最近、「アシックスがゴルフシューズ事業から撤退したらしい」という話を耳にした人もいるかもしれません。SNS上でも「もう買えなくなるの？」「松山英樹モデルはどうなるの？」といった声がちらほら見られます。
しかし実際のところ、アシックスはゴルフシューズをやめていません。むしろ、新作を積極的に展開している状況です。今回は、なぜ撤退の噂が出たのか、その背景と現在のゴルフ事業の実態、そして今後の展望までを丁寧に整理していきます。
なぜ「撤退」の噂が広がったのか
まず結論から言えば、「アシックスがゴルフシューズを撤退した」という公式発表は存在しません。それなのに撤退の話が出回ったのは、複数の出来事が重なったことが原因です。
アシックスはここ数年、いくつかのスポーツ分野で事業整理を行っています。たとえば、2025年9月末をもって野球用品事業からの撤退を発表しました。また、パークゴルフやグラウンドゴルフといったレクリエーション向け分野からも撤退を予定しています。
この「ゴルフ」という言葉だけが切り取られ、「アシックス＝ゴルフから撤退」と誤解されて広まったのが真相です。実際には、クラブやボールといった“ゴルフ用品”から撤退しただけで、“ゴルフシューズ”はこれまで通り販売を継続しています。
ゴルフシューズ事業の歴史と位置づけ
アシックスがゴルフ分野に関わり始めたのは1970年代。かつてはゴルフクラブなども展開していましたが、2001年にクラブ事業から撤退しています。以降は「靴メーカー」としての強みを活かし、シューズに特化した展開へと方向転換しました。
特に2013年、住友ゴム工業のダンロップスポーツと提携してからは、技術力を共有しながら本格的にゴルフシューズ分野を再構築。
ランニングシューズで培ったGELクッションやFlyteFoamなどの素材技術を取り入れ、「歩いても疲れにくく、スイング時に安定する」シューズ開発を進めてきました。
最近のモデルと継続的な商品展開
撤退どころか、アシックスはここ数年で新モデルを続々と発表しています。
たとえば2023年には「GEL-ACE PRO M BOA」、2024年には「GEL-KAYANO ACE 2」が登場しました。さらに2025年には、海外市場向けに「JAPAN S Golf Shoes」を新たに投入。米国でも販売が始まっています。
これらのモデルは、ランニングシューズで人気のGEL-KAYANOシリーズをベースに、ゴルフに最適化したもの。歩行時の安定性、スイング時のグリップ力、そしてスパイクレスの快適性を兼ね備えています。
また、BOAダイヤルシステム搭載モデルも増え、フィット感を細かく調整できる点も評価されています。
つまり、アシックスのゴルフシューズ事業は縮小どころか、確実に「アップデート」され続けているのです。
ゴルフ市場の変化とアシックスの立ち位置
一方で、日本のゴルフ市場全体は変化の時期にあります。コロナ禍以降の“密を避けるスポーツ”としての需要増を経て、再び落ち着きを見せる一方、若年層や女性プレイヤーが増加しています。
アシックスはその新しい層に向け、「歩けるゴルフシューズ」「街でも履けるデザイン」を意識した商品を打ち出しているのが特徴です。
スパイクレスモデルの拡充や軽量化など、いわば“日常とスポーツの融合”をテーマにした開発が進められています。
また、ランニングやトレーニングシューズとの共通テクノロジーを活かし、ゴルフ専用ブランドに頼らないアプローチを取っている点も、アシックスならではの強みです。
「撤退」の誤解を生んだもう一つの理由
噂が拡散したもう一つの要因は、「情報の断片化」にあります。
SNSやニュースでは、「アシックスが〇〇事業を撤退」といった見出しだけが広まり、詳細を読まずに「ゴルフも撤退か」と思われたケースが多いようです。
特に、「ゴルフ事業」「ゴルフ用品」「ゴルフシューズ」という言葉が混同されやすく、実際には全く異なる分野を指しているにも関わらず、まとめて“ゴルフから撤退”と解釈されてしまいました。
しかし、アシックスの公式オンラインストアや主要ゴルフ専門店では、今も現行モデルが通常販売されています。数量限定カラーやツアープロ着用モデルなど、むしろ注目度が高いアイテムが増えている状況です。
アシックスの今後の展望
アシックスは、ランニングシューズ市場で確立したテクノロジーをゴルフへ応用し続けることで、独自のポジションを築いています。
その戦略のキーワードは「快適性」「安定性」「日本人向けフィット」の3つ。
特に注目されているのが、FlyteFoam素材とGELテクノロジーを組み合わせたクッション設計。長時間のラウンドでも足裏の負担を軽減し、スイング時の体軸ブレを抑える点がプロ・アマ問わず高評価です。
今後はAIによるフィッティング技術や、3Dスキャンを使ったカスタムシューズの展開なども予想されています。
また、アシックスはゴルフウェアやアクセサリー分野では大規模展開をしていないものの、ゴルフシューズに関しては「機能と歩きやすさの融合」という独自路線を維持しています。
つまり、撤退どころか、“選択と集中”の結果としてゴルフシューズにフォーカスしているのです。
消費者が注意すべき情報の見極め方
今回のように「撤退」という言葉が一人歩きしてしまう背景には、情報の出どころが明確でない記事やSNS投稿の影響もあります。
メーカーの公式リリース、販売店の在庫状況、製品ページなどを確認することが、正確な情報にアクセスする近道です。
また、アシックスの場合はプレスリリースや公式SNSアカウントで製品情報を発信しています。
もし今後、新しいゴルフシューズの発表があれば、まずそこから一次情報をチェックするのがおすすめです。
まとめ：アシックス ゴルフ シューズ 撤退の真相と今後の期待
結論として、アシックスがゴルフシューズ事業を撤退したという情報は誤りです。
実際には、ランニング分野で培った技術を活かし、より高性能で快適なゴルフシューズを開発・販売し続けています。
一方で、ゴルフクラブやパークゴルフ用品などの周辺分野からは撤退しており、これが誤解の発端となりました。
これからもアシックスは、「走る」「歩く」「スイングする」という動作を科学的に分析し、日本人に合ったシューズづくりを追求していくはずです。
新作の発表も続いており、今後はさらに多様なスタイルのゴルファーに向けた展開が期待されます。
つまり、「撤退」ではなく「進化」。
アシックスのゴルフシューズは、これからもプレイヤーとともに進み続ける存在なのです。
