「アシックスジャパンとアシックスって同じ会社じゃないの?」
そう思ったことがある人は多いはずです。靴やウェアのタグに「アシックスジャパン株式会社」と書かれている一方、ニュースや株価情報では「株式会社アシックス」という名前が登場する。この違いは一体どこにあるのでしょうか?
この記事では、アシックスブランドを支える二つの会社の関係性や役割の違いをわかりやすく整理しながら、消費者にとって何がどう関係しているのかを解説します。
まず押さえたい「アシックス」とはどんな会社か
アシックス(株式会社アシックス)は、1949年に神戸で創業したスポーツ用品メーカー。創業者は鬼塚喜八郎氏で、当初は「オニツカ商会」という名前でした。社名の「ASICS」はラテン語の「Anima Sana In Corpore Sano(健全な身体に健全な精神を)」から生まれたもので、心身の健康をスポーツを通して支えるという理念を今も大切にしています。
現在のアシックスは本社を神戸市に置き、世界中に支社や販売拠点を展開。ランニングシューズやトレーニングウェアなどの製品を企画・開発し、グローバルブランドとして展開しています。売上の大部分は海外市場が占めており、まさに「日本発・世界ブランド」という立ち位置です。
アシックスジャパンとは?国内販売を担う重要な子会社
一方で「アシックスジャパン株式会社」は、アシックスのグループ会社のひとつ。2012年に設立された比較的新しい法人です。主な業務は日本国内での販売・マーケティング・直営店運営。つまり、アシックスが企画・製造した製品を、国内で消費者に届ける役割を担っています。
アシックスストアやアシックスウォーキング、オニツカタイガー、アシックスファクトリーアウトレットなど、日本全国の直営店舗を運営しているのもアシックスジャパンです。
実際に私たちが店舗でシューズを試着したり、公式オンラインストアで購入したりするときに関わっているのはこの会社になります。
両社の役割を比べてみると?
アシックスとアシックスジャパンの関係は、「親会社と国内販売子会社」という明確な構造です。
- アシックス(本社):ブランド戦略の立案、商品企画、研究開発、生産、グローバル展開
- アシックスジャパン:日本市場に特化した販売戦略、直営店の運営、マーケティング、アフターサービス
このように、アシックスが“つくる側”、アシックスジャパンが“届ける側”という分担になっています。
そのため、シューズの素材開発やデザイン、テクノロジーに関する研究は神戸の本社チームが中心。一方、国内の消費者動向を分析したり、キャンペーンや店舗体験を企画したりするのは東京拠点のアシックスジャパンが担います。
消費者にとっての違いはある?
結論から言うと、日常生活の中ではほとんど意識しなくても大丈夫です。どちらの会社も「ASICS」というブランドのもとで一体的に動いているため、製品の品質や保証、サービス内容に差があるわけではありません。
ただし、企業構造を理解しておくと、こんな時に役立ちます。
- 返品・修理の問い合わせ先
製品タグや保証書には「アシックスジャパン株式会社」と記載されていることが多く、購入後のサポートはこの会社が担当します。 - 採用や就職活動での区別
「アシックスに就職したい」という場合、親会社か子会社かで業務内容や給与水準が異なることがあります。アシックス本社は企画・開発や経営系が中心、アシックスジャパンは販売・マーケティング・店舗運営が中心です。
このように、一般消費者にとっての違いは小さいものの、ビジネス面では明確に区分されています。
なぜ別会社に分かれているのか?
「同じブランドなのに、わざわざ会社を分ける必要あるの?」と感じるかもしれません。
実は、この構造には大きなメリットがあります。
- 国内市場に特化した迅速な対応ができる
日本の販売現場では、店舗運営やキャンペーン対応、在庫管理などのスピードが求められます。独立した販売会社にすることで、現場判断をスムーズにし、顧客対応の質を高めています。 - グローバル経営の効率化
アシックス本体は世界規模のブランド戦略に集中できる一方、アシックスジャパンが国内販売を一手に担うことで、役割分担が明確になり経営が効率化されます。 - 多角的な事業展開に対応しやすい
近年、アシックスグループは健康関連サービスやスポーツ施設運営などにも事業領域を広げています。子会社を設けることで、新規事業や分社化を柔軟に行えるようにしています。
結果として、ブランド全体のスピード感と柔軟性が高まり、消費者にもプラスに働いているのです。
会社規模・雇用・文化の違い
企業としてのスケールにも違いがあります。
アシックス(本社)は連結で約9,000人規模、売上高は6,000億円を超える大企業。一方のアシックスジャパンはその中の一部門として、数千人規模の社員を抱える中核子会社です。
給与水準や業務内容も異なり、口コミサイトなどでは平均年収がアシックス本体で約650万円、アシックスジャパンで約530万円前後とされています。もちろん役職や部署によって幅はありますが、開発職・管理部門が多い本社に比べ、販売や店舗運営を中心とするアシックスジャパンの方が実務寄りの職種が多い傾向です。
それでも両社とも「スポーツを通じて社会に貢献する」という理念を共有しており、社員の意識やブランドへの誇りは共通しています。
モデルや製品に違いはある?
