ランニングシューズの世界では、ミッドソール素材が走り心地を左右すると言われています。その中でも、アシックスが誇る「アシックス フライト フォーム(FlyteFoam)」は、長年にわたって多くのランナーから信頼を集めてきた技術です。軽量でありながら、優れたクッション性と反発力を兼ね備えたこの素材は、どのようにして快適な走行を実現しているのでしょうか。この記事では、アシックス フライト フォームの仕組みや進化、採用モデル、そして走りへの影響を徹底的に解説します。
フライト フォームとは?アシックスが生み出した軽量ミッドソール革命
「アシックス フライト フォーム(FlyteFoam)」は、アシックスが2016年に発表した独自開発のミッドソール素材です。従来のE.V.A.(エチレン酢酸ビニル共重合体)素材と比較して、約55%の軽量化を実現しつつ、クッション性と耐久性も大幅に向上しています。
この素材の最大の特徴は、ミッドソールの内部に繊維を混ぜ込んでいること。通常のスポンジ状フォームは軽くてもヘタリやすいという課題がありますが、アシックス フライト フォームは細かな繊維がその構造を支え、長時間の使用でも形状を保ちやすくしています。結果として、軽く、反発があり、かつ長く履いても劣化しにくいという三拍子がそろいました。
登場以来、アシックス フライト フォームはアシックスのランニングラインの中心的存在となり、初心者向けのモデルからトップアスリート向けまで幅広く採用されています。
軽さと反発力が生み出す走行の快適さ
アシックス フライト フォームの魅力を語るうえで欠かせないのが「軽さ」と「高反発性」です。この2つの要素が、ランナーの走行効率を大きく引き上げています。
まず軽量性。素材そのものが軽いため、シューズ全体の重量を抑えることができます。長距離を走るランナーにとって、わずか数十グラムの違いでも疲労度に差が出ます。足を前に運ぶたびに軽さを実感でき、自然とピッチが上がるような感覚を得られるのです。
次に反発性。アシックス フライト フォームは着地時にしっかりと衝撃を吸収しながら、そのエネルギーを前方への推進力として返します。柔らかすぎず、弾むような感覚が得られるのが特徴で、走り出した瞬間に「前に進む力」を感じるという声も多く聞かれます。これにより、脚への負担を減らしつつスピードも維持しやすくなります。
フライト フォームの進化 ― 用途に応じた派生素材たち
アシックス フライト フォームは登場以降、さまざまな用途に合わせて改良・派生を重ねてきました。代表的な進化系として、「FlyteFoam Lyte(フライトフォーム ライト)」と「FlyteFoam Propel(フライトフォーム プロペル)」があります。
- FlyteFoam Lyte
フライトフォームの軽量性をさらに高め、強度と耐久性を向上させた素材。長距離ランやトレーニング用モデルに多く採用され、安定感と柔らかさのバランスが絶妙です。 - FlyteFoam Propel
反発性を最大限に引き出すために開発されたバージョン。蹴り出し時のエネルギーリターンが強く、スピード走やレース向き。アシックスの中でも特に推進力を重視するシューズに採用されています。
このように、アシックス フライト フォームは単なるひとつの素材ではなく、「シリーズ」として進化してきた点に特徴があります。軽さ、反発、安定感といった異なる要素をバランスよく組み合わせ、ランナーの目的に合わせた最適な走行感を追求しているのです。
フライト フォーム採用モデルと特徴
アシックスの多くの人気シューズには、アシックス フライト フォームまたはその派生素材が使われています。代表的なモデルをいくつか紹介します。
- METARUN
アシックス フライト フォームを初めて搭載したモデル。アシックスの技術の粋を集めたハイエンドシューズで、軽さと安定性の両立を象徴する存在。 - DynaFlyte シリーズ
軽量性を重視したモデル。ジョギングからスピード練習まで幅広く対応し、「軽くて弾む」履き心地が魅力。 - Novablast シリーズ
