トレイルランニングを愛するランナーにとって、シューズ選びは走りの質を左右する最重要ポイントです。今回は、アシックスの最新トレイルレーシングモデル「アシックス フジ スピード 4」に注目します。軽量性と推進力、そして安定性を兼ね備えたこのモデルは、まさに“スピードとコントロールの両立”を体現した一足。この記事では、その特徴や履き心地、前モデルからの進化点、そしてどんなランナーに向いているのかを徹底的に掘り下げます。
軽さと推進力を融合した「アシックス フジ スピード 4」の基本性能
「アシックス フジ スピード 4」は、トレイルを速く、軽快に駆け抜けたいランナーのために設計されたレーシングモデルです。アシックスの公式では「スピードとコントロール性を両立」と明言されており、ロードシューズのような軽快さと、トレイル特有の安定性を両立させた構造が大きな魅力です。
ミッドソールには、二層構造の「FF BLAST PLUS」フォームを採用。上層が柔らかく衝撃を吸収し、下層がやや硬めで蹴り出しをサポートする構造になっています。これにより、長時間のトレイルでも疲れにくく、登り下りの切り替えもスムーズ。さらに、ミッドソール内部には軽量な「PEBAX プレート」が内蔵され、推進力と安定感の両立を実現しています。
片足の重さは約235g(26.5cm)と非常に軽量。トレイルシューズとしてはトップクラスの軽さで、スピード重視のランナーにとって大きな武器になります。
グリップ力と安定性を支えるASICSGRIPアウトソール
トレイルランでは、路面状況が刻一刻と変化します。岩、土、砂利、木の根など、不安定な路面に対応するためにはグリップ性能が欠かせません。「アシックス フジ スピード 4」では、アシックス独自のアウトソール素材「ASICSGRIP」を採用。濡れた地面や滑りやすい岩場でもしっかりと地面を捉える設計になっています。
ラグ(凹凸)の形状は、下りでの安定感を重視しながらも、登りでの蹴り出しを妨げないバランス型。これにより、トレイルレース中の多様な路面に対応可能です。林道やグラベルのような比較的走りやすい地形では、ロードに近いスピード感で走ることができる一方、ややぬかるんだ地面や湿った岩場でも必要なグリップを確保します。
履き心地とフィット感:軽快さと安定感の絶妙なバランス
「アシックス フジ スピード 4」はアッパーに通気性と軽量性を兼ね備えた合成繊維を採用。足全体を包み込むようなフィット感がありながら、締めつけ感は強すぎず、長時間走っても快適さを保ちます。シューレース(靴ひも)はしっかりと固定できるタイプで、トレイル特有のアップダウンや横方向の動きにも対応。
サイズ展開は22.5cmから30.0cmまでと幅広く、ラスト(足幅)は「STANDARD(2E相当)」。幅広足のランナーはワンサイズ上げることでフィット感を調整しやすいでしょう。
トレイルシューズは「重くて硬い」というイメージを持つ方も多いですが、このモデルはその逆。ロードシューズのような軽快さと、地面をしっかり掴む安定性のバランスが絶妙で、初めてトレイルを走る方にも扱いやすい一足です。
FUJISPEEDシリーズの進化:前作から何が変わったのか
前作の「フジ スピード 3」は、軽量で反発力に優れたモデルとして人気でしたが、「4」ではさらに進化を遂げています。
最大の変更点は、ミッドソールの構造です。従来の単層から二層構造へと進化し、より高い安定性とクッション性を両立。加えてPEBAX プレートを組み込むことで、蹴り出し時の反発力が向上しました。これにより、登りでは軽やかに、下りではブレにくく、安定してスピードを維持できます。
さらにアウトソールのラグ形状も最適化され、濡れた地面や砂利道でのグリップ性能が改善。ロード区間を含むトレイルレースにおいて、よりスムーズな走行が可能になりました。
実際の使用感:ランナーのレビューから見る評価