「アシックスジャパンが扱う製品は、海外のアシックスと違うの?」という疑問もよく聞かれます。
基本的には、アシックスが企画・開発したグローバルモデルをアシックスジャパンが国内販売しています。ただし、日本限定カラーや国内先行モデルが存在するのは、アシックスジャパンが日本市場のニーズを反映して販売戦略を調整しているためです。
たとえば人気のランニングシューズ「GEL-NIMBUS」や「METASPEED」シリーズは海外と同じ設計ですが、日本人の足型に合わせたワイドモデルや国内限定カラーが展開されることがあります。
こうした「日本人向けアレンジ」は、アシックスジャパンが国内顧客の声をもとに改良を提案している好例です。
アシックスグループ全体の広がり
アシックスジャパンのほかにも、アシックスグループにはいくつかの関連会社があります。
- アシックス商事株式会社:ビジネスシューズやライフスタイルシューズを展開。代表的なブランドは「Pedala(ペダラ)」など。
- アシックススポーツファシリティーズ株式会社:スポーツ施設や健康増進施設の運営・管理を担当。
- オニツカ株式会社:ファッションラインの「オニツカタイガー」ブランドを展開。
このように、アシックスグループ全体で「スポーツ」「健康」「ライフスタイル」の各分野をカバーしています。その中でアシックスジャパンは“国内の顔”として、ブランド体験を消費者に直接届ける重要なポジションを担っています。
消費者が知っておくと便利なポイント
- 商品タグや保証書にある会社名は販売元の表記
タグに「アシックスジャパン株式会社」と書かれていても、製品の品質はアシックス本社と同一基準。安心して利用できます。 - オンラインストアや店舗キャンペーンはアシックスジャパンの企画
国内のセール、ポイントキャンペーン、イベントなどはアシックスジャパン主導。店舗スタッフもこの会社の社員または契約社員です。 - 修理・問い合わせ窓口もアシックスジャパンが担当
製品トラブルやサイズ交換などのサポートは、アシックスジャパンのカスタマーセンターが対応します。
こうした仕組みを理解しておくと、問い合わせや購入時に迷うことが減ります。
今後の展開とブランドの方向性
アシックスグループは、従来のスポーツ用品販売に加えて、「健康」や「ウェルビーイング」への取り組みを加速しています。スマートシューズやデジタル計測サービス、オンラインフィットネスなど、テクノロジーを活用したサービス拡充が進んでいます。
そのなかで、アシックスジャパンは国内での新サービス導入を支える重要な現場。顧客データや購買動向を分析し、ブランド体験をよりパーソナライズする動きが強まっています。
一方、アシックス本社はグローバルな技術開発と製品戦略を進化させ、世界的な競争力をさらに高めようとしています。
アシックスジャパンとアシックスの違いを比較!ブランドの関係性とモデル特徴を解説
アシックスとアシックスジャパンの関係をまとめるとこうなります。
- アシックス:ブランドの本体。神戸に本社を置き、商品企画・開発・グローバル戦略を担当。
- アシックスジャパン:日本国内における販売・マーケティング・店舗運営を担う中核子会社。
私たちが日々手にするシューズやウェアは、神戸の開発チームがつくり、アシックスジャパンが全国の店舗やオンラインを通じて届けているものです。
つまり、両社の違いを知ることは「ブランドがどう動いているか」を知ることでもあります。
これからもアシックスは、「健全な身体に健全な精神を」という理念のもと、日本発のスポーツブランドとして進化を続けていくでしょう。
アシックスジャパンとアシックスの違いを理解することで、あなたの一足にも少し違った価値が見えてくるはずです。


