「オニツカタイガーとアシックスって、結局どう違うの？」
スニーカー好きの間でもよく話題になるこの疑問。見た目が似ているモデルも多く、どちらも同じ「虎のストライプ」が入っているため混同しがちですよね。
でも実は、この2つのブランドは「同じルーツを持ちながら、まったく違う方向に進化した兄弟ブランド」なんです。
ここでは、歴史、ブランドの成り立ち、デザイン、ターゲット層などの観点から、両者の違いをわかりやすく整理していきます。
オニツカタイガーの起源と歴史 ― 戦後日本から生まれたスポーツブランドの原点
オニツカタイガーの始まりは、1949年に神戸で創業した「鬼塚商会」。創業者の鬼塚喜八郎氏は「若者の健康のためにスポーツを広めたい」という想いでシューズ作りを始めました。
当時は日本製のスポーツシューズがほとんど存在せず、オニツカは国内初の国産バスケットシューズを開発。その後、陸上、レスリング、バレーボール、サッカーなどあらゆる競技に向けた靴を生み出していきます。
この時代に誕生したのが、ブランドの象徴ともいえる「タイガーストライプ」。2本の斜めラインが交差したデザインで、今では世界中のスニーカーファンに知られるシンボルです。
このデザインは「走る」「挑戦する」という精神の象徴でもあり、今日まで受け継がれています。
アシックス誕生 ― 合併によるブランド再編と理念の確立
1977年、鬼塚商会を含む3社が合併して誕生したのが「アシックス（ASICS）」です。
社名はラテン語の格言 “Anima Sana In Corpore Sano”（健全な身体に健全な精神を）から取られています。この言葉が示すように、アシックスは創業当初から「スポーツを通じて人々の心身の健康を支える」ことを企業理念に掲げています。
合併後、アシックスは競技用・実用スポーツシューズの開発を強化。ランニング、バスケット、陸上、トレーニングといった幅広い分野で高性能な製品を発表し、世界的なスポーツブランドとしての地位を確立しました。
つまり、オニツカタイガーは「原点」であり、アシックスはその理念を引き継ぎながら「機能性とパフォーマンス」を追求する進化形なのです。
オニツカタイガー復活 ― ファッションブランドとしての再スタート
時は流れて2002年。アシックスの社内で「オニツカタイガー」ブランドが再始動します。
再登場の目的は、往年の名作を現代風にアレンジし、ファッションとして蘇らせること。
これが世界中でヒットし、いまでは「レトロ×モダン」を融合した日本発のライフスタイルブランドとして確固たる地位を築いています。
代表作の「MEXICO 66」は、1968年のメキシコ五輪モデルをベースにした名作。スリムなシルエットとクラシカルなストライプが特徴で、街中でもスーツやワンピースに合わせやすい万能スニーカーです。
現在のオニツカタイガーは、靴だけでなくアパレルやバッグ、アクセサリーなども展開。東京やパリ、ミラノ、ニューヨークなどに旗艦店を持ち、ファッションブランドとしての存在感を高めています。
ブランドの関係性 ― 同じ会社だけど別ブランド
混同されやすい最大の理由は、オニツカタイガーもアシックスも「アシックス株式会社」が運営している点にあります。
つまり、オニツカタイガーはアシックスグループの一ブランドという位置づけです。
ただし、企業内部では明確に事業が分かれており、目的もターゲットも異なります。
アシックスは「スポーツのパフォーマンスを支える機能性重視ブランド」。
一方でオニツカタイガーは「街で楽しむファッションブランド」。
同じDNAを持ちながら、住み分けることでブランド価値を高めているのです。
デザインと世界観の違い ― スポーツ vs ファッション
両ブランドのデザインの方向性も大きく異なります。
アシックスは機能を最優先に設計されており、軽量化、安定性、クッション性など“走るための構造”が中心です。ランナーやアスリートに向けた設計思想が明確で、最新素材やテクノロジーを積極的に採用しています。
一方のオニツカタイガーは、デザイン性を軸にしています。クラシックなフォルムを残しつつ、素材やカラー、ソールの厚みなどをファッション向けにリメイク。
