革新の予感──ASICSが仕掛ける「MZ TYPE1」とは何か
アシックスが開発中と噂される「アシックスMZ TYPE1」。正式な製品情報はまだ発表されていませんが、ランナーの間ではすでに注目の的になっています。海外では「プロトタイプモデル」として話題になり、実際に試走したランナーたちが「驚くほど柔らかい」「反発力がすごい」と口を揃える新時代の一足です。
この記事では、現時点で判明しているアシックスMZ TYPE1の情報をもとに、その特徴、履き心地、そしてASICSの開発意図を徹底的に掘り下げていきます。
MZ TYPE1の開発背景──次世代厚底レーシングの系譜
アシックスはここ数年、「METASPEED SKY PARIS」や「METASPEED EDGE PARIS」などの厚底レーシングモデルでトップランナーを支えてきました。これらのモデルは、ナイキのVaporflyシリーズやアディダスのAdios Proシリーズと並ぶ存在として、マラソン界を席巻しています。
その流れの中で登場したのが、この「アシックスMZ TYPE1」です。
アシックスMZ TYPE1は、従来のMETASPEED SKYシリーズとは異なる新コンセプトで開発された“ハイパーシューズ”と見られています。つまり、アシックスが次に打ち出す「究極の推進力と快適性の融合」を実現する実験的モデルです。駅伝選手の一部が試作モデルを着用しているという噂もあり、2025年以降の正式リリースが期待されています。
デザインの印象──未来的で攻めたフォルム
実物の写真を見ると、アシックスMZ TYPE1は非常にアグレッシブなデザインをしています。
ソールには深いカットが入り、ヒール部分が空洞化したような構造。従来の「分厚い厚底」に対して、空気力学的な“くぼみ(コンケーブ)形状”が印象的です。
この形状は、単に見た目のインパクトだけでなく、着地から蹴り出しまでのエネルギーロスを最小限に抑えるための工夫と考えられます。
上から見ると、アッパーは極薄のエンジニアードメッシュで構成され、通気性と軽量化を極限まで追求しているのが分かります。レース仕様のテンションの高いフィット感を予感させる作りです。
ミッドソール構造──柔らかさと反発の共存
アシックスMZ TYPE1の最大の特徴は、ASICS独自のミッドソール素材「FF Turbo+」の採用にあります。
この素材は、METASPEED EDGEシリーズにも使われている高反発フォームをさらに軽量・高弾性化したものとされ、柔らかさと反発力を両立する最新コンパウンドです。
レビューでは「信じられないほど柔らかい(Incredibly soft)」「着地の衝撃がほぼ消える」といった声が多く、ランナーの足を包み込むようなクッション性が高く評価されています。
一方で、内部にはカーボンプレートが組み込まれており、着地時に圧縮されたエネルギーを瞬時に反発力へと変換。推進力を途切れさせず、フォアフット走法にもスムーズに対応します。
また、ロッカー構造(つま先と踵が上に反った形状)によって、体重移動が自然に前へと導かれます。これにより、レース後半でもフォームを崩さず、効率的に走り続けられる設計になっています。
履き心地──“マシュマロのような”柔らかさと軽さ
実際に試したランナーの感想では、「柔らかさ」と「軽さ」のバランスに驚く声が多数。
着地時の沈み込みがスムーズで、足裏全体がふんわりと支えられるような感覚が特徴的だといいます。
それでいて蹴り出しの瞬間にはカーボンプレートの反発がしっかり感じられ、スピード走でもふわふわしすぎない安定感があります。
この柔らかい乗り味は、脚への負担を減らしたい市民ランナーにも魅力的。特に30km以降のマラソン終盤で、脚の疲労を軽減してくれる効果が期待できます。
アシックスらしい“守りの安定感”を残しつつ、“攻めの推進力”を加えた設計は、まさに新世代レーシングの理想形といえるでしょう。
プロトタイプゆえの課題──耐久性と安定性の未知数
ただし、現段階ではあくまで「プロトタイプ(試作段階)」であり、いくつかの課題も指摘されています。
- 耐久性の検証不足
柔らかいミッドソール素材は高反発な一方で、長距離使用時のヘタリや圧縮劣化が懸念されます。
特に1,000kmを超えるような長期ランでは、クッション性がどの程度維持されるか未知数です。 - 安定性の評価が分かれる
ソールが非常に柔らかく、ロッカー角度が強いため、走行フォームによっては不安定に感じるという意見もあります。
高速走者には快適でも、初心者が使用する場合には慣れが必要かもしれません。 - 左右非対称の試作品も存在
初期プロトタイプでは、左右でミッドソールの切り込み構造が異なる個体が確認されており、量産段階での品質安定化が課題です。
これらは今後の正式リリース時に改善される可能性がありますが、現時点では“未知数の領域”が多い点を理解しておく必要があります。
比較:METASPEEDシリーズとの違い
アシックスMZ TYPE1は、アシックスの現行トップモデル「METASPEED SKY」や「METASPEED EDGE」と比較して、以下のような特徴的な違いが見られます。
- クッション性がより柔らかく、脚あたりがマイルド
- ロッカー形状が強く、フォアフット走法に特化
- ソール構造が軽量化され、ヒールの沈み込みが深い
- プレートの反発感がより直線的で、スピードの乗りが鋭い
つまり、METASPEED SKYが「タイム短縮を狙う上級者向け」であるのに対し、アシックスMZ TYPE1は「反発+快適性」を両立した“万能型レーシングシューズ”としての方向性を持っています。
アシックスファンの中でも「初めての厚底カーボン」として手に取りやすい存在になるかもしれません。
市民ランナーにとってのメリット
もしアシックスMZ TYPE1が正式に発売された場合、市民ランナーにとって次のようなメリットが考えられます。
- 足への衝撃を大幅に軽減し、長距離でも疲れにくい
- 軽量で、ペース維持がしやすい
- 着地が柔らかく、膝や足首への負担を抑制
- 高反発により、自然とストライドが伸びる
フルマラソンや駅伝だけでなく、日常のジョグにも使いたくなる履き心地。
「攻めるための厚底」ではなく「走りを支える厚底」として、幅広い層にフィットするポテンシャルを秘めています。
今後の展開予想──ASICSの“第3の柱”へ
アシックスMZ TYPE1は、アシックスの開発戦略における重要な転換点になるかもしれません。
METASPEED SKYシリーズが“レース直結型モデル”である一方、アシックスMZ TYPE1は“日常トレーニングとレースをつなぐハイブリッド”として設計されている可能性があります。
つまり、これまでの「SKY=ストライド型」「EDGE=ピッチ型」という分類を超えた、“第三の走法”に対応するシューズになるかもしれません。
もし正式発売が実現すれば、アシックスMZ TYPE1は「ASICSの新たなスタンダード」として、国内外で大きな話題を呼ぶことは間違いないでしょう。
アシックスMZ TYPE1の魅力を再確認して締めくくる
アシックスMZ TYPE1は、まだ謎に包まれた存在です。しかし、そのコンセプトや試走レビューから見えてくるのは、「快適さ」と「スピード性能」を高次元で両立したASICSの挑戦的モデル。
柔らかく、それでいて速い。守りと攻めが共存するような一足は、まさに“アシックスらしさの進化形”といえます。
現時点では発売時期や価格などの公式情報は未発表ですが、このモデルが正式にリリースされれば、ランニングシーンの勢力図を塗り替える可能性すら秘めています。
今後もアシックスMZ TYPE1の動向から目が離せません。


