ランニング界でここ数年、急速に注目を集めているのが「カーボンプレート搭載シューズ」。厚底ソールに高反発素材、そしてカーボンプレートを組み合わせることで、走行効率を高めるこの技術は、トップアスリートだけでなく市民ランナーにも広く浸透しています。
そんな中で、アシックスは日本ブランドらしい緻密な設計と履きやすさを両立させた独自のカーボンシューズシリーズを展開しています。今回は、2025年最新ラインナップを中心に、その特徴と違いをわかりやすく比較していきます。
カーボンプレートとは?アシックスが生み出した「走りの推進力」
そもそもカーボンプレートとは、軽くて硬い炭素繊維の板をミッドソール内部に内蔵し、ランニング中のエネルギーロスを減らす仕組みのこと。接地から蹴り出しまでの動きをスムーズにし、少ない力で前に進めるようサポートしてくれます。
アシックスはこのテクノロジーを「ただ速く走るため」だけでなく、「安定して、自然に走れるため」に進化させてきました。
同社の強みは、単なる推進力だけではなく、日本人の足形に合わせたフィット性と、長距離でも疲れにくい安定感を重視している点にあります。
カーボンプレートと組み合わせるのは、独自開発のミッドソール素材「FF BLAST」「FF TURBO」「FF LEAP」など。これらの素材がクッション性と反発性を両立し、レースでも練習でも扱いやすい走行感を生み出しています。
アシックス カーボンプレートシューズの代表モデルたち
アシックスのカーボンプレート搭載モデルは、大きく分けて「レーシング(記録更新狙い)」と「トレーニング(練習・レース両用)」の2系統に整理できます。
ここでは、2025年現在の代表モデルを紹介します。
● Magic Speed 4 ― 初めてのカーボンに最適
「カーボンシューズを履いてみたいけど、いきなり上級モデルは不安」という人にぴったりなのが Magic Speed 4 シリーズ。
第4世代では、反発と安定のバランスがさらに洗練され、ソール全体に配置されたカーボンプレートが自然な推進力を生みます。
足裏の感覚が地面に近く、踏み込みやすいのも魅力。5〜10kmレースやスピード練習にも最適で、初カーボンとして最も人気の高い一足です。
● EvoRide Speed ― 軽さと安定感を両立
EvoRide Speed は、もともと“ロッカー構造”と呼ばれる前方に転がるような形状でスムーズな体重移動をサポートするモデル。
その最新型「EvoRide Speed」は、軽量化されたソールとプレート構造により、より速いテンポでの走りを可能にしました。
レース本番だけでなく、日々のスピード練習にも使える万能タイプです。クッションも適度で、長距離でも脚が重くなりにくいのが特長です。
● S4+ YOGIRI ― サブ4ランナーのための新戦力
S4+ YOGIRI シリーズは「フルマラソンで4時間切り」を目指すランナーをメインターゲットにしたカーボンモデル。
名前の「S4」は “Sub 4(サブフォー)” に由来しています。
柔らかすぎず硬すぎないプレート設計と、適度に厚みを持たせたソールが安定した走りを支え、後半の失速を抑えてくれます。
フルマラソン用としてのバランスが絶妙で、長時間履いても違和感が少ないのが強みです。
● Metaspeed Sky ― ストライド型ランナーの最上位モデル
アシックスのカーボンプレートシューズを語る上で欠かせないのが「Metaspeed」シリーズ。
その中でも Metaspeed Sky は、ストライド(歩幅)でスピードを稼ぐタイプのランナーに最適です。
軽量で反発力の高い素材を採用し、踏み出すたびにスムーズな推進を感じられます。
トップアスリートがフルマラソンで使用することも多く、まさに“自己ベスト更新専用機”とも言える存在です。
● Metaspeed Edge ― ピッチ型ランナーに特化した設計
同じMetaspeedシリーズでも、Metaspeed Edge はピッチ(回転)でスピードを出すタイプのランナーに向いています。
やや低めのソール設計と独自カーブのカーボンプレートが、テンポの速い脚運びをサポート。
中距離〜フルマラソンまで幅広く対応し、ストライド型のSkyよりも安定感が強いモデルです。
● Metaspeed Ray ― 軽量かつ爆発的な推進力
Metaspeed Ray は2024年に登場した新世代モデル。SkyやEdgeよりもさらに軽量で、スピードランナーのために設計されています。
