アシックスは日本を代表するスポーツブランドとして、長年にわたりオリンピックと深い関係を築いてきました。単なるスポンサーではなく、選手たちのパフォーマンスを支える「技術」と「理念」で大会を陰から支えてきた存在です。この記事では、アシックスとオリンピックの関係を時代ごとにたどりながら、歴代の公式モデルや採用シューズ、そして今後の展望までをわかりやすく解説します。
オニツカタイガー時代から始まったオリンピックとの縁
アシックスの原点は、1949年に鬼塚喜八郎氏が創業した「オニツカタイガー」にあります。当初はバスケットボールシューズの製造から始まりましたが、すぐに陸上競技やマラソン、体操など、オリンピック種目で使われる競技用シューズの開発にも乗り出しました。
特に注目すべきは、1964年東京オリンピックの頃。この時代、オニツカは多くの日本人選手にシューズを提供し、軽量化やフィット感の研究を進めていました。その結果誕生した「メキシコライン(Mexico Line)」は、1968年メキシコシティ大会に向けた開発の中で生まれ、いまのアシックスの象徴である“タイガーストライプ”デザインとして受け継がれています。
このラインを採用した代表作「MEXICO 66」は、オリンピックをきっかけに世界へ羽ばたいた初の日本発スニーカーといっても過言ではありません。
オリンピックで輝いたアスリートとアシックスの足跡
1960〜70年代には、オニツカタイガー製シューズを履いた数多くのランナーが世界記録を打ち立てました。特に1976年モントリオール大会で二冠を達成したフィンランドのランナー、ラッセ・ヴィレン選手は象徴的な存在です。彼が表彰台で掲げたシューズこそ、オニツカタイガー製のランニングモデルでした。
このようなエピソードを通じて、アシックスは「長距離=ASICS」という印象を世界に植え付けました。マラソンや陸上競技の分野では、日本人選手だけでなく、海外のトップアスリートにも選ばれるグローバルブランドへと成長していきます。
アシックスが支える日本代表 ― 公式ユニフォーム提供の舞台裏
オリンピックとの関係が新たな局面を迎えたのは、2020年東京大会です。アシックスは「TEAM JAPAN」の公式パートナーとして、選手団のユニフォームやシューズ、バッグ、トレーニングウェアを提供しました。
表彰式用のユニフォームは、機能性とデザイン性を両立させながら、再生素材を使用するなど環境配慮も徹底。まさに「技術とサステナビリティの融合」を体現したプロジェクトでした。
また、パラリンピックでもアシックスは公式ゴールドパートナーとしてサポートを継続。障がいのある選手が競技に集中できるよう、細部まで設計を調整したカスタムメイドのギアを提供しています。このように、単なるスポーツ用品の提供にとどまらず、選手一人ひとりのパフォーマンスを引き出すための「共創型サポート」を展開している点が特徴です。
パリ2024で進化した最新ユニフォームと取り組み
2024年のパリ大会でも、アシックスは引き続き日本代表の公式サプライヤーを務めました。新しいユニフォームのテーマは「一体感としなやかさ」。国旗の赤を基調に、軽量化と通気性を追求した素材を使用。さらに、製造過程ではCO₂排出を抑える環境配慮型プロセスが導入されています。
選手村用のウェアや移動着、セレモニー用アイテムに至るまで、すべてのカテゴリーで「動きやすさ」と「美しさ」を両立。特に女子選手向けのデザインには、フィードバックを反映した立体裁断や肌当たりの優しい素材を採用し、細やかな工夫が光ります。
こうした取り組みは、アシックスが単に競技用具を提供するメーカーではなく、“アスリートの生き方を支えるブランド”へ進化していることを示しています。
歴代のオリンピック採用モデル ― 技術の系譜
アシックスのオリンピックモデルは、常に時代の最先端技術を反映してきました。
印象的なモデルをいくつか紹介します。
- MEXICO 66(1968):初の虎縞ライン搭載モデル。軽量レザーと薄底ソールが特徴。
- SORTIEシリーズ(1980〜1990年代):マラソン用の軽量レーシングシューズ。日本人選手の多くが着用。
- GEL-KAYANOシリーズ(1993〜):長距離ランナーの安定性を追求した代表作。五輪代表選手のトレーニングにも採用。
- METASPEEDシリーズ(2021〜):カーボンプレート搭載で厚底時代に再挑戦。パリ2024では日本代表選手も使用。
これらのモデルは単なる「靴」ではなく、オリンピックを舞台に磨かれてきたアシックスの技術史そのものといえます。
競技用から社会貢献へ ― オリンピックとアシックスの新しい関係
かつては「勝つための靴」を作ることがアシックスの使命でした。
しかし今では、オリンピックを通じて「スポーツの価値を社会に広げること」も重要な役割となっています。
たとえば、パラリンピックや障がい者スポーツの支援、再生素材を使った製品づくり、子どもたちへの運動教育プログラムなど。アシックスはオリンピックパートナーとして、競技の舞台だけでなく社会全体で「スポーツが持つ力」を広げる活動に取り組んでいます。
アシックスとオリンピックが生み出す未来
オリンピックのたびに技術を磨き、アスリートの声に耳を傾けてきたアシックス。その積み重ねが、いまや世界中のランナーやスポーツ愛好家に届いています。
「科学と人間の調和」を掲げるブランド哲学は、競技の枠を超えて、健康・環境・共生といった社会的テーマにも広がっています。
これからもアシックスは、オリンピックを通じて得た経験を新しい製品やプロジェクトに還元し続けるでしょう。
MEXICO 66からMETASPEEDシリーズへ。
オリンピックという舞台で磨かれてきたアシックスの挑戦は、これからも終わりません。
アシックス オリンピック ― 技術と理念でつながるブランドの原点
アシックスとオリンピックの関係は、70年以上にわたるブランドの歴史そのものです。オニツカタイガー時代に始まった挑戦は、今も形を変えて続いています。
“競技を支える道具”から、“スポーツの未来を創るパートナー”へ。
その進化の過程こそ、アシックスが世界で愛され続ける理由なのです。


