ニューバランスの数あるモデルの中でも「ニューバランス850」は、ひと味違う存在感を放っています。1990年代の空気をまといながらも、現代のスニーカーカルチャーにしっかりと馴染むその姿。今回は、「ニューバランス850」がなぜここまで人気なのか、そしてどうして“レトロデザインと快適性を両立した名作”と呼ばれるのかをじっくり紐解いていきます。
90年代に誕生した“異端児”ニューバランス850の登場背景
ニューバランス850が最初に登場したのは1996年。当時のニューバランスといえば、M1300やM996などのクラシックランニングシューズで知られ、落ち着いた大人のブランドという印象が強い時代でした。そんな中で、若年層やストリート層を意識して投入されたのがこの「ニューバランス850」です。
デザイナーはステファニー・ハワード。彼女は「ブランドの伝統を守りながらも、もっと自由なデザインを」という想いから、従来のニューバランスらしさをあえて崩す大胆なアプローチを取りました。その象徴が、“Nロゴを外した”デザインです。サイドのNマークを排除し、代わりにヒールやシュータンに小さく「NB」ロゴを配置。この決断が、当時のファンの間で大きな話題を呼びました。
“Nマークがない”デザインが生む新鮮な存在感
ニューバランスの象徴ともいえる“N”マークがない――これだけでニューバランス850は特別な存在に見えます。街で見かけても一瞬「これ本当にニューバランス?」と目を引くほど。スニーカー文化が成熟し始めた90年代当時、このシンプルかつ反骨的なデザインは、若者たちにとって新鮮な刺激でした。
アッパーにはスウェード、レザー、メッシュといった異素材を組み合わせ、立体感のあるパネル構成を採用。ボリュームのあるフォルムは、今でいう“ダッドスニーカー”の原型とも言えます。トレンドを先取りしたようなデザインが、現代のファッションシーンでも再評価される理由のひとつです。
見た目だけじゃない。ニューバランス850の快適性
“レトロかわいい”見た目に目を奪われがちですが、ニューバランス850が本当に評価されている理由はその「履き心地」にあります。ニューバランスが誇るテクノロジーをしっかり継承しているのです。
ミッドソールには衝撃吸収素材「ABZORB(アブゾーブ)」と高クッション素材「C-CAP(シーキャップ)」を搭載。歩くたびにソフトに沈み込みながらも、反発性を感じる絶妙なバランスです。さらに、足の横ブレを防ぐ「ROLLBAR(ロールバー)」構造も採用され、安定感が高く長時間の着用でも疲れにくい設計となっています。
このように、デザイン性だけでなく実用性にも優れた仕上がりこそ、ニューバランス850が“ニューバランスらしい名作”と呼ばれる所以です。
復刻とともに再評価。90年代の空気を今に伝える
2019年、ニューバランスはこのニューバランス850を復刻。オリジナルのシルエットを忠実に再現しつつ、現代的な素材感やカラーリングでアップデートされました。特に「Nマークをあえて外す」という当時の挑戦が、今の時代ではむしろ“新しい”と感じられ、多くのファッション好きの心を掴みました。
復刻版では、モノトーンからネオン系まで多彩なカラーが展開され、90年代のレトロ感と現代のストリートファッションが融合。これにより、ニューバランス850は“懐かしいのに新しい”という独特の立ち位置を確立しました。
ニューバランス850が“おしゃれスニーカー”として人気を集める理由
スニーカートレンドの変遷を見ても、ニューバランス850が再び注目されている理由がよく分かります。ここ数年、いわゆる“ダッドスニーカー”や“90sライク”なデザインがファッションの中心に戻ってきました。厚めのソール、丸みのあるシルエット、素材の切り替えといった要素は、まさに現代のトレンドにぴったりです。
さらに、ニューバランス850はユニセックスモデルとして設計されているため、男女問わずコーディネートに取り入れやすいのも魅力。カジュアルなデニムスタイルにはもちろん、ワイドパンツやスラックスと合わせてもバランスが良く、ストリートからモードまで幅広くマッチします。
実際の履き心地とサイズ感のポイント
実際に履いた人のレビューを見ると、「見た目のわりに軽い」「クッション性が高くて長時間歩いても疲れにくい」という声が多く見られます。アウトソールはグリップ力が高く、街歩きはもちろん、旅行や立ち仕事にも対応できる万能タイプです。
サイズ感は、一般的なニューバランスモデルとほぼ同じですが、若干タイトに感じるという意見もあるため、足幅が広い人はハーフサイズアップを検討してもよいでしょう。スウェード部分は使うほどに馴染むため、履き込む楽しさもあります。
ニューバランス850のおすすめカラーと選び方
ニューバランス850はカラーバリエーションが豊富で、どの色を選ぶかによって印象がガラリと変わります。
人気が高いのは以下のようなタイプです。
- オリジナルカラー(ホワイト×ブルー×ブラック)
- モノトーン(ブラック・グレー系)
- ネオン系・パステル系
どのカラーも、ニューバランス850特有の立体感あるデザインを引き立て、ファッションのアクセントになります。
他モデルとの違いとニューバランス850の立ち位置
ニューバランスのラインナップの中で見ると、ニューバランス850は非常にユニークな存在です。
M990やM996のように“クラシックランニング”の王道ではなく、ファッション性を強く打ち出した派生ラインに近い位置付け。
それでも、ABZORBやROLLBARといった機能が搭載されているため、見た目以上に本格派。
つまりニューバランス850は、クラシックでも現行のハイテクモデルでもない“ちょうど中間”のポジションにあり、それが多くのユーザーにとって“履きやすい・合わせやすい”絶妙な存在となっているのです。
まとめ:ニューバランス850が今も愛される理由
ニューバランス850は、誕生から約30年が経った今もなお、スニーカーファンから根強く支持されています。
理由はシンプル。
- Nマークを排した大胆なデザイン性
- ニューバランスらしい機能と快適性
- 90年代カルチャーを感じさせるレトロな佇まい
- 男女問わず履けるユニセックスなスタイル
トレンドに左右されず、時代を超えて愛されるスニーカー。
“ニューバランス850”は、クラシックな安心感とストリートの遊び心が融合した、まさに名作と呼ぶにふさわしい一足です。


