アシックスのスニーカーやウェアを集めていると、「このタグっていつ頃のものなんだろう?」と思う瞬間がありますよね。特にヴィンテージ好きの人や中古市場で探している人にとって、タグは“時代を読み解くヒント”になります。
ただし、アシックスの場合、タグの情報だけで年代を完全に断定するのは難しいのも事実です。この記事では、タグから読み取れる要素や、年代を推定するためのチェックポイントをわかりやすく整理して紹介します。
タグは「靴の履歴書」──まずは基本を押さえよう
アシックスのスニーカーやアパレルには、必ずといっていいほど「タグ」や「品番ラベル」が付いています。シューズならベロ裏、ウェアなら首元や裾に縫い付けられていることが多いです。
このタグには、モデル名ではなく「品番」が印字されています。数字とアルファベットを組み合わせた6〜8桁ほどのコードで、正式には「製品番号」または「スタイルコード」と呼ばれます。これが、そのアイテムを特定するための基本情報です。
ただし、注意したいのは、このコード自体に“製造年を直接示す数字”が含まれていないこと。つまり、品番だけを見ても「これは2012年製です」といった断定はできません。
それでも、過去のカタログやリリース情報と照らし合わせることで、「おおよその発売時期」を推測することは可能です。
タグの中にある「製造年月」の手がかりを探す
一部のアシックス製品には、タグの下部や裏面に「製造年月」が記載されている場合があります。
「YY/MM」または「YYYY/MM/DD」のような表記で、例えば「18/09」なら2018年9月製造を意味します。
この情報があれば、かなり精度の高い年代推定ができます。特にランニングシューズやトレーニングシューズのようにモデルチェンジが頻繁なカテゴリーでは、製造年月が記載されていれば発売期もほぼ一致します。
ただし、この表記はすべてのモデルにあるわけではなく、タグの仕様は時期や工場によって異なります。特に90年代以前のモデルや海外製品では、製造年月が書かれていないケースが多いので、「あればラッキー」くらいの感覚で探すのが現実的です。
「製造国」でざっくり年代を絞り込む方法
タグや靴箱、インソール裏などに記載されている「Made in Japan」「Made in Taiwan」「Made in Vietnam」などの表記も、年代を見分けるヒントになります。
アシックスは時期によって生産拠点を変えており、
- 1980年代〜90年代前半は日本製が多く、
- 90年代後半〜2000年代にかけて台湾やインドネシア製が増加、
- 2010年代以降はベトナムや中国製が中心、
といった傾向があります。
もちろん例外もあります。高級ラインや国内向け限定モデルでは、今でも日本製が採用されている場合もあるため、製造国だけで断定はできません。それでも「日本製=比較的古い世代」「ベトナム製=現行または近年製」といったざっくりした分類には役立ちます。
ロゴやタグデザインの変化を見逃さない
タグそのものの見た目にも、時代による変化があります。
たとえば1970〜80年代のアシックス(当時はオニツカタイガー)では、刺繍や織りタグが主流でした。タグ地の素材が厚く、ロゴ部分も立体的な糸で縫い込まれています。
90年代に入ると、より軽量化が進み、印刷タグや薄手の布タグに移行します。さらに2000年代後半になると、レーザー印字やシール型の熱転写プリントが増え、ベロ裏に直接印刷される形式も登場しました。
タグの素材が「布→ナイロン→プリント」と変化していること自体が、時代の流れを反映しています。タグの縫い付け方や角の処理(丸みがあるか直線か)も、世代ごとの特徴を見分ける際の小さなヒントになります。
品番から過去のカタログを辿る方法
タグの品番がわかれば、ネット上の過去カタログや中古市場のデータベースを使って該当モデルを探すことができます。
アシックス公式サイトのFAQでは、「製品番号がわかればカスタマーサポートで照会できる」とも案内されています。つまり、正規ルートで確認を取ることも可能です。
