「冬の山に挑戦してみたいけれど、今持っているトレッキングシューズでそのまま行けるのかな?」
そんな疑問を抱いている方は多いはずです。白銀の世界を歩くスノーハイクは、夏山とは全く違う感動を与えてくれますが、一歩間違えれば命に関わるリスクも潜んでいます。
結論からお伝えすると、一般的なトレッキングシューズで雪山に行けるかどうかは「山の条件」と「装備の組み合わせ」次第です。しかし、そこには明確な「境界線」が存在します。
今回は、雪山におけるトレッキングシューズの活用範囲から、専用の冬用登山靴との決定的な違い、そして絶対に失敗しないための選び方まで、初心者の方にも分かりやすく丁寧に解説していきます。
雪山でトレッキングシューズはどこまで通用するのか
雪山と一言で言っても、平坦なスノーハイクから本格的な岩稜帯まで様々です。手持ちのトレッキングシューズが活躍できるのは、主に「積雪が少なく、傾斜の緩やかな低山」に限られます。
例えば、都心からアクセスの良い高尾山や、雪がうっすらと積もった程度の整備されたハイキングコースであれば、防水仕様のトレッキングシューズでも対応可能です。ただし、その場合も「靴単体」では不十分。滑り止めの軽アイゼンやチェーンスパイクを併用することが大前提となります。
一方で、本格的な厳冬期の八ヶ岳や日本アルプスといった、本格的な雪山登山においては、夏用のトレッキングシューズは完全に力不足です。これには「寒さ」と「靴の硬さ」という2つの大きな壁があるからです。
トレッキングシューズと冬用登山靴の「4つの決定的な違い」
雪山専用の靴(アルパインブーツ)は、過酷な環境で登山者の足を守るために、夏用の靴とは全く異なる設計がなされています。具体的にどこが違うのか、主要なポイントを見ていきましょう。
1. 断熱材による保温性の有無
夏用のトレッキングシューズは、歩行時の蒸れを逃がすために通気性を重視しています。対して冬用登山靴は、GORE-TEX Durathermのような断熱材が内蔵されており、魔法瓶のように足の体温を逃がしません。雪の中に長時間足を置く雪山では、この保温性の差が「凍傷」を防ぐ生死の分かれ目になります。
2. ソールの剛性(硬さ)
トレッキングシューズは歩きやすさを出すために、ソールが適度にしなるよう作られています。しかし、雪山で使う10本爪や12本爪のアイゼンを装着する場合、この「しなり」が命取りになります。歩くたびに靴が曲がると、固定されているアイゼンに無理な力がかかり、歩行中に外れてしまうリスクがあるからです。冬靴は、手で曲げようとしてもビクともしないほどガチガチに硬いソールを採用しています。
3. 「コバ」の有無
冬用登山靴には、かかとやつま先に「コバ」と呼ばれるプラスチックの溝があります。これは本格的なアイゼンをワンタッチ、あるいはセミワンタッチでガッチリ固定するためのものです。一般的なトレッキングシューズにはこの溝がないため、紐で縛り上げるタイプのアイゼンしか装着できず、固定力において一歩譲ります。
4. 防水性とゲイターの構造
雪山では、雪が溶けて水になり、それが靴の中に浸入してくるのが一番の敵です。冬靴はアッパー素材が厚く、防水性能が極めて高いのが特徴です。また、最近では靴とスパッツが一体化したようなモデルも増えており、物理的に雪をシャットアウトする構造が追求されています。
雪山へ行く前に揃えるべき必須アイテム
トレッキングシューズで雪山(低山)へ行くなら、靴そのものよりも「周辺装備」に予算を割くべきです。以下のアイテムがなければ、どんなに良い靴を履いていても危険です。
滑り止め装備の選択
まず検討すべきはチェーンスパイクです。これはゴムで靴に固定するタイプで、着脱が非常に楽。凍結した林道や緩やかな雪道を歩くのに最適です。もう少し傾斜がある場所なら、軽アイゼン 6本爪が必要になります。土踏まず付近に爪が集中しているため、斜面でもしっかり雪を捉えてくれます。
ゲイター(スパッツ)の重要性
雪山でよくある失敗が、靴の履き口から雪が入って靴下が濡れ、足が冷え切ってしまうことです。これを防ぐのがロングゲイターです。膝下から靴の甲までを覆うことで、深い雪の中に足を踏み入れても雪の侵入を防げます。
靴下は「厚手のウール」一択
足の冷え対策として最も有効なのが、メリノウール素材の厚手ソックスです。保温性が高いだけでなく、多少濡れても冷たさを感じにくいという魔法のような特性を持っています。靴を選ぶ際は、この厚手の靴下を履くことを想定してサイズを選ぶのが鉄則です。
失敗しない!雪山用シューズの選び方とフィッティング
もし、本格的な雪山を目指して新しい靴を買うなら、選び方には細心の注意を払ってください。
自分の目的を明確にする
「将来的に北アルプスにも行きたい」のか、「近郊の低山ハイクを楽しみたい」のかによって、選ぶべき靴は180度変わります。残雪期(春)の登山も視野に入れるなら、保温材が少し控えめで軽量なモデルが使いやすいでしょう。
ブランドごとの足型を知る
靴にはブランドごとに「足型(ラスト)」があります。
SCARPAやLA SPORTIVAは、テクニカルな動きに強く、世界中の登山家に愛されています。一方で、日本人の幅広・甲高な足にはモンベルやLOWAのワイドモデルがフィットしやすい傾向にあります。こればかりは実際に履いてみないと分かりません。
夕方のフィッティングが理想
足は夕方になるとむくんで大きくなります。登山中も同様に足は膨張するため、夕方に厚手の靴下を持参して試着するのがベストです。つま先に1cmほどの余裕がありつつ、かかとが浮かないものを選びましょう。
雪山での歩行技術と注意点
道具が揃っても、歩き方が夏山と同じでは危険です。雪山特有の歩行術を意識しましょう。
一番のポイントは「足裏全体で着地する」こと。フラットフィッティングと呼ばれます。アイゼンの爪を雪面に垂直に刺すイメージで歩くことで、スリップを防げます。
また、自分のアイゼンで反対の足のパンツを引っ掛けて転倒する事故が非常に多いです。少しガニ股気味に歩くのが、雪山での安全な歩き方のコツです。
雪山でトレッキングシューズを安全に使うためのまとめ
雪山登山は、適切な道具選びが安全に直結する世界です。
手持ちのトレッキングシューズで挑戦する場合は、標高や天候を十分に確認し、軽アイゼンやゲイターなどの補助装備を完璧に整えてください。もし、少しでも「本格的な雪山」の景色に惹かれているのであれば、早めに冬用登山靴を手に入れることをおすすめします。足元の安心感があるだけで、疲労度は劇的に減り、景色の美しさを楽しむ余裕が生まれるからです。
最後に、雪山では「無理をしないこと」が最大の技術です。天候が悪化したり、自分の装備で対応できないと感じたりしたら、勇気を持って引き返しましょう。
この記事を参考に、あなたにぴったりの一足を見つけて、素晴らしい雪山体験を楽しんでくださいね。
雪山でトレッキングシューズは使える?選び方と冬用登山靴との決定的な違いを解説、いかがでしたでしょうか。しっかりと準備を整えて、安全で最高の冬山シーズンを迎えましょう!


