アシックスとキコ・コスタディノフ。この二つの名前が並ぶだけで、ファッション好きやスニーカーファンの心がざわつく人も多いはず。
2025年現在、両者のコラボは単なる“限定スニーカー”の域を超え、「ASICS NOVALIS（ノヴァリス）」という新たなステージへと進化している。この記事では、最新作を中心に、その魅力や背景、そして今このコラボがなぜ特別なのかをじっくり掘り下げていく。
アシックス × キコ・コスタディノフとは？
キコ・コスタディノフは、ブルガリア出身のロンドン在住デザイナー。セントラル・セント・マーチンズを卒業後、自身のブランドを設立し、ワークウェアを再構築するような機能的かつ前衛的な服作りで一躍脚光を浴びた。
そんな彼がアシックスと出会ったのは2018年。以降、彼の独自の美学とアシックスの機能性が融合したスニーカーが、世界中のファッション界で高く評価されている。
最初のコラボモデル「GEL-Burz 1」から始まり、「GEL-Korika」、「GEL-Kiril」など、数々の名作を生み出してきた。特にGEL-Kirilは、約1年半にわたる共同開発の末に完成した力作で、アシックスが外部デザイナーと共に新しいソールユニットを開発するという異例の試みでもあった。
ファッションと機能の融合という挑戦
キコ・コスタディノフとアシックスの関係を語る上で外せないのが、「ファッション × 機能性」というテーマだ。
一般的に、デザイナーズスニーカーは見た目重視の印象が強い。しかしこのコラボは違う。キコはアシックスのスポーツ工学をリスペクトし、その技術をファッション的文脈で再構築している。
たとえばGEL-Korikaでは、ランニング用のソールをベースにしながら、パテント素材や大胆なメッシュの配置でモードな印象を演出。
GEL-Kirilでは、TRUSSTICシステムによる安定性を維持しつつ、視覚的には彫刻のような立体感を持たせるなど、履き心地と造形美のバランスが見事だ。
つまり、このコラボの根底にあるのは「機能の再解釈」。
“走るための靴”ではなく、“生きるための靴”として、スポーツシューズの新たな価値を提示している。
「ASICS NOVALIS」という新章へ
そして2024年以降、この関係性は次の段階に進む。
それが「ASICS NOVALIS（アシックス・ノヴァリス）」だ。
これは、キコ率いるデザインチームがアシックスのライフスタイルライン全体に関わる、新たなサブブランド的プロジェクト。
単なるコラボではなく、アシックスの未来像をともに描く“共創”の場となっている。
最新作として注目されているのが、2025年12月発売の「GEL-Teremoa」だ。
シーズン3第2弾となるこのモデルは、グラファイトグレーを基調に、ティール（青緑）のアクセントを加えた落ち着いた配色。都会的で洗練された雰囲気をまといながら、アシックスらしい安定性と履き心地を兼ね備えている。
最新作GEL-Teremoaの魅力を解剖する
GEL-Teremoaは、外見だけでなく中身も進化している。
ソールにはFF BLAST PLUSを採用。軽量で反発性の高い素材で、長時間の歩行でも疲れにくい。
さらにヒール部分にはTRUSSTICユニットを搭載し、着地の安定性を高めている。
アッパーはメッシュと合成皮革のコンビネーション。空気を通しながらも、形を保つ構造になっており、歩くたびに自然なフィット感を感じられる。
加えて、アシックス特有のGELテクノロジーも健在。かかと部分に組み込まれたゲル素材が衝撃を和らげ、柔らかな履き心地を生む。
デザイン面では、曲線的なラインと立体的なソール構造が特徴。
近未来的でありながら、どこかクラシックな要素も感じさせる。
これはまさに、キコが得意とする“機能と形の再構築”の成果だ。
ファッションとしての完成度
キコ・コスタディノフが関わることで、アシックスのスニーカーは「スポーツブランドの靴」から「ファッションアイテム」へと進化した。
たとえば、GEL-Teremoaのようなモデルは、ランニングではなく日常のスタイルに自然に溶け込む。
ワイドパンツやテック系のジャケット、あるいはミニマルなコートにも合わせやすいデザインで、機能性とモードの両立を実現している。
さらに、ASICS NOVALISではアパレルも同時展開されており、スニーカーとウェアをトータルで楽しむこともできる。
シンプルながら素材感にこだわったトラックジャケットやパンツは、まさに“動けるファッション”という表現がぴったりだ。
コラボがもたらしたブランドの変化
このコラボが始まってから、アシックスのイメージは大きく変わった。
それまで「機能一辺倒」「スポーツ専用」と思われていたブランドが、ファッション感度の高い層にも届くようになったのだ。
とくにヨーロッパやアジアの若年層では、「キコ＝おしゃれなアシックス」という新しい認識が生まれている。
これは単にデザインが洗練されたという話ではなく、“ブランドの文脈を再定義した”ということ。
アシックスは、競技者のためだけでなく、都市で生きる全ての人のためのブランドへと進化している。
今後の展望と期待
ASICS NOVALISは今後も継続的に展開される予定だ。
シーズンごとに新作が登場し、アシックスの技術をベースに、キコのチームが新しい表現を模索していく。
今後はサステナブル素材や3Dプリント技術を応用したモデルの登場も期待されており、「未来のスニーカー」の形を先取りする存在になるだろう。
また、アシックス自身もこのコラボを通じて、スポーツウェアの枠を超えたブランド戦略を強化している。
高機能な素材開発とモード的デザインを両立させる姿勢は、他ブランドにはない独自性を放っている。
アシックスとキコ・コスタディノフのコラボが特別な理由
一言でいえば、それは“バランス”だ。
ハイファッションに寄りすぎず、かといって機能だけに偏らない。
GEL-Teremoaのようなスニーカーは、日常の延長線上で履けるモード靴として成立している。
そこには、アシックスのテクノロジーとキコの造形哲学が緻密に融合している。
「履くことで完成するデザイン」としてのスニーカー――それがこのコラボの本質だ。
まとめ：アシックス × キコ・コスタディノフが描く次世代スニーカー像
アシックスとキコ・コスタディノフのコラボは、もはや一時的な話題ではない。
それは“ASICS NOVALIS”という持続的なクリエイションの形として定着し、ブランドの新しい未来を提示している。
2025年の最新作「GEL-Teremoa」は、その象徴的な存在だ。
機能性、快適性、デザイン、そして物語性。
どれを取っても妥協のない完成度で、アシックスが「ファッションとテクノロジーの融合ブランド」であることを改めて示している。
アシックス キコ・コスタディノフ――この二つの名前が並ぶとき、そこにあるのは単なるコラボではなく、“新しいスニーカーカルチャーの未来”そのものだ。