短距離・ハーフ・テンポ走など、瞬発力を活かしたいシーンにぴったり。
従来のMetaspeedより柔軟性があり、上級者だけでなく、スピード練習を重ねたい中級ランナーにも人気が広がっています。
どのモデルが自分に合っている?目的別の選び方
アシックスのカーボン搭載モデルは幅広く、どれを選ぶか迷う人も多いはず。
目安として、走力・目的ごとに向いているシリーズを整理すると次のようになります。
- 初めてカーボンを試すなら:Magic Speed 4
→ 軽さ・安定・反発のバランスが良く、価格も控えめ。 - フルマラソン4時間切りを狙うなら:S4+ YOGIRI
→ 推進力と疲労軽減の両立が得意。 - スピード練習やハーフ中心なら:EvoRide Speed
→ 日常使いできる扱いやすさ。 - 自己ベスト更新を狙う上級者なら:Metaspeed Sky / Metaspeed Edge / Metaspeed Ray
→ 走り方やレース戦略に合わせて選ぶのがベスト。
大切なのは、「カーボンだから速くなる」のではなく、「自分のフォームと合うモデルを選ぶ」こと。
特にMetaspeedシリーズのような上級モデルは、推進力が強いぶんフォームが安定していないと走りづらく感じることがあります。
逆に、Magic Speed 4 など扱いやすいモデルで慣れていくと、自然にフォームが整い、上位モデルの性能を活かしやすくなります。
カーボンシューズを履くときの注意点
カーボンプレートシューズは、確かにスピードを引き出しやすいですが、誰にでも万能ではありません。
購入前に、以下のポイントを押さえておくと失敗しにくくなります。
- 慣らし期間を設ける
最初は反発の強さやソールの高さに違和感を覚える人もいます。短い距離から少しずつ慣らすのが安全です。 - 用途を絞る
日常ジョグやウォーキングには不向き。スピード練習やレースなど目的を決めて使うと、フォームが安定します。 - サイズ選びに注意
レーシングラスト(細めの設計)が多いため、普段履きよりハーフサイズ上げるとちょうどいいケースもあります。 - 耐久性を意識
軽量素材のため、一般的なシューズより寿命は短め。トレーニングとレースで履き分けるのがおすすめです。
アシックスがこだわる「履きやすいカーボン」の哲学
アシックスの強みは、単なるスピード志向ではなく「すべてのランナーが無理なく使える設計」にあります。
同社の開発陣は、「カーボンプレートの性能を最大化しつつ、怪我を防ぎ、自然なランニング動作を支えること」を重要視しています。
そのため、Metaspeedシリーズでも足幅や接地安定性に配慮し、日本人ランナーにもフィットする作りが特徴です。
また、Magic Speed 4 などの入門モデルでは、クッションと反発のバランスを最適化し、違和感なく“前へ進む感覚”を味わえるよう設計されています。
こうした哲学があるからこそ、アシックスのカーボン搭載モデルは「扱いやすいのに速い」という評価を得ているのです。
2025年、アシックス カーボンプレートモデルはさらに進化する
2025年の最新ラインナップでは、新素材FF LEAPを採用したモデルが増え、従来よりも軽量で高反発なソールが実現されています。
同時に、クッション性や安定性も改良され、これまで「上級者向け」とされていたカーボンモデルが、より多くのランナーにフィットする時代に入りました。
ランニング界全体でも、「カーボンプレート+厚底」は一つのスタンダード。
アシックスはそこに“走りやすさ”という日本的な価値観を加え、世界中のランナーから支持を集めています。
アシックス カーボンプレート搭載モデル比較まとめ
カーボンプレート搭載シューズは、確かに走りを変えるポテンシャルを秘めています。
しかし大切なのは、「自分に合ったモデルを選び、正しく使うこと」。
アシックスのラインナップなら、初心者から上級者まで、自分の目的やフォームに合う一足が必ず見つかります。
Magic Speed 4 で初めてのカーボンを体験し、S4+ YOGIRI や EvoRide Speed で距離を伸ばし、最終的に Metaspeed Sky で自己ベストを更新する――そんなステップアップの道筋が明確に描けるのも、アシックスならではの魅力です。
最新技術を体感しながら、自分の走りを進化させたい。
そんなランナーにとって、アシックス カーボンプレート搭載モデルは、これからの挑戦を後押ししてくれる心強い相棒になるはずです。


