段階で作られる試験モデルのこと。メーカーが新しい技術を実験し、競技者によるテストを経て完成形に近づけていくための重要なステップです。
アシックスの場合、このプロトタイプを世界陸連に承認登録したことで、開発段階の技術をいち早く実戦投入できるようになっています。
これは単に「試作品を作った」というレベルではありません。競技用に承認されたということは、既に一定の性能と安全性を兼ね備えている証拠。つまりアシックスは、新しいロードレーシング技術を実際のレースシーンで試しながら、市販化を見据えた実地検証を進めている段階にあると考えられます。
MX Type-Aの特徴:挑戦的なオープンソール構造
MX Type-Aで最も印象的なのは、アシックスらしからぬ大胆なデザイン。
ミッドソール内部が露出しており、まるで「内部構造を見せることで技術力を誇示している」ような印象すら受けます。これまでのアシックスが得意としてきた安定性・耐久性重視の設計から一歩踏み出し、軽量化と反発力の両立を狙った“攻めの構造”だと考えられます。
また、オープンソール構造によって通気性や軽さを高めつつ、内部のフォーム材やカーボンプレートを効率的に配置している可能性があります。
この構造がどのようなクッション性やエネルギーリターンを生むのかは、今後の実走テストで明らかになっていくでしょう。
MX Type-Bの特徴:クローズドソールによる安定性重視設計
MX Type-Bは対照的に、ミッドソール全体を覆う「クローズドソール構造」を採用しています。こちらは安定性と耐久性を重視した設計で、長距離レースやトレーニングにおける一貫した走行感を目指しているとみられます。
厚底ながらも剛性を確保し、推進力と安定性を両立させる方向性。
Type-Aが“爆発的な反発とスピード特化”であるなら、Type-Bは“長距離・安定型の万能モデル”という立ち位置になるかもしれません。
アシックスの従来モデルでいえば、メタスピードシリーズの「メタスピードスカイ」や「Sky」といった関係性を思わせます。
つまり、走り方(ピッチ型・ストライド型)やレース距離によって使い分けができる構成を、MXシリーズでも踏襲する可能性があります。
WA承認=市販間近?今後の展開予想
世界陸連の承認を得たということは、少なくともプロ選手の実戦投入が可能になったということ。これにより、今後のマラソン大会や駅伝で、トップランナーがこのプロトタイプを履く姿が見られるかもしれません。
ただし、市販化に関してはまだ発表がありません。
アシックスはこれまでも、プロトタイプを長期間テストしてから一般販売に移行する傾向があります。たとえば「メタスピードスカイ」も、開発段階ではWA承認プロトタイプとして存在し、後に製品化されました。
この流れを考えると、MX Type-A/MX Type-Bも2026年以降に市販モデルとして登場する可能性が高いでしょう。特にパリ五輪後の次期レースシーズンに合わせて正式発表される展開が予想されます。
他ブランドとの比較で見えるアシックスの方向性
2025年のランニングシューズ市場では、ミズノが「PROTOTYPE PURE」「PROTOTYPE ELITE」「PROTOTYPE PRO」といったシリーズを発表し、国内メーカー同士の開発競争が激化しています。
その中で、アシックスのMXシリーズは“見せる構造”“挑戦的デザイン”という点で異彩を放っています。
アシックスは長年「安定性」「フィット感」「長距離耐性」を重視してきましたが、このプロトタイプではむしろ「スピード」「反発」「軽量化」へと舵を切っています。
これまでナイキやアディダスがリードしてきた厚底レース市場に、日本ブランドとして再び挑む構図が浮かび上がります。
アシックスが目指す「未来のレーシングコンセプト」
MXシリーズの登場は、アシックスのシューズ開発思想が次のステージへ進んだことを象徴しています。
近年、アシックスは「カーボンプレート技術」と「FF BLAST TURBO」などの高反発フォーム材を中心に、軽量化と推進力の両立を図ってきました。
MX Type-A/MX Type-Bは、その延長線上にある「技術的進化の結晶」だといえます。
特にMX Type-Aの“構造を見せるデザイン”は、単なる見た目の演出ではなく、「構造全体で走りを支える」というアシックスの哲学を具現化したものとも言えるでしょう。
注意点:あくまで開発中のモデルであること
現時点では、MX Type-A/MX Type-Bは市販予定が未発表の“プロトタイプ”です。
そのため、記事を読む読者に対しては、現状では購入・予約などができない点を明確に伝える必要があります。
また、重量やクッション性、耐久性などの具体的なスペックも未公表のため、推測を断定的に書かないことが重要です。
これらの点を理解したうえで、「アシックスがどんな未来を描こうとしているのか」を読み解く視点で楽しむのが、今の段階での正しい向き合い方です。
まとめ:アシックスプロトタイプが描く次世代への布石
アシックスのプロトタイプ「MX Type-A」「MX Type-B」は、ブランドの未来を象徴する実験的な存在です。
厚底、カーボン、軽量化といった技術の最前線をさらに進化させ、「日本発の世界最速シューズ」を再び狙うアシックスの本気が感じられます。
今後、世界大会や国内レースでこのプロトタイプが実戦投入され、その走りが注目を集める日は近いかもしれません。
市販化や正式発表の続報に期待しつつ、私たちランナーとしてはその“進化の瞬間”を見逃さないようにしておきたいですね。
アシックスプロトタイプの最新情報は、今後もランニングシーンの最前線を賑わせる話題となるでしょう。
未発売モデルに込められた開発コンセプトと挑戦の精神を知ることで、アシックスというブランドがどこへ向かおうとしているのか、その未来像が少しずつ見えてきます。


