せっかく手に入れた憧れの革靴。箱を開けた瞬間のあの高揚感、たまらないですよね。でも、ちょっと待ってください。その靴、そのまま明日から履き始めようとしていませんか?
「新品なんだから、今が一番最高の状態でしょ?」と思われがちですが、実はそこに大きな落とし穴があります。実は、手元に届いたばかりの革靴は、砂漠のようにカラカラに乾いていることが多いんです。
そこで重要になるのが「プレメンテ(プレメンテナンス)」です。今回は、大切な相棒を10年、20年と愛用するために欠かせない、プレメンテの真実と正しい手順を、初心者の方にも分かりやすくお伝えしていきます。
なぜ新品なのに手入れが必要?「プレメンテ」をすべき本当の理由
「新品=完璧な状態」という思い込みは、今日で卒業しましょう。なぜ新品の革靴にプレメンテが必要なのか、それには明確な理由が3つあります。
まず1つ目は、製造から手元に届くまでの「空白の期間」です。
革靴は工場で作られてから、船に揺られて運ばれ、倉庫や店頭で長い間眠っています。海外ブランドならなおさらです。その間、革は一切の栄養補給を受けられません。手元に来たときには、革の油分と水分が抜けきってしまっていることがほとんどなのです。
2つ目は、「履きジワ」によるダメージを最小限にするためです。
乾燥して硬くなった革に、いきなり足の重みを乗せてグイッと曲げたらどうなるでしょうか。柔軟性がないため、シワが深く入りすぎてしまい、最悪の場合はその部分がピキッと割れる「クラック」を引き起こします。事前に水分を与えて革を柔らかくしておくことで、しなやかで美しいシワを刻むことができるようになります。
3つ目は、初期の「靴擦れ」を防ぐためです。
デリケートクリームなどで内側の革までケアしてあげると、足当たりが劇的にソフトになります。プレメンテは、靴のためだけでなく、あなたの足を守るための儀式でもあるのです。
プレメンテを始める前に!最低限揃えておきたい道具たち
「道具を揃えるのが大変そう……」とハードルを感じる必要はありません。まずは基本のセットがあれば十分です。こだわりの道具を少しずつ買い足していくのも、革靴ライフの醍醐味ですからね。
まずは、ホコリを払うための「馬毛ブラシ」を用意しましょう。毛足が長くて柔らかいものが理想的です。
次に、革をリセットするためのクリーナーです。M.モゥブレィ ステインリムーバーのような、水溶性のマイルドなものがあると安心ですね。
そして、プレメンテの主役とも言えるのが、水分をたっぷり含んだ「デリケートクリーム」です。革に深く浸透して柔軟性を与えてくれます。
さらに、栄養と光沢を出すための「乳化性クリーム」も必須です。自分の靴の色に合わせたもの、もしくは汎用性の高い無色(ニュートラル)を選びましょう。
クリームを馴染ませるには、コシの強い「豚毛ブラシ」が必要です。仕上げには、古いTシャツの端切れでも構いませんが、専用の「ポリッシングクロス」があると作業効率がぐんと上がります。
実践!新品の革靴を蘇らせるステップバイステップ
それでは、具体的なプレメンテの手順を解説していきます。ゆっくり時間を取れる週末などに、靴との対話を楽しみながらやってみてください。
1. 靴紐をすべて外す
まずはここからです。面倒に感じるかもしれませんが、紐を外さないと、羽根の重なり部分やタン(舌革)の乾燥をケアできません。新品の状態を隅々までチェックする絶好の機会でもあります。
2. 馬毛ブラシでブラッシング
工場での製造過程や輸送中についた目に見えない細かなホコリを落とします。力を入れず、サッサッとはらうようなリズムで全体をブラッシングしましょう。
3. 古いクリームをリセットする
これが意外と重要です。新品の靴には、出荷時のツヤ出しとしてワックスが塗られていることがありますが、これが酸化して固まっている場合があります。クリーナーを少量布に取り、優しく拭き取ってください。一度「スッピン」の状態に戻してあげることで、次に塗るクリームの浸透が格段に良くなります。
4. デリケートクリームで深層保湿
いよいよ保湿です。指に少量のデリケートクリームを取り、革に直接塗り込んでいきます。手の体温でクリームが溶け、革の繊維の奥まで染み込んでいくのが分かるはずです。
このとき、靴の外側だけでなく「内側(ライニング)」にも塗るのがプロの技。内側を保湿することで革がしなりやすくなり、履き始めの痛みが驚くほど軽減されます。
5. 乳化性クリームで栄養と蓋をする
デリケートクリームで入れた水分が逃げないよう、乳化性クリームで膜を作ります。お米の粒2〜3個分くらいを少量ずつ、全体に薄く伸ばしていきましょう。塗りすぎはベタつきの元なので、「ちょっと足りないかな?」くらいで十分です。
6. 豚毛ブラシで叩き込む
クリームを塗っただけでは、まだ表面に乗っている状態です。豚毛ブラシを使い、シャカシャカと力強くブラッシングしてください。この摩擦熱と振動によって、クリームが毛穴の奥まで押し込まれます。
7. 乾拭きで仕上げ
最後にクロスで全体を拭き上げます。余分なクリームを取り除くことで、上品なツヤが生まれます。表面がさらさらになれば完了です。
作業が終わったら、できればその場ですぐに履かず、一晩寝かせてあげてください。成分が革にしっかり定着し、翌朝には見違えるほどしなやかな状態になっているはずです。
差がつくポイント!ソールとシワ入れの裏技
アッパーのケアが終わったら、さらに一歩進んだメンテナンスをしてみませんか?
もしあなたの靴が「レザーソール(革底)」なら、ソール専用のコンディショナーを塗っておくのがおすすめです。サフィール ソールガードなどを使って保湿しておくと、底の返りが良くなり、歩きやすさが向上します。また、摩耗を抑える効果もあります。
さらに、靴好きの間で行われる「儀式」に「シワ入れ」というものがあります。
プレメンテで革が柔らかくなった状態で、実際に足を入れて、ペンなどをシワが入る予定の場所に当てながら、ゆっくりと一歩踏み出します。こうすることで、左右対称の美しいシワを意図的に作ることができます。
ただ、これは失敗すると戻せないので、まずは自然なシワを楽しみたい方は、プレメンテ後の柔軟な状態で歩き始めるだけで十分ですよ。
革靴のプレメンテ完全ガイド!新品の寿命を延ばす正しい方法と必要な道具を徹底解説・まとめ
いかがでしたか?「新品をいきなり磨く」という行為には、実は深い愛情と合理的な理由が詰まっています。
プレメンテを行うことで、以下のようなメリットが手に入ります。
- 革のひび割れを防ぎ、寿命が数倍に延びる
- 履き始めの靴擦れリスクを最小限に抑える
- 自分だけの美しい履きジワを刻むことができる
- 靴の状態を把握し、トラブルに早く気づける
コロニル 1909 シュプリームクリームデラックスのような高品質なクリームを一つ持っておくだけでも、あなたの革靴ライフはもっと豊かになります。
道具を揃え、静かな夜に新しい靴と向き合う時間は、大人の嗜みとしてとても贅沢なものです。これから共に歩む相棒に「これからよろしく」と挨拶するような気持ちで、ぜひプレメンテを楽しんでみてください。
そのひと手間が、数年後の靴の表情を劇的に変えてくれるはずです。さあ、あなたも最高の状態で、新しい一歩を踏み出しましょう!


