スポーツをする人なら、一度は耳にしたことのある「アシックス」。
ランニングシューズの定番ブランドとして知られていますが、その魅力は単に“走りやすい靴”にとどまりません。実は、創業当初から一貫した理念と、日本ならではの職人技、そして最先端のスポーツ科学に支えられた深いブランド哲学が存在します。
この記事では、アシックスブランドの成り立ちから、今の時代に支持され続ける理由、そして最新テクノロジーまでを分かりやすく紹介します。
「健全な身体に健全な精神を」──アシックスの原点にある理念
アシックスという社名の由来は、ラテン語の格言 Anima Sana In Corpore Sano(アニマ・サナ・イン・コルポレ・サノ)。
意味は「健全な身体に健全な精神が宿る」。
この一文が、ブランドの哲学そのものです。
創業者・鬼塚喜八郎氏がこの言葉に出会ったのは、戦後の日本がまだ貧しかった時代。彼は「スポーツを通じて青少年の健全な心と身体を育てたい」という想いから、1949年に神戸で小さな靴工場「鬼塚株式会社」を立ち上げました。
当時の日本では、本格的なスポーツシューズはほとんど輸入頼み。そんな中、「日本人の足に合う靴を作る」ことに挑んだのがアシックスの始まりです。
アシックスという社名が正式に使われるようになったのは1977年。オニツカ(Onitsuka)、GTO、JELENKの3社が合併して「アシックス株式会社」となりました。
このとき、創業時からの理念「スポーツを通じて人々を幸せにする」という想いが改めて企業の中心に据えられ、今も全ての製品や活動の根底に息づいています。
一貫した哲学と企業精神が支えるブランドの信頼
アシックスの企業理念は明確です。
「スポーツを通して、すべてのお客様に価値ある製品・サービスを提供し、健やかなライフスタイルを支援する。」
この理念を実現するために、同社は“スポーツマン精神”を企業文化として掲げています。
例えば、
- フェアプレーを重んじる
- ルールを守る
- 失敗しても挑戦し続ける
といった価値観が、社員一人ひとりの行動指針になっています。
つまり、アシックスのブランドは「靴を作る会社」というよりも、「スポーツを通して人の心を育てる会社」なのです。
さらに、企業ビジョンとして掲げているのが
“Create Quality Lifestyle through Intelligent Sport Technology”
(知的スポーツテクノロジーで質の高いライフスタイルを創造する)。
スポーツとテクノロジーの力で、人々の生活そのものをより良くする──この姿勢がブランドの一貫した魅力につながっています。
科学と職人技の融合──アシックスの開発力
アシックスが他ブランドと一線を画す理由のひとつが、「人間中心の科学的アプローチ」です。
1985年、アシックスは自社の研究拠点「スポーツ工学研究所(ASICS Institute of Sport Science:ISS)」を設立。
ここでは、アスリートの走り方・歩き方・姿勢・筋肉の動きなどを徹底的に分析し、最も自然で効率的な動きを導き出すための研究が行われています。
その成果として生まれたのが、今やブランドを象徴する GEL テクノロジー。
このクッション素材は、走行時の衝撃を吸収しながら安定性を保ち、長時間でも快適に走れる設計が特徴です。
1980年代から続くGELシリーズは、現在も進化を続けており、ランナーから絶大な信頼を得ています。
また、素材や構造の改良も惜しみません。
ソール形状の最適化、軽量化素材の採用、アッパー部分の通気性・フィット感の追求など、すべては「人の動きを中心に考える」という思想から生まれています。
こうした技術の裏には、熟練職人による精密な製造工程と、日本のものづくり文化が息づいているのです。
日本発ブランドの誇り──クラフトマンシップと品質へのこだわり
アシックスは大量生産型のブランドではなく、「品質で勝負するブランド」です。
国内には、熟練の靴職人が在籍する自社工場「山陰アシックス工業」があり、製品の最終工程では人の手による微調整が行われます。
履き心地の確認、素材の厚みの管理、縫製の精度など、一足一足に細やかな職人の技が込められているのです。
また、こうした「日本的な丁寧さ」は、海外でも高く評価されています。
グローバルブランドの中でもアシックスが“信頼できるメーカー”として認識されているのは、このクラフトマンシップに裏打ちされた品質があるからこそです。
ランニングからライフスタイルへ──ブランドの進化
近年のアシックスは、競技用のシューズだけでなく、ライフスタイルブランドとしても注目を集めています。
特に「オニツカタイガー」は、創業期のデザインを現代風に再構築したファッションラインとして、若者や海外セレブにも人気。
スポーツとストリート、機能性とデザイン性を融合させたこのブランドは、アシックスの新しい顔となりました。
さらに、スポーツウェアやトレーニングウェアの分野でも、アシックスは快適性とデザインの両立を追求しています。
動きやすく、機能的で、それでいて普段着としても自然に溶け込む──そんな「毎日使えるスポーツスタイル」が支持を集めています。
これにより、アシックスは「競技ブランド」から「ライフスタイルブランド」へと進化を遂げたのです。
世界が認めるアシックスのブランド価値
アシックスは現在、世界100カ国以上で販売されるグローバルブランドです。
特にランニング市場においては、米国や欧州でも高いシェアを誇り、マラソン大会の公式スポンサーとしても知られています。
こうした国際的な評価を支えているのは、単なる機能性やデザインではなく、「理念と信頼」です。
多くのランナーがアシックスを選ぶ理由は、「このブランドなら安心して走れる」という確信にあります。
つまり、アシックスは“信頼を履くブランド”として世界に認められているのです。
また、環境への配慮にも積極的です。
リサイクル素材を活用したシューズや、カーボンフットプリントの削減、持続可能な生産工程など、サステナブルな取り組みも進行中。
こうした姿勢もまた、現代のブランド価値を高める要素となっています。
今後の展望──理念を未来へつなぐブランドへ
アシックスの挑戦は、これからも止まりません。
新しい素材やデジタル技術の開発はもちろん、スマートシューズやデータ連携型のランニングアプリなど、デジタル領域への拡大も進んでいます。
それでも根底にあるのは、創業以来の理念「健全な身体に健全な精神を」。
どれだけ技術が進化しても、アシックスは「人間を中心に考えるブランド」であり続けます。
靴を履く人の気持ち、走る喜び、挑戦する勇気──そのすべてを支えるブランドとして、これからも世界中の人々の足元を支えていくでしょう。
アシックスブランドの魅力とは?──理念と技術が生み出す信頼
アシックスの魅力は、単に“機能が優れている”ということではありません。
そこには創業者の信念、科学的探求、そして職人の誇りが息づいています。
理念に支えられたものづくりは、時代を超えて多くの人に共感を呼び、今なお進化を続けています。
スポーツを愛する人も、日常に快適さを求める人も、アシックスを選ぶ理由は同じ──「信頼できる品質」と「人を想う哲学」がそこにあるからです。
そしてこれからも、アシックスは“健全な身体に健全な精神を”という言葉のもと、スポーツと人生の両方を豊かにするブランドであり続けるはずです。


