アシックス グライドライドとは?
アシックスの「グライドライド(GLIDERIDE)」は、長距離ランナーの間で高い人気を誇るシリーズだ。名前の通り「グライド=滑るように走る感覚」を実現することを目指して設計されており、アシックス独自の「GUIDESOLE(ガイドソール)」構造によって、足が自然に前へ転がるような推進力を生み出す。
一般的な厚底ランニングシューズが「反発とスピード」を重視するのに対し、グライドライドは「走行効率」と「疲労軽減」に焦点を当てている。着地から蹴り出しまでの動きをスムーズにし、エネルギー消費を抑えることができるため、マラソンやロングジョグなど長時間のランで真価を発揮するモデルだ。
アシックスが掲げる開発テーマは「楽に、長く、効率よく走る」。そのコンセプト通り、初級者からサブ4ランナーまで幅広く支持を集めている。
「転がる」走りを実現するガイドソール構造
グライドライド最大の特徴は、独自のガイドソール構造にある。つま先が大きく反り上がったロッカー形状のソールが、着地から蹴り出しまでの動きを自然に前方へと導く。この「転がる感覚」が、ランナーの脚への負担を減らし、効率的に前進するエネルギーをサポートする。
走りの際に無理に地面を「蹴る」必要がなく、脚全体を使ってスムーズに進む感覚を得られるのがこのシューズの魅力。特にフルマラソンの後半や30kmを超えるロングランで、脚の疲れを感じにくいと評価されている。
実際に多くのランナーが「気づいたら前に進んでいる」「力を抜いてもペースが維持できる」とコメントしており、エネルギー消費を抑える走りをサポートする設計思想が体感できる一足となっている。
クッション性と快適性 ― 長時間走行でも疲れにくい
グライドライドシリーズはクッション性にも優れている。アシックス独自の軽量フォーム材「FLYTEFOAM(フライトフォーム)」や「FF BLAST」などを採用し、ソフトで弾むような着地感を実現。地面からの衝撃をしっかり吸収しつつ、反発力でスムーズに次の一歩へとつなげてくれる。
また、アッパーには通気性の高いエンジニアードメッシュを使用。足全体を包み込むようなフィット感とムレにくさを両立しており、夏場の長距離走でも快適に走り続けられる。
これらの要素が組み合わさることで、初心者でも安心して履ける「楽に走れるシューズ」として高い支持を得ている。
エネルギー効率を高める設計 ― 疲労軽減の秘密
グライドライドの開発テーマは「Energy Saving(エネルギー節約)」。ロッカー構造が脚のスイングを助けるだけでなく、脚の筋肉(特にハムストリングや臀部)の負担を減らすことで、体全体のエネルギー効率を高めている。
特にヒールストライク(かかと着地)傾向のランナーには抜群の相性を見せる。接地時の衝撃が分散され、自然に体が前へと傾くように導かれるため、安定した姿勢で長距離を走りやすい。
「フルマラソンで最後まで脚が残った」「LSDで疲労が少なかった」といった声が多く、単なるクッション性ではなく“走りを効率化する設計”が支持されている理由だ。
グライドライドの世代別進化
アシックスはシリーズごとにアップデートを重ね、より完成度の高い走り心地を追求している。以下に主要モデルの進化を整理してみよう。
初代 GLIDERIDE
初代は2019年に登場。アシックスが提唱する「GUIDESOLE」テクノロジーの実用化第一弾として登場し、マラソンシューズ市場に衝撃を与えた。厚底ソールと前方への転がり感が特徴で、ロングラン特化型の革新的モデルとして多くのファンを獲得した。
GLIDERIDE 2
2021年の2代目では、アッパーの通気性とフィット感を改善。より自然な履き心地に近づけつつ、ソールの硬さを適度に抑えることで“癖の少ない”走り心地を実現した。ジョギングや疲労抜きランにも最適とされ、「もっとも楽に走れるアシックス」と評されることもある。
GLIDERIDE 3
2022年モデルは、より軽量化と安定性を両立。推進力を生み出すロッカー形状を保ちつつ、ミッドソールの素材と厚みを調整して「自然な前傾姿勢」をサポートする設計となった。フルマラソン完走、サブ4狙いのランナーから高評価を得ている。
