せっかく新調したお気に入りの革靴。意気揚々と履き出したのはいいものの、歩き始めて数分で「かかとが痛い……」と顔をしかめた経験はありませんか?あるいは、ふと自分の後ろ姿を鏡で見たときに、革靴のかかとが斜めに無残に削れていてショックを受けたことはないでしょうか。
革靴の「後ろ」に関する悩みは、ビジネスマンにとって永遠の課題とも言えます。後ろ姿はその人の清潔感や仕事への姿勢を雄弁に物語るパーツです。ここがボロボロだったり、痛みをこらえて引きずりながら歩いていたりしては、せっかくのスーツ姿も台無しですよね。
今回は、革靴の後ろ側で起きる「痛み」「削れ」「型崩れ」といったトラブルの原因を徹底的に掘り下げます。あわせて、今日から実践できる対策や、愛用の一足を長く履き続けるためのメンテナンス術についても詳しく解説していきます。
なぜ新品の革靴は後ろから痛くなるのか?その正体とメカニズム
新しい靴を履いたとき、かかとが赤く腫れたり皮が剥けたりする「靴擦れ」。あの鋭い痛みは本当に辛いものです。なぜ、スニーカーではあまり起きないトラブルが、革靴ではこれほど頻繁に起こるのでしょうか。
最大の理由は、革靴の構造にあります。革靴のかかと部分には、靴の形状を維持するために「月型芯(つきがたしん)」という硬い補強材が入っています。これがしっかりしているおかげで、革靴はカチッとした美しいフォルムを保てるのですが、新品の状態ではこの芯がまだ足の形に馴染んでいません。
硬い芯が歩行時の足の動きに追従せず、皮膚と激しく摩擦を起こすことで靴擦れが発生します。また、革そのものが乾燥して硬くなっている場合も、足への攻撃性が増してしまいます。
もう一つの大きな原因は「サイズ選び」です。大きすぎる靴を履いていると、歩くたびにかかとが上下に動き、摩擦の回数が増えてしまいます。逆に小さすぎると、常に圧迫された状態になり、血行不良や痛みが生じます。
かかとの痛みを即効で解決する「攻め」と「守り」の対策
「痛いけれど、明日もこの靴を履かなければならない」。そんな時に役立つ、具体的な対策をご紹介します。
まずは靴を柔らかくする「攻め」のアプローチです。革を柔軟にするためにはデリケートクリームを塗り込むのが最も効果的です。これをかかとの内側に塗り、指で優しく揉みほぐしてみてください。これだけで、肌当たりが驚くほどマイルドになります。
次に、物理的に足を保護する「守り」のアプローチです。靴側にヒールグリップのようなクッション材を貼り付けることで、隙間を埋めつつ摩擦をダイレクトに抑えることができます。
また、意外と見落としがちなのが「靴紐」です。靴紐を緩めたまま履いていると、靴の中で足が前後に遊んでしまい、かかとの靴擦れを誘発します。羽根がしっかり閉まるまで紐を締め上げることで、足と靴が一体化し、痛みが出にくくなります。
革靴の後ろが斜めに削れる!これって異常?