シンプルな服装のアクセントにしやすく、スニーカーを“履く道具”ではなく“スタイルの一部”として提案しています。
両者ともに「虎のストライプ」を用いる点は共通ですが、ロゴやディテール、全体の雰囲気で違いは一目瞭然。アシックスはスポーティでシャープ、オニツカタイガーはレトロで柔らかい印象です。
ターゲットと用途 ― どんな人に向いているか
アシックスは、スポーツやトレーニング、ランニングを日常的に行う人に最適。
長時間の歩行や立ち仕事など、機能性や安定感を重視する人からも支持されています。
例えば、ランニングシューズの「ゲルニンバス」「メタスピード」シリーズなどは世界中のランナーに愛用されています。
オニツカタイガーは、デザインやブランドストーリーを重視する人に人気。
街歩き、カジュアルコーデ、スニーカー通勤、旅行など、日常でおしゃれに履ける靴を探している層にぴったりです。
限定モデルやコラボ企画も多く、ファッション好きな層からコレクション的に支持されることもあります。
価格帯と販売チャネルの違い
アシックスのシューズは、幅広い価格帯で展開されています。
初心者向けのエントリーモデルから、最新技術を搭載したハイエンドモデルまで、目的に応じて選べるのが特徴。
スポーツ量販店、直営店、オンラインストアなど、多様な流通経路を持ちます。
一方で、オニツカタイガーはややプレミアム寄りの価格設定。
限定コレクションやデザイナーコラボが多く、ファッション性の高いラインが中心です。
販売も直営店や公式オンラインが中心で、「特別感」を演出するブランディングがされています。
オニツカタイガーとアシックスを見分けるポイント
見た目が似ているとはいえ、細部を見れば違いははっきりしています。
- ロゴ：オニツカタイガーはレトロな“筆記体風ロゴ”、アシックスは現代的でシンプル。
- ソールの形：アシックスは機能重視で厚め・反発性あり、オニツカは細身で軽快。
- 素材：オニツカはスエードやレザーなど質感重視、アシックスはメッシュやFlyteFoamなど最新素材。
- 履き心地：アシックスはサポート力と安定性、オニツカは軽さと柔らかさ。
このあたりを押さえておくと、店頭でもオンラインでも迷わず選びやすくなります。
世界的な評価と現在の立ち位置
アシックスは今も「世界を代表するランニングブランド」のひとつ。東京マラソンをはじめ、多くの大会の公式パートナーとして選ばれています。プロアスリートから一般ランナーまで、信頼性の高さは揺るぎません。
一方、オニツカタイガーは「日本発のファッションブランド」としてグローバルに展開中。
ミラノコレクションにも参加し、ヨーロッパでは“ラグジュアリー・スニーカー”として認知が広がっています。
つまり、ひとつの企業が「機能」と「デザイン」という両極の市場を、2つのブランドでカバーしている構図です。
どちらを選ぶ？目的別おすすめの選び方
もし「走る」「動く」「鍛える」ことを目的にするなら、迷わずアシックス。
足の負担を減らし、運動の質を高めてくれる実用的な相棒です。
一方、「街でおしゃれに履きたい」「スニーカーをファッションの一部にしたい」なら、オニツカタイガーが正解。
見た目も履き心地も軽やかで、ファッション感度の高い日常を演出してくれます。
どちらが優れているというより、“何に使いたいか”で選ぶのがポイントです。
オニツカタイガーとアシックスの違いを理解して、自分に合う一足を
オニツカタイガーとアシックスは、同じ企業が生んだ兄弟のようなブランドです。
どちらも「スポーツを通じて健やかに生きる」という精神を共有しながら、それぞれが異なる道を歩んできました。
アシックスは機能で、オニツカタイガーはデザインで、人々のライフスタイルを支えています。
もし両方の魅力を知ったうえで使い分けられれば、スポーツでもファッションでも、より快適で自分らしい毎日が過ごせるはずです。
自分の目的や好みに合わせて、「アシックス」か「オニツカタイガー」か――。
その違いを理解して選ぶことが、理想の一足との出会いにつながるでしょう。
