「お気に入りの茶色の革靴があるけれど、最近出番が少なくなってきたな」「冠婚葬祭に履いていける黒い靴が必要だけど、新しく買うのはもったいない……」
そんな悩みを持っているあなたに、ぜひ知ってほしい解決策があります。それが「革靴の染め替え」です。
実は、革靴は自分で、あるいはプロの手を借りることで、見違えるような「黒」に生まれ変わらせることができます。今回は、革靴を黒に染め替えるための具体的な手順や必要な道具、気になる費用相場、そして絶対に失敗しないためのコツを、どこよりも詳しくお届けします。
なぜ「黒」への染め替えが選ばれるのか?
革靴の色のなかでも、黒は特別な存在です。ビジネスシーンはもちろん、フォーマルな場でも「黒のストレートチップ」があれば間違いありません。
茶色やネイビーの靴を黒く染め替えることには、単なる色変え以上のメリットがあります。まず、黒は最も色が濃いため、落としきれないシミや傷跡をきれいに隠してくれます。また、トレンドに左右されないため、一足の靴をさらに10年、20年と履き続けるための「究極のメンテナンス」とも言えるのです。
ただし、適当に色を塗ればいいというわけではありません。革の質感を生かしつつ、美しく仕上げるためには正しい知識が必要です。
セルフで挑戦!革靴を黒に染めるための完全ガイド
「自分で染めてみたい!」という方のために、失敗しないセルフ染め替えのステップを解説します。まず準備すべきは、適切な「染料」と「脱脂剤」です。
必要な道具を揃える
セルフ染め替えで最も愛用されているのが、サフィールのサフィール ダイフレンチリキッドです。浸透力が非常に高く、革の風合いを損なわずに芯まで黒く染め上げることができます。
また、より手軽に入手できるものとして、SEIWAのローパススピランも有名です。これらは「染料」と呼ばれ、革の繊維に色が染み込むタイプなので、表面がパリパリと割れる心配が少ないのが特徴です。
さらに、元の靴のワックスや仕上げ剤を落とすために、強力なクリーナーであるアセトン、または専用のリカラーボードを用意してください。これがないと、せっかくの染料が革に弾かれてしまいます。
ステップ1:徹底的な「脱脂」が成功の9割
染め替えにおいて、最も重要な工程は色を塗ることではなく「落とすこと」です。
まず、靴紐を外し、シューキーパーを入れて形を整えます。次に、ウエスにサフィール レノマットリムーバーやアセトンを含ませ、表面のクリームやワックスをゴシゴシと拭き取ってください。
革の表面から艶が消え、少しカサついたような状態になれば準備完了です。ここで手を抜くと、後で色が剥がれる原因になるので、念入りに行いましょう。
ステップ2:マスキングで汚れを防ぐ
靴のコバ(ソールの縁)や、内側のライニング部分に色が付かないよう、マスキングテープで保護します。特に内側は、染料がつくと靴下に色が移ってしまうため、丁寧な養生が欠かせません。
ステップ3:染料を薄く、何度も重ねる
いよいよ染色の工程です。スポンジや筆を使い、染料を塗っていきます。
ここでの鉄則は「一度に真っ黒にしようとしないこと」です。最初はムラになっても構いません。1回目は薄く塗り広げ、しっかり乾燥させます。乾いたら2回目、3回目……と重ねていくことで、深みのある美しい黒に仕上がります。
細かいステッチの隙間や、革が重なっている部分は、細い筆を使って丁寧に塗りつぶしていきましょう。
ステップ4:色止めと仕上げ
染料が完全に乾いたら(丸一日は置くのが理想です)、仕上げに「色止め」を行います。サフィール ストップカラーなどを使用すると、服や肌への色移りを防ぐことができます。
最後に、通常の靴磨きと同じようにサフィールノワール クレム1925などの黒い靴クリームで栄養を補給し、磨き上げれば完成です。
プロに頼むとどうなる?費用相場とメリット
「失敗して大切な靴を台無しにしたくない」「自分でするのは面倒」という方は、靴修理の専門店に依頼するのがベストです。
費用と納期の目安
業者に依頼する場合、一般的な短靴(ビジネスシューズ)であれば、費用の相場はおおよそ10,000円から18,000円程度です。ブーツなど面積の広い靴になると、15,000円から25,000円ほどかかる場合もあります。
納期は、革の状態を見極めながら乾燥させる必要があるため、3週間から1ヶ月程度が一般的です。「来週の結婚式に使いたい!」と思ってもすぐには仕上がらないので、余裕を持って相談しましょう。
プロの技術が光るポイント
プロの業者は、単に色を塗るだけでなく、革の「銀面(表面)」の状態を診断し、必要に応じてヤスリ掛けや下地処理を完璧に行います。また、ステッチ(糸)を染め残す、あるいはステッチまで真っ黒に染め上げるといった細かいリクエストにも対応してくれます。
染め替えができない靴・注意すべき素材
残念ながら、どんな靴でも染め替えられるわけではありません。以下の素材はセルフでの作業が難しく、プロでも断られるケースがあります。
- エナメル革: 表面が樹脂でコーティングされているため、染料が浸透しません。
- ガラスレザー: 樹脂層が厚いため、色を乗せても剥がれやすいのが難点です。
- 合成皮革(合皮): 本革ではないため、染料を使うと表面が溶けたり劣化したりします。
- 起毛素材(スエード・ヌバック): 専用の染料が必要であり、仕上がりの質感が変わりやすいため難易度が非常に高いです。
自分の靴がどの素材か分からない場合は、無理をせずエム・モゥブレィ ステインリムーバーなどで軽く表面を拭いてみて、水気が染み込むかどうかを確認してみてください。
染め替え後のメンテナンスで美しさを維持する
黒く染め替えた後の靴は、実は通常の黒い靴よりも少しだけ繊細です。
特に最初の数ヶ月は、雨の日の着用を避けるのが無難です。雨に濡れると、革の奥に残った染料が染み出し、靴下を黒く染めてしまうことがあるからです。定期的にコロニル 1909 シュプリームプロテクトスプレーなどの防水スプレーをかけ、表面を保護することを忘れないでください。
また、色が薄くなってきたと感じたら、補色効果の高いコロンブス アドカラーや黒のクリームで定期的にお手入れをすることで、染めたての鮮やかさをキープできます。
革靴の染め替えで黒にする方法!セルフの手順や業者の費用相場・失敗しないコツまとめ
思い出の詰まった革靴を黒く染め替えることは、その靴に新しい命を吹き込む素晴らしい体験です。
自分で道具を揃えてじっくりと革と向き合う時間は、靴への愛着をさらに深めてくれるでしょう。一方で、確実な仕上がりを求めるなら、プロの職人に委ねるのも賢い選択です。
- セルフならサフィール ダイフレンチリキッドなどの高品質な染料を選ぶこと。
- 何よりも「脱脂」の工程を丁寧に行うこと。
- 費用は1万円〜、納期は1ヶ月程度を予算に入れておくこと。
このポイントさえ押さえておけば、あなたの足元は見違えるほどエレガントに生まれ変わります。
もし、下駄箱に眠っている茶色の靴があるなら、ぜひ今回の「革靴の染め替えで黒にする方法」を参考に、新たな一歩を踏み出してみてください。きっと、今まで以上にその靴を履くのが楽しくなるはずです。


