「安全靴って、どれを選べばいいの?」と迷ったことはありませんか。
現場で履く靴は、ただのスニーカーとは違い、厳しい基準をクリアした“保護具”です。安全靴にはいくつかの規格が存在し、その中でも「JIS」と「JSAA」は特に代表的。名前は聞いたことがあっても、違いまではよく知られていない方が多いかもしれません。
ここでは、安全靴の規格について、仕組み・違い・選び方をわかりやすく解説していきます。
安全靴とは?まずは基本を押さえよう
安全靴とは、作業時の事故やケガから足を守るために作られた靴のこと。
つま先を守る「先芯」が入っており、落下物や衝撃、踏み抜きなどに対応できるよう設計されています。
工場、建設現場、物流センター、倉庫など、重いものや金属を扱う環境では、安全靴の着用が義務づけられているケースもあります。
見た目はスニーカーのようでも、中身はまるで別物。耐圧性や滑りにくさ、静電気対策まで、用途に応じた細かな性能基準が設けられています。
規格がある理由と、その重要性
「安全靴」と名乗っていても、実際には強度や保護性能が大きく異なることがあります。
そこで基準を明確にするために定められているのが「規格」です。
規格を満たしているかどうかは、安全性を保証する大切な指標。
つまり、規格を理解せずに選ぶと、「見た目は安全靴でも実際は作業に耐えられない」というリスクがあるのです。
日本では主に「JIS規格」と「JSAA規格」の2つが存在します。
両者は似ているようで、目的や性能に違いがあります。
JIS規格とは?国家基準の安全靴
「JIS」とは、日本産業規格(Japanese Industrial Standards)の略称。
国家レベルで制定された安全基準で、品質や性能が厳しく定められています。
JIS規格の安全靴には主に以下の2種類があります。
- JIS T 8101:安全靴
先芯を備え、落下物や圧迫などからつま先を守る。耐滑性や耐油性などの試験にも合格している。 - JIS T 8103:静電気帯電防止靴
静電気の発生を防ぎ、電子部品や火気を扱う現場での安全性を確保。
このJIS規格は、革製やゴム製など一定以上の耐久素材を使用することが義務づけられています。
つまり、素材の自由度よりも「安全性能の確実性」を重視した仕様です。
等級の違い(作業の重さ別)
JISでは作業の負荷に応じて4段階の区分があります。
- U種(超重作業用):造船・鉄鋼など極めて過酷な現場
- H種(重作業用):建設・製造など一般的な重作業
- S種(普通作業用):軽機械・物流など
- L種(軽作業用):事務所併設の倉庫や軽作業現場
上に行くほど、つま先の強度や耐衝撃性が高くなります。
付加性能もチェック
JIS規格の中には、作業環境に合わせて“追加性能”が付けられるものもあります。
- P:耐踏抜き性(釘などを踏んでも貫通しにくい)
- E:衝撃エネルギー吸収性(かかと部分のクッション性能)
- M:足甲プロテクタ(甲部分の保護)
- F:耐滑性(滑りにくいソール)
- BO/UO:耐油性(油による劣化を防ぐ)
「JIS T 8101 S種 E・F」のように記載されていれば、普通作業用で衝撃吸収・耐滑性能を備えたタイプという意味です。
JSAA規格とは?スニーカータイプの作業靴
一方、「JSAA」とは公益社団法人日本保安用品協会(Japan Safety Appliance Association)の略称。
JISのような国家規格ではなく、民間団体による認定制度です。
このJSAAが定めるのが、「プロテクティブスニーカー規格」。
スニーカー型やメッシュ素材など、軽量で動きやすい作業靴がこの基準に沿って認定されています。
区分は2種類
- A種(普通作業用):JISのS種相当
- B種(軽作業用):JISのL種相当
つまり、JSAAのA種は一般的な物流・倉庫作業、B種は軽作業向け。
耐圧迫や耐衝撃の基準値はJISに近いですが、素材の制約が少なく、人工皮革や布なども使用できます。
JSAA規格の特徴
- 軽量・通気性重視:長時間の立ち作業や歩行に向いている
- 素材の自由度が高い:人工皮革、メッシュなどの採用で快適
- デザイン性に優れる:カジュアルな見た目で選ばれることも多い
- 認定マークがある:靴のベロ裏や箱に「型式認定合格証明票」が付いている
ただし、重作業や危険の多い現場ではJIS規格の方が推奨されます。
JSAAは“軽作業向けの安心基準”と捉えるとわかりやすいでしょう。
JISとJSAAの違いを簡単にまとめると
- 安全性のレベル:JIS > JSAA
- 素材の自由度:JISは制限あり、JSAAは自由度高め
- 見た目・軽さ:JISは頑丈、JSAAは軽くて動きやすい
- 主な用途:JISは建設・製造など重作業、JSAAは倉庫・物流など軽作業
つまり、「どちらが上」というよりも、“用途に合っているか”が重要です。
現場で求められる安全レベルに合わせて、規格を選びましょう。
作業環境別・安全靴の選び方
1. 重いものを扱う現場
鉄骨や資材を扱う建設現場では、JISのU種・H種など高強度モデルが必須です。
耐圧・耐衝撃性能の高いタイプを選び、必要に応じて耐踏抜き(P)や耐滑(F)もチェック。
2. 倉庫・物流・運送系
フォークリフト作業や荷積みが中心なら、JSAAのA種で十分。
軽量で動きやすく、かかとクッション性のあるモデルが疲れにくいです。
3. 電子部品・化学工場
静電気によるトラブルを防ぐため、JIS T 8103対応やJSAAの静電モデルを選びましょう。
4. 屋外や油が多い環境
耐油底(BO/UO)や防水性能付きのモデルを選ぶと、長持ちします。
規格表示・マークの確認方法
購入時には、靴の箱やタグに記載されたマークを必ず確認しましょう。
- JISマーク:国家規格合格の証。型番と「JIS T 8101」などの記載あり。
- JSAAマーク:型式認定票・ピクトグラム(A種/B種・付加性能)がある。
マークがない場合は、規格非対応の可能性があります。
見た目が似ていても、保護性能が保証されない製品もあるため注意が必要です。
失敗しない安全靴選びのポイント
- 作業内容を明確にする
落下物、突き刺し、静電気など、どんなリスクがあるかを整理。 - 現場ルールを確認する
会社や現場で「JIS規格品限定」「A種以上必須」といった指定がある場合も。 - フィット感と動きやすさ
安全性だけでなく、長時間の作業に耐えられる履き心地も大切。
つま先の余裕や足幅(ワイズ)もチェック。 - 付加性能を活用する
滑りやすい床、油汚れ、静電対策など、環境に合わせて追加性能を選択。 - メンテナンスと交換時期
ソールの摩耗、先芯の変形、甲皮の割れなどが見られたら早めに交換。
安全靴は“消耗品”と考え、定期点検を習慣にしましょう。
まとめ:安全靴の規格を理解して、自分に合った一足を選ぼう
安全靴の規格には「JIS」と「JSAA」があり、それぞれに目的と強みがあります。
JISは高い安全性と耐久性を重視、JSAAは軽さと快適性を重視。
どちらを選ぶかは、あなたの現場のリスクと作業内容次第です。
大切なのは、「規格を理解して選ぶ」こと。
マークを確認し、作業内容に合った機能を選べば、毎日の仕事がより安全で快適になります。
安全靴は、足元から自分の命を守るための最前線。
今日から、あなたの現場に最適な一足を見つけてみてください。