自分の靴を後ろから見たとき、外側が斜めに削れているのを見て「歩き方がおかしいのかな?」と不安になる方は多いでしょう。しかし、安心してください。かかとの外側がわずかに削れるのは、実は人間として「正常な歩き方」ができている証拠でもあります。
人間は歩行時、かかとの外側から着地し、足裏の外縁を通って親指の付け根へと重心を移動させていきます。これを「あおり歩行」と呼びます。そのため、かかとの外側が一番先に摩耗するのは理にかなっているのです。
問題なのは、その「削れ方」の度合いです。まだ数回しか履いていないのに数ミリも削れている、あるいは逆に内側だけが極端に削れている場合は、姿勢や歩行バランスに問題があるかもしれません。
内側が削れる場合は「内股」や「偏平足」の傾向があり、足のアーチが潰れてしまっている可能性があります。また、極端な外側の削れは、ガニ股や、靴のサイズが大きすぎて足を引きずって歩いていることが原因であることが多いです。
かかとの寿命を延ばすために。修理のタイミングを見極める
革靴の寿命は、かかとのメンテナンス次第で決まると言っても過言ではありません。かかとの底部分は「トップリフト」と呼ばれる交換可能なパーツになっています。
修理に出すベストなタイミングは、トップリフトのゴム部分が残り2〜3ミリになったときです。これを過ぎて、土台となる「積み上げ(木の部分)」まで削れが進んでしまうと、修理費用が高額になるだけでなく、靴全体のバランスも崩れてしまいます。
最近では、自宅で簡単に補修できる靴底補修剤も人気です。削れた部分に肉盛りをするように塗布するだけで、延命処置が可能です。ただし、見た目の美しさを重視するなら、やはりプロの靴修理店に持ち込むのが一番でしょう。
また、内側のライニング(裏地)が擦り切れて穴が開いてしまった場合も、「すべり革」という修理メニューで、新しい革を上から貼って補強することができます。後ろからの見た目だけでなく、中身をケアすることも長く履き続ける秘訣です。
型崩れを防ぐ「魔法の杖」と絶対NGな履き方
革靴の後ろ側のシルエットを美しく保つために、絶対に守ってほしいルールが一つあります。それは「必ず靴べらを使うこと」です。
急いでいるとき、つい指を突っ込んで強引に履いたり、かかとを踏んでしまったりしていませんか?革靴のかかとの芯(月型芯)は、一度折れてしまうと元に戻すことができません。芯が潰れた靴はホールド力が失われ、歩きにくくなるだけでなく、見た目も一気にだらしなくなってしまいます。
外出先でもスマートに履けるよう、携帯用靴べらをカバンや鍵に付けて持ち歩くことを強くおすすめします。
そして、家に帰ったらすぐにシューキーパーを入れましょう。1日履いた靴は足の汗で湿っており、そのまま放置すると乾燥する過程で革が反り返ったり、シワが定着したりしてしまいます。木製のシューキーパーなら、除湿と型崩れ防止を同時に行ってくれるため、後ろから見たときのフォルムをいつまでも新品のようにキープできます。
歩き方を少し意識するだけで、靴はもっと美しくなる
道具に頼るだけでなく、自分自身の「歩き方」をアップデートすることも大切です。
かかとを引きずって「シャカシャカ」と音を立てて歩いていませんか?これは、腹筋を使わずに足先だけで歩いているサインです。
正しい歩き方のコツは、視線を少し上げ、みぞおちから足が生えているようなイメージで、股関節から大きく脚を出すことです。膝を伸ばしてかかとから静かに着地し、足の裏全体で地面を転がすように意識してみてください。
これだけで、かかとへの衝撃が分散され、削れの進行を遅らせることができます。さらに、背筋が伸びることでスーツの着こなしも一段と格好良く見えるようになります。
まとめ:革靴の後ろが痛い・削れる原因は?かかとの靴擦れ対策と寿命を延ばす修理・手入れ術
革靴は、メンテナンス次第で10年、20年と寄り添ってくれる人生のパートナーになります。
「後ろ」という、自分では見えにくい場所だからこそ、そこへの気遣いが大人の余裕を感じさせます。痛みを我慢せず、適切なグッズでケアをすること。削れすぎる前に修理に出すこと。そして、靴べらを使って丁寧に履くこと。
これらの小さな積み重ねが、あなたの足元を常に輝かせ、周囲からの信頼へと繋がっていくはずです。
もし今、玄関にある靴のかかとが悲鳴を上げているなら、まずは靴クリーナーで汚れを落とし、状態をチェックすることから始めてみてください。お気に入りの一足と、もっと遠くまで、もっと快適に歩いていきましょう。