近年の人気モデル。FlyteFoam Blastなどの進化素材を採用し、柔らかくも反発の強い履き心地が特徴。アシックス フライト フォームの設計思想を受け継ぎつつ、より“弾む走り”を実現しています。
これらのモデルはどれも、アシックス フライト フォームの「軽くて安定する」「反発で前に進む」という基本性能を活かしながら、それぞれの目的に特化したチューニングが施されています。
クッション性と安定性のバランスがもたらす安心感
アシックス フライト フォームは単に軽いだけではなく、「安定性」と「クッション性」を両立している点も評価されています。特に初心者ランナーや膝への負担を抑えたい人にとって、このバランスは非常に重要です。
着地時の衝撃を吸収しつつ、フォームが必要以上に沈み込まないため、足のブレを抑えてスムーズに次の一歩へ移行できます。これにより、長時間走っても体の軸がぶれにくく、ランニングフォームを維持しやすいのです。
また、フォームの復元力が高いため、長距離ランでも足裏の疲れがたまりにくく、翌日のダメージも軽減されます。結果として「走り続けやすい」「自然に前に進む」感覚を得やすくなるのが、アシックス フライト フォームの大きな利点です。
フライト フォームの限界と注意点
一方で、アシックス フライト フォームにも注意すべき点があります。柔らかすぎない構造のため、「ふかふかのクッション感」を好むランナーには少し硬く感じる場合があります。より沈み込みを求める人は、後継のFlyteFoam Blast系フォームなどを試してみるのも良いでしょう。
また、シューズの寿命という観点では、いくら耐久性が高いといっても永久ではありません。走行距離が増えるにつれ、弾力や反発力は徐々に低下します。一般的にランニングシューズは500〜800kmを目安に交換が推奨されており、アシックス フライト フォーム搭載モデルもこの範囲に含まれます。
素材そのものの品質は高いものの、使用環境(気温・湿度・走る路面)によって劣化速度は変化します。定期的にソールの状態をチェックし、へたりや凹みが見られたら交換のタイミングです。
フライト フォームがもたらす「走る喜び」
アシックスのアシックス フライト フォームが長年支持され続けている理由は、その走行感にあります。着地の衝撃が吸収され、足が自然に前へ進む感覚は、まるで体の一部がシューズに溶け込んだよう。軽快で、無理のない走りを楽しめることで、ランニングがより身近なものになります。
そして、このフォームをきっかけにランニングを始めた人が、次第にステップアップして上位モデルへ移行するケースも多く見られます。つまり、アシックス フライト フォームは「アシックスのランニング体験の入り口」であり、「走る楽しさを広げる素材」でもあるのです。
これからのアシックスとフライト フォームの関係
最近ではFlyteFoam BlastやFlyteFoam Turboといった新世代の素材が登場していますが、アシックス フライト フォームは依然としてアシックスの基盤技術として位置づけられています。
軽さ・安定性・反発力のバランスが取れた万能フォームとして、今後も多くのモデルで採用され続けるでしょう。
特に、ジョギングや長距離練習、普段使いにも適した汎用性は高く、初心者ランナーにとって安心して選べる素材です。最新技術が登場しても、アシックス フライト フォームが築いた「アシックスらしい履き心地」はブランドの原点として残り続けます。
アシックス フライト フォームの魅力を再確認しよう
改めて振り返ると、アシックス フライト フォームは軽量性、反発力、クッション性、耐久性といった複数の性能を高いレベルで両立させた優れた素材です。
「走りやすさ」と「疲れにくさ」を両立し、ランニングをより楽しく、長く続けられるサポートをしてくれる存在と言えるでしょう。
これからランニングシューズを選ぶ方は、ぜひアシックス フライト フォームを搭載したモデルを試してみてください。自分の足にフィットする感覚と、地面を蹴るたびに感じる軽やかな反発――その違いをきっと実感できるはずです。


