「あ、今日はお座敷だった……」
飲み会や訪問先で、玄関を目の前にしてヒヤッとしたことはありませんか?脱ぎ履きにもたついて後ろに大渋列を作ってしまったり、脱ぎ方が雑で大切な革靴のかかとを傷めてしまったり。
革靴の脱ぎ方は、単なる動作ではありません。それは、大人の余裕を感じさせる「マナー」であり、お気に入りの一足を10年先まで履き続けるための「技術」でもあります。
今回は、意外と教わることがない「革靴の正しい脱ぎ方」について、玄関先で恥をかかないための作法から、靴を長持ちさせるプロ直伝のコツまで徹底的に解説します。今日からあなたの足元が変わる、一生モノの習慣を身につけましょう!
なぜ「脱ぎ方」ひとつで信頼が変わるのか
ビジネスの場において、足元は驚くほど見られています。ピカピカに磨かれた靴を履いていても、脱ぎ方が乱暴であれば「モノを大切にしない人」「細かい配慮が欠けている人」という印象を与えかねません。
逆に、サッとスマートに靴を脱ぎ、美しく揃えることができれば、それだけで「この人は仕事も丁寧だろうな」という信頼感につながります。玄関先での数秒の振る舞いが、あなたの第一印象を決定づけると言っても過言ではありません。
また、革靴は非常にデリケートな構造をしています。間違った脱ぎ方を繰り返すと、数万円した靴でもあっという間に形が崩れ、寿命を迎えてしまいます。自分自身の品格を守り、大切な相棒である靴を守るために、正しい知識をアップデートしていきましょう。
玄関で慌てない!マナーとしての正しい手順
まずは、訪問先や飲食店で絶対に外さない「作法」としての脱ぎ方を確認しましょう。ポイントは「お尻を向けない」ことと「手を使う」ことです。
1. 正面を向いたまま上がる
玄関でいきなり後ろを向き、お尻を突き出しながら靴を脱ぐのはマナー違反です。これは出迎えてくれた相手に対して失礼にあたります。まずは相手に向かって挨拶をし、正面を向いたまま(家の中を向いたまま)靴を脱いで、上がり込みましょう。
2. 上がってから向きを変えて揃える
室内へ一歩上がったら、そこで初めて体の向きを変えます。あるいは、膝をついて姿勢を低くし、手を使って靴を180度回転させます。
3. 出口に向けて端に寄せる
靴のつま先を外(出口)に向け、玄関の端、または「下座」と呼ばれる入り口から遠い方の隅に揃えて置きます。真ん中に堂々と置くのではなく、次に通る人の邪魔にならないよう配慮するのがスマートな大人の振る舞いです。
靴を傷めないための「3つの絶対ルール」
マナーが完璧でも、脱ぎ方が荒ければ靴は泣いています。革靴の寿命を2倍、3倍に延ばすための物理的なテクニックをご紹介します。
ルール1:靴紐は必ず緩める
これが最も重要であり、最も守られていないルールです。紐を結んだまま無理やり足を引っこ抜くのは、履き口の革を引き裂こうとしているのと同じです。
- ハト目(紐を通す穴)の上から2〜3段分をしっかり緩めましょう。
- 足首周りに余裕を作ることで、革へのストレスを最小限に抑えられます。
ルール2:手を使って「かかと」を支える
「足だけで脱ぐ」のは言語道断です。片方の足でもう片方のかかとを押さえて脱ぐと、革同士が擦れて傷がつくのはもちろん、かかと部分に入っている「月型芯(カウンター)」という重要な芯材が折れてしまいます。
- 必ず手を使って、かかとを優しく包むようにして抜き取ります。
- 手が汚れるのが気になる方は、脱いだ後にサッと手を拭けるようハンカチやウェットティッシュを忍ばせておくと完璧です。
ルール3:できるだけ腰を下ろす
片足立ちでバランスを崩しながら脱ごうとすると、どうしても靴に無理な力がかかります。
- 玄関にベンチや段差がある場合は、遠慮なく腰を下ろしましょう。
- 安定した状態で脱ぐことで、所作がより美しく、靴への負担も少なくなります。
脱いだ後の「1分」が靴の運命を分ける
靴を脱いで「終わり」ではありません。脱いだ直後に行うケアこそが、翌朝の靴の状態を左右します。
10秒のブラッシング習慣
脱いだ直後の革は、体温で温まり毛穴が開いたような状態になっています。ここにホコリが入り込むと、革の水分を奪い、ひび割れの原因になります。
- 馬毛ブラシ馬毛ブラシを使って、表面のホコリをサッと払いましょう。
- これだけで、カビの発生率や革の劣化速度が劇的に変わります。
シューキーパーは「少し経ってから」
型崩れを防ぐために必須のシューキーパー木製シューキーパーですが、脱いですぐに入れるのは避けましょう。
- 脱ぎたての靴の中は汗で湿っています。
- 30分〜1時間ほど放置して湿気を逃がしてからセットすることで、除湿と型崩れ防止の両立が可能になります。
よくあるトラブルと解決策
「わかってはいるけれど、こんな時はどうすればいい?」という疑問にお答えします。
Q. 靴がキツくて、手を使ってもなかなか抜けない
サイズがぴったりすぎる、あるいは足がむくんでいる可能性があります。そんな時は、無理に引っ張らず、足の甲の部分を左右から軽く揉むようにして、靴の中に空気を入れるイメージで少しずつ動かしてください。また、日頃からデリケートクリームデリケートクリームを塗って革を柔らかく保つことも有効です。
Q. 下足番がいる高級店ではどうする?
料亭などで靴を預かってくれるスタッフ(下足番)がいる場合は、自分で向きを変える必要はありません。正面を向いて脱ぎ、そのまま室内へ上がりましょう。スタッフの方が最も扱いやすい状態で残しておくのが、その場に慣れた人の作法です。
まとめ:革靴の正しい脱ぎ方を習慣にして一流の足元へ
革靴の脱ぎ方を意識することは、自分自身の振る舞いを整えることと同じです。
正面を向いて脱ぎ、手を使って丁寧に揃える。一見面倒に思えるこの動作の積み重ねが、あなたの愛用する靴を「ボロボロの消耗品」から「味わい深い相棒」へと進化させてくれます。
今日、家に帰ったその瞬間から。あるいは明日、大切な誰かの家を訪ねるその時から。今回お伝えしたポイントを一つずつ実践してみてください。丁寧な脱ぎ方が身についた時、あなたのビジネスマンとしての信頼も、靴の輝きも、より一層増していくはずです。
「革靴の正しい脱ぎ方」をマスターして、どこへ行っても恥ずかしくない、自信に満ちた足元を手に入れましょう!