多くのランナーが「アシックス フジ スピード 4」の軽快さを高く評価しています。特に「ロードシューズのような感覚でトレイルを走れる」「登りでも足が軽く感じる」という声が多く、スピード系トレイルランナーから支持を集めています。
一方で、「クッション性がやや硬く感じる」「ぬかるんだ地面では滑りやすい」といった意見も見られます。これは、プレート入りでスピードを重視した構造のため、柔らかいクッションを求めるランナーには少し硬めに感じるからです。
レビュー全体としては、ショート~ミドルのトレイルレースや、ロードとトレイルが混在するコースで高く評価されています。逆に、岩が多いハードな山岳トレイルやウルトラ距離では、もう少しプロテクション性の高いモデルが向いているでしょう。
他モデルとの比較で見る「アシックス フジ スピード 4」の立ち位置
アシックスのトレイルシリーズは、大きく3タイプに分類されます。
- スピード重視型:アシックス フジ スピード 4
→ 軽量で反発性が高く、レース志向のランナー向け。 - バランス型:フジライト 6
→ クッションと安定性のバランスがよく、練習からレースまで幅広く対応。 - プロテクト型:ゲル トラブーコ 13 / トラブーコ マックス
→ 岩場や悪路、長距離向けの耐久・安定重視モデル。
この中で「アシックス フジ スピード 4」は、最も“速く走る”ことに特化した位置づけです。軽量で反発力があり、ロードシューズのような走り心地を求めるランナーに最適。特に、ロードからトレイルへステップアップしたい人には非常に扱いやすいモデルです。
トレイル初心者にもおすすめできる理由
「アシックス フジ スピード 4」は上級者向けの印象を持たれがちですが、実は初心者にもおすすめです。理由はそのバランス設計。軽さ・安定感・グリップ力が高水準でまとまっており、どの路面でも安心して走れる構造になっています。
初めてトレイルに挑戦するランナーにとって、“重くて不安定な靴”は大敵。しかし、このモデルはむしろ「ロードシューズからの延長線上」で履けるような軽快さがあり、違和感が少ないのが特徴です。
また、アシックスならではの足型設計により、日本人の足にもフィットしやすく、長時間のランニングでも疲れにくい点も安心材料。走りながら「もっとトレイルを楽しみたい」と思わせてくれる一足です。
注意点と選び方のコツ
購入時には、自分の走るトレイルの特性を考えることが大切です。
- 林道・グラベル・舗装路が多い:アシックス フジ スピード 4 が最適
- 岩場やぬかるみが多い:ゲル トラブーコ 13シリーズなど、プロテクション重視モデルを選択
- 長距離・ウルトラトレイル志向:フジライト 6 のようなクッション性の高いモデルがおすすめ
また、足幅が広めのランナーは、0.5cm~1cm上げたサイズを試すとフィットしやすくなります。試着時には、登り・下りを想定してつま先の余裕をチェックするのがポイントです。
価格とコストパフォーマンス
定価は税込18,700円。トレイルシューズとしては中価格帯ですが、搭載されているテクノロジーや軽量性を考えると、コストパフォーマンスは非常に高いといえます。PEBAX プレート入りの競技志向モデルとしては手に取りやすい価格で、練習からレースまで幅広く活用できるのが魅力です。
まとめ:アシックス フジ スピード 4は“速さを求めるトレイルランナー”のための一足
「アシックス フジ スピード 4」は、スピードとコントロールを両立するトレイルレーシングシューズとして完成度の高いモデルです。軽量で反発力がありながら、しっかりと地面を掴む安定感も兼ね備えています。
特に、ロードの走り心地に慣れたランナーがトレイルを始める場合や、ショート~ミドルのトレイルレースに挑戦する際には最適。軽快な走りを求める人にとって、頼れるパートナーになるでしょう。
スピードを武器に、トレイルをもっと自由に楽しみたい――そんなランナーにこそ、「アシックス フジ スピード 4」はぴったりの一足です。


