「せっかく奮発して買った革靴なのに、数回履いただけで足が痛くなってしまった……」
「お気に入りの一足が、気づけばボロボロ。どうすれば長く履き続けられるんだろう?」
ビジネスパーソンにとって、革靴は単なる履物ではなく、自分を映す鏡のような存在です。しかし、正しい履き方を知らないまま使い続けていると、足にダメージを与えるだけでなく、靴そのものの寿命を驚くほど縮めてしまいます。
実は、革靴には「スニーカーとは全く違うルール」が存在します。その基本をマスターするだけで、不快な靴擦れから解放され、一つの靴を10年、20年と愛用することも可能になるのです。
今回は、革靴を愛するすべての方へ向けて、足を守り、靴を最高の状態に保つための「正しい履き方」の全知識を徹底解説します。
1. 寿命を縮める「NGな履き方」を卒業しよう
まず最初に、私たちが無意識にやってしまいがちな「革靴のNG習慣」をチェックしてみましょう。心当たりがある方は、今日から意識を変えるだけで靴の持ちが劇的に変わります。
靴べらを使わずに足を押し込む
急いでいるとき、つい靴べらを使わずに指を差し込んだり、無理やり足を押し込んだりしていませんか?これは革靴にとって「致命傷」になりかねません。
革靴のかかと部分には、形を維持するための「ヒールカウンター」という芯材が入っています。ここを無理に潰してしまうと、二度と元の形には戻りません。かかとが型崩れした靴は、足を固定する力を失い、歩くたびにパカパカと浮いて深刻な靴擦れを引き起こします。
紐を縛ったまま脱ぎ履きする
「面倒だから」と、紐を緩めずに足を出し入れするのも避けましょう。
無理に足を出し入れすることで、履き口の革が過剰に引っ張られ、糸のほつれや革の裂けを招きます。また、常に紐が締まった状態だと、足の甲に合わせた適切なフィット感が得られず、血行不良や痛みの原因にもなります。
2. 足を痛めない「正しい履き方」の3ステップ
では、具体的にどのように履くのが正解なのでしょうか。明日から実践できる、3つのステップをご紹介します。
ステップ1:必ず靴べら(シューホーン)を使う
座った状態、あるいは立った状態で、靴べらをかかとの後ろに垂直に差し込みます。足を滑り込ませるように入れることで、かかとの芯材を傷めずにスムーズに履くことができます。
外出先でも使える携帯用の靴べら 携帯用をカバンに忍ばせておくと、スマートに靴を履くことができ、立ち振る舞いも美しく見えます。
ステップ2:かかとを地面に軽く打ち付け、位置を固定する
足を入れたら、つま先を浮かせてかかとを軽く地面にトントンと打ち付けます。
革靴は「かかと」で履くものです。かかとを靴の後方にぴったり合わせることで、靴の中で足が前後に動くのを防ぎ、つま先の「捨て寸(余裕)」を正しく確保できます。
ステップ3:紐を「一穴ずつ」締めて結ぶ
かかとを合わせた状態をキープしながら、つま先側の紐から順番に適度な強さで引き上げていきます。最後に羽根(紐を通す部分)が左右対称になるように整えて結びます。
毎回結び直すことで、その日の足のむくみ具合に合わせた最適なフィット感を作ることができ、歩行時の疲れを最小限に抑えられます。
3. 靴擦れを防ぐ!自分にぴったりの「結び方」と調整術
「靴のサイズは合っているはずなのに、どうしても痛い」という場合は、紐の結び方を変えるだけで解決することがあります。
疲れにくい「パラレル結び」
ビジネスシーンで最も推奨されるのが「パラレル」です。
紐が平行に並ぶ見た目の美しさだけでなく、圧力が甲全体に均等に分散されるため、締め付けによる痛みが軽減されます。長時間のデスクワークや立ち仕事でも足が疲れにくいのがメリットです。
ホールド力を高める「オーバーラップ」
歩くときにかかとが浮きやすい方は、紐を上から下へ通す「オーバーラップ」がおすすめです。
しっかりとしたホールド感が得られ、靴の中で足が遊ぶのを防いでくれます。靴擦れの原因の多くは「靴と足の摩擦」ですから、固定力を高めることは非常に有効な対策になります。
厚手の靴下やインソールでの調整
もし全体的に緩みを感じる場合は、厚手の靴下を履くか、インソール 革靴用を活用してみましょう。
特に土踏まずをサポートするタイプのインソールを入れると、足裏のアーチが安定し、指先が靴の先端に当たるのを防いでくれます。
4. 革靴を10年持たせるための「休息」と「湿気対策」
革靴の最大の敵は、実は「履くこと」そのものではなく、足から出る「湿気」です。
「1日履いたら2日休ませる」が鉄則
人間は1日にコップ1杯分の汗をかくと言われています。その水分を吸収した革は非常にデリケートな状態になっており、そのまま翌日も履き続けると、革の組織がボロボロになり、雑菌が繁殖して強烈な臭いの原因になります。
最低でも3足の革靴を用意し、ローテーションさせるのが理想です。しっかり乾燥させる時間を作るだけで、靴の寿命は数倍に跳ね上がります。
シューキーパーは必須アイテム
脱いだ後の靴には、必ずシューキーパー 木製を入れましょう。
履きシワをピンと伸ばすことで、革のひび割れを防ぎます。特に木製のものは、靴内部の湿気を吸い取り、天然の防臭・防菌効果も期待できるため投資価値が非常に高いアイテムです。
5. 帰宅後3分のデイリーケアで輝きをキープ
本格的な靴磨きを頻繁に行う必要はありませんが、毎日の「ちょっとした習慣」が大きな差を生みます。
ブラッシングで埃を払う
帰宅したら、まずは馬毛ブラシで全体をサッとブラッシングしましょう。
目に見えない埃や塵は、革の水分や油分を奪い取る性質があります。これを放置すると革が乾燥し、曲がる部分からバキッと割れてしまう「クラック」の原因になります。
雨に濡れた時の緊急対応
もし雨に濡れてしまったら、まずは乾いた布で水分を拭き取り、中に新聞紙やキッチンペーパーを詰めます。
このとき、絶対にドライヤーで乾かしてはいけません。急激な熱は革を硬化させ、修復不可能なダメージを与えます。風通しの良い日陰で、じっくり時間をかけて乾かすのが正解です。
仕上げに、乾燥で失われた水分をデリケートクリームで補給してあげれば完璧です。
6. 革靴の正しい履き方を知れば、仕事の質も変わる
「足元を見る」という言葉がある通り、整えられた革靴は周囲に信頼感を与えます。しかしそれ以上に、正しい履き方をマスターすることは、自分自身の身体を労わり、道具を大切にするというプロフェッショナルな姿勢の表れでもあります。
最初は「毎回紐を結び直すなんて面倒だ」と感じるかもしれません。しかし、その数十秒の積み重ねが、夕方の足の軽さを変え、数年後の靴の佇まいを変えていきます。
最後に、これだけは覚えておいてください。
- 靴べらを使い、かかとを守る。
- 紐を毎回結び直し、足を固定する。
- しっかり休ませ、湿気を逃がす。
この基本さえ守れば、あなたの革靴は最高の相棒として、長く、力強くあなたの歩みを支えてくれるはずです。
もし、今履いている靴が少し疲れているように見えたら、まずはブラッシングから始めてみませんか?お気に入りの一足に手をかける時間は、自分自身を整える特別なひとときになるはずです。
正しい知識を身につけて、ぜひ明日から「革靴の正しい履き方」で、清々しい一歩を踏み出してください。


