「オニツカタイガーってどこのブランドなの？」──そんな疑問を持つ人は少なくありません。おしゃれでありながらどこかクラシックな雰囲気を持つスニーカーとして、街中でも見かけることの多いオニツカタイガー。実は、そのルーツは日本にあります。この記事では、ブランドの誕生背景から世界で愛される理由、そして現在の展開までをじっくりと紐解いていきます。
日本・神戸で生まれたオニツカタイガーの原点
オニツカタイガーの始まりは、1949年（昭和24年）の神戸。創業者・鬼塚喜八郎氏が戦後の日本に「スポーツを通して若者を元気づけたい」という想いから、わずか数人の従業員とともに立ち上げたのが「鬼塚商会」でした。
当時の日本は戦争の爪痕が色濃く残り、物資も不足していた時代。そんな中で鬼塚氏は、スポーツを通じて人々の心を明るくしようと考え、機能的で丈夫なスポーツシューズの開発に取り組みます。その情熱こそが、後に世界的ブランドとなるオニツカタイガーの出発点でした。
戦後日本を変えた“初の国産スポーツシューズ”
オニツカタイガーの最初の大きな挑戦は、バスケットボールシューズの開発でした。当時の日本には競技用のバスケットシューズがほとんどなく、選手たちは滑りやすい靴でプレーを強いられていました。
鬼塚氏は、タコの吸盤から着想を得て滑りにくいソールを開発。試行錯誤の末に完成したシューズは、国内初の本格的なバスケットボールシューズとして注目を集めました。
この“発想力と観察力”こそがオニツカタイガーの象徴であり、のちにランニングやマラソン、バレー、テニスなど多様な競技向けシューズへと広がっていきます。
世界を変えた出会い──ナイキ誕生との関係
オニツカタイガーを語る上で欠かせないのが、アメリカとのつながりです。1960年代、アメリカの大学陸上コーチだったビル・バウワーマンと学生のフィル・ナイト（後のナイキ創業者）がオニツカタイガーの靴に感銘を受け、アメリカで販売を開始しました。
彼らが立ち上げた会社が、後の「ナイキ（NIKE）」となります。つまり、オニツカタイガーはナイキ誕生の原点とも言える存在なのです。このエピソードは、オニツカタイガーが単なる日本ブランドではなく、世界のスポーツ史に名を刻む重要なブランドであることを物語っています。
アシックス誕生とオニツカタイガーの一時的な幕引き
その後、スポーツ人口の増加とともに市場が拡大し、1977年に鬼塚株式会社は他社と合併して「アシックス（ASICS）」が誕生します。
この時、オニツカタイガーというブランド名はいったん表舞台から姿を消すことになりました。
しかし、この“休止”は終わりではなく、新たな進化の準備期間でもありました。アシックスとしての技術力・開発力を蓄えながら、ブランドの再生を待つ時間が静かに流れていたのです。
2000年代の復活──ファッションブランドとして再出発
2002年、オニツカタイガーは再び世界に姿を現します。
アシックスのライフスタイルラインとして復活したブランドは、往年のデザインを現代的にアップデート。スポーツの機能性を保ちつつ、ファッション性を高めた“街で履けるスニーカー”として再評価されました。
この復活劇の中心にあったのが、1960年代の名作「MEXICO 66」。
オニツカタイガーを象徴するクロスライン（サイドストライプ）が印象的なモデルで、当時の競技用シューズをベースにしながら、デイリーユースに最適なデザインへと進化しています。
世界中で愛される定番モデルとして、現在も人気が続いています。
“機能美”が息づくデザインと日本らしい美意識
オニツカタイガーの魅力は、なんといっても「機能性」と「美しさ」が両立している点にあります。
創業時から変わらないのは、見た目のデザインよりも“履き心地と性能”を優先するという哲学。その結果、無駄のないラインや薄底のフォルムなど、自然と洗練された美しさが生まれました。
特に、足の動きに合わせた柔軟なソール構造や、軽量化へのこだわりなどは、アスリート向けシューズの開発経験に裏打ちされたものです。
この「技術に裏づけられたデザイン性」こそ、オニツカタイガーが他のスニーカーブランドと一線を画す理由です。
世界で再評価された“日本ブランド”としての存在感
オニツカタイガーが世界で再び注目され始めたのは、2000年代後半から。
ストリートファッションやモードシーンで“日本的なミニマリズム”が注目される中、クラシックで品のあるスニーカーとしての魅力が再発見されました。
さらに、欧州を中心に展開した限定ライン「NIPPON MADE」は、日本の職人による繊細な仕立てと上質な素材使いが評価され、海外のセレクトショップでも高い人気を誇ります。
メイド・イン・ジャパンの精度とクラフトマンシップを体現するシリーズとして、ブランドの信頼性を高める重要な役割を果たしています。
ファッションブランドとしての進化とコラボレーション戦略
近年のオニツカタイガーは、スニーカーだけでなくアパレル・バッグ・アクセサリーなど幅広い商品展開を行っています。
特に注目されているのが、世界的デザイナーやアーティストとのコラボレーション。
「ANDREA POMPILIO」などのデザイナーコレクションをはじめ、音楽・アート・映画とのタイアップ企画も多数実施され、ファッションブランドとしての立ち位置を強化しています。
こうしたコラボは、ブランドの世界観を広げるだけでなく、「若い世代が自分のスタイルに取り入れやすい」きっかけにもなっています。
スポーツブランドの枠を超えた存在感は、まさに今のオニツカタイガーを象徴しています。
オニツカタイガーが世界で愛される理由
オニツカタイガーが多くのファンに支持される理由はいくつもあります。
- 日本発ブランドとしての誇り
戦後の混乱期に生まれ、努力と創意工夫で世界に名を広げた“日本のブランド”という背景が共感を呼びます。 - シンプルで飽きのこないデザイン
どんな服装にも馴染むミニマルなフォルムは、時代を超えて愛されています。 - 確かな品質と履き心地
長年培ったアシックスの技術力がベースにあり、快適さと耐久性の両立を実現。 - ブランドのストーリー性
スニーカーを通してスポーツ精神と日本文化を表現する姿勢が、多くの人の心を掴んでいます。 - 世界的な再評価
近年のファッションシーンでは、「レトロ×モダン」の代表格として高い評価を得ています。
このように、オニツカタイガーはただのスニーカーではなく、“日本の哲学と美意識を形にしたブランド”として世界中にファンを広げています。
これからのオニツカタイガー──未来への展望
オニツカタイガーは、創業から70年以上経った今も進化を続けています。
最新技術とクラフトマンシップを融合させた新モデルの開発や、環境配慮型素材の採用など、持続可能なブランド運営にも力を入れています。
また、グローバル展開においても、日本国内にとどまらずヨーロッパやアジア、北米など幅広い地域で店舗を展開。
「日本発のグローバルブランド」として、今後さらに存在感を高めていくことが期待されています。
オニツカタイガーはどこのブランド？その答えは“日本の誇り”
改めてまとめると、オニツカタイガーは日本・神戸で生まれたブランドです。
戦後の日本を元気づけたいという創業者の想いから始まり、スポーツシューズとして世界に羽ばたき、今ではファッションとライフスタイルを融合したグローバルブランドへと成長しました。
その根底にあるのは、常に「人のための靴を作る」というシンプルな信念。
履き心地の良さ、美しいデザイン、そしてブランドが持つストーリー。
これらすべてが調和した結果、オニツカタイガーは今もなお世界で愛され続けています。
日本が世界に誇るスニーカーブランド──それが、オニツカタイガーです。