GLIDERIDE MAX(2024〜2025年モデル)
最新モデル「グライドライドMAX」は、シリーズの集大成とも言える一足。ミッドソールには「FF BLAST MAX」を採用し、柔らかさと反発性をさらに向上。ヒール高44mmの厚底構造ながら、滑らかなロッカー設計で重さを感じにくいバランスを実現している。
レビューでは「ジョグやロング走で疲れにくい」「自然に足が前に出る」「安定感が高い」と高い評価が並ぶ。反面、「スピード練習には不向き」「厚みゆえの接地感の違和感」が指摘される場合もあり、使い分けがポイントだ。
どんなランナーに向いているのか
グライドライドは、特定のターゲット層に偏らず、幅広いランナーに対応できる万能型だ。
特におすすめなのは次のような人たち。
- フルマラソン完走、サブ4を目指すランナー
- ロングジョグやLSDなど距離重視の練習を行う人
- 疲労を抑えつつ走行距離を稼ぎたい中級者
- レース用シューズとは別に「脚を休ませるジョグ用」を探している人
- 厚底初心者でも扱いやすいモデルを探している人
一方で、テンポ走やインターバルなどスピード練習が中心の人には少し重たく感じるかもしれない。あくまで「疲労を抑えながら距離を踏むためのシューズ」として位置づけるのが正解だ。
グライドライドの“クセ”と注意点
いくつかの注意点も押さえておきたい。まず、ロッカー構造特有の「転がる感覚」には慣れが必要だ。最初はつま先側に重心が移動する独特の感覚に違和感を覚えることもあるが、数回のランで自然に馴染むケースが多い。
また、厚底ゆえに安定性を気にする声もある。特に足首の可動域が狭いランナーや着地が不安定な人は、最初のうちは平坦な路面で試すのが良いだろう。
さらに、万能ではないという前提を持っておくことも重要だ。グライドライドは“速く走る”ためのシューズではなく、“長くラクに走る”ためのシューズ。目的を誤ると、本来のポテンシャルを活かしきれない。
他ブランドとの比較で見える立ち位置
近年はナイキの「インヴィンシブル」やホカの「クリフトン」など、クッション性を重視した厚底モデルが増えている。その中でグライドライドは「推進力×安定性×疲労軽減」を軸に独自のポジションを築いている。
特に他社モデルが柔らかさを追求しているのに対し、グライドライドは「前方への転がり感」と「芯のある安定性」を重視している点が特徴。長距離を安定して走りたいランナーにとって、極めてバランスの良い一足といえる。
今あらためて注目すべき理由
厚底カーボン全盛の現在、スピードモデルばかりが注目されがちだが、実際のランナーが求めているのは「長く走れる快適さ」だ。特にマラソン完走を目指す市民ランナーや、日々のジョグで距離を積む層にとって、グライドライドの“疲れにくさ”は大きな魅力になる。
さらに最新のGLIDERIDE MAXは、これまで以上に柔軟で快適なクッション性を実現しつつ、シリーズの代名詞であるロッカー構造をより洗練させている。これにより、従来モデルの「ラクさ」を維持しながらも、反発力や安定性を高めた“次世代型ジョグシューズ”へと進化している。
価格帯はやや高めだが、毎週長距離を走るランナーにとっては「疲労軽減=練習継続性の向上」と考えれば、十分に投資する価値のあるモデルだ。
アシックス グライドライドで“長くラクに走る”を体感しよう
アシックス グライドライドは、単なる厚底シューズではなく、「効率よく、楽に、長く走る」という明確な目的を持った一足だ。走行効率を高め、脚への負担を減らすことで、ランニングをより持続的で快適なものに変えてくれる。
最新モデルのGLIDERIDE MAXは、その哲学を最も進化させた完成形。長距離ランナーの“頼れる相棒”として、これからのトレーニングやマラソン挑戦を支えてくれるだろう。
走るたびに実感する「転がるような滑らかさ」。それこそが、グライドライドが多くのランナーに選ばれ続ける理由だ。