また、スニーカー愛好家の間では、過去の雑誌や広告、リリースリストをデータ化している人も多く、SNSや中古ショップの出品ページに品番が記載されていることもあります。
そうした情報を突き合わせることで、「この型番は2010年の初代モデル」「この番号は復刻版」というように、かなり正確に年代を特定できます。
タグ以外の要素も年代推定のカギになる
タグだけでなく、シューズの構造や素材からも年代を推測できます。特に注目したいのは以下のポイントです。
- インソールの仕様:Ortholite®やFF BLAST™など、登場時期が明確な素材は時代を示すヒントになります。
- ミッドソールの構造:GELやFlyteFoamなどのテクノロジーがどの世代で使われていたかを調べる。
- ロゴの位置と形状:アシックスストライプの太さや曲線も、世代によって微妙に異なります。
- アウトソールの刻印:ASICSの刻印フォント、溝の形状、パターンなども製造時期の目安になる。
こうしたディテールをタグ情報と組み合わせると、より確かな年代推定ができます。
ヴィンテージモデルを見分けるための実践的チェックリスト
ヴィンテージのアシックスを探すときは、以下のような手順で確認するのが効果的です。
- ベロ裏やインソールのタグを確認し、品番・製造国・製造年月の有無をチェックする。
- 品番がわかったら、ネット検索で同じ番号のモデルを探して発売時期を照合。
- タグの素材や印字の質感から、プリント・刺繍などの形式を確認。
- インソール、ミッドソール、ソール刻印などの仕様を見て世代を推測。
- 外箱や付属タグが残っていれば、それらに記載のロゴや表記も参考にする。
この5ステップを踏むだけで、ざっくり「何年代のモデルか」を推定できるようになります。とくに90年代以前のオニツカタイガー期は、タグの素材感やフォントだけでも印象がまったく違うので、細部を観察するほど発見があります。
注意点:タグだけで年代を断定しないこと
スニーカー愛好家の間でも、「タグだけでは判断できない」というのが共通の認識です。
なぜなら、アシックスの製品は復刻版やリイシューも多く、同じ品番でも時期によって生産国や素材が異なる場合があるからです。
また、人気モデルほど偽物が出回ることもあり、偽造品ではタグ表記が意図的に古風に作られていることもあります。こうしたリスクを避けるためにも、タグ以外の複数の要素(素材・構造・刻印・購入経路など)を総合して判断するのが安全です。
コレクターが実践する「タグ研究」のすすめ
もし本格的にアシックスの年代判別を深めたいなら、自分なりのタグ資料を作るのもおすすめです。
たとえば、所有しているスニーカーのタグを撮影し、
- 品番
- 製造国
- タグの形式(布/プリント)
- 製造年月の有無
- 発売年(カタログや公式情報で照合)
を一覧化しておく。これを積み重ねていくと、「このタグは2010年代前半に多い」「この書体は2018年以降のフォント」など、パターンが見えてきます。
個人の記録でも、やがて貴重な資料になりますし、同好の士との情報交換にも役立ちます。
アシックスのタグ年代研究は「観察」と「照合」がすべて
アシックスのタグは、確かにヴィンテージモデルを見分ける重要なヒントになります。しかしそれはあくまで全体の一部。
製造国、品番、素材、ソール構造、ロゴの変遷など、複数の情報を重ねていくことで、ようやく「年代の輪郭」が見えてきます。
タグを読むというのは、ブランドの歴史を紐解く作業でもあります。あなたの手元にある一足にも、タグの中にその時代の空気が刻まれているかもしれません。
観察と照合を楽しみながら、アシックスの奥深い世界を探ってみてください。
アシックス タグ 年代で見えてくる“時代の記憶”
最後にもう一度確認しておきましょう。
アシックスのタグには、その靴が生まれた背景を知るためのヒントが隠れています。品番、製造国、ロゴデザイン、素材、印字のスタイル──どれもが時代を映す鏡です。
タグを通して見えてくるのは、アシックスというブランドが歩んできた歴史そのもの。
あなたの一足が、どの時代の息吹を宿しているのか。タグを手がかりに、その物語を紐解いてみてください。


