作業中、気づけば安全靴の紐がほどけていた——そんな経験、誰にでもありますよね。実は、紐の結び方ひとつで「ほどけにくさ」や「フィット感」は劇的に変わります。足と靴の一体感を高め、疲労を軽減し、安全性を向上させるためには、正しい結び方と通し方を知っておくことが大切です。ここでは、安全靴の紐にまつわる基本から、現場で実践できるテクニックまでを詳しく紹介します。
なぜ安全靴の紐の結び方が重要なのか
安全靴は、作業現場での安全を守るために設計された「道具」です。つま先の先芯や滑りにくいソールなどが注目されがちですが、実は“紐の結び方”も安全性に直結します。
紐がゆるむと、足が靴の中で動き、かかとが浮いて踏ん張りが効かなくなります。最悪の場合、転倒や巻き込み事故につながる危険もあります。逆に、適切に結ばれた紐は足をしっかり固定し、長時間の立ち作業でも疲れを軽減してくれます。
つまり、安全靴の紐の結び方は「安全」と「快適さ」を両立させるための“基本の技術”なのです。
まずは通し方から見直そう
紐の「結び方」だけでなく、実は「通し方」も非常に重要です。正しい通し方は、足全体に均等に力を分散し、フィット感を高める効果があります。
パラレル（ストレート）通し
靴紐を水平に通す方法で、圧力が均等にかかるのが特徴です。見た目もスッキリしており、足全体が包み込まれるようなホールド感を得られます。甲の高い人にもおすすめ。
オーバーラップ通し
紐を上から下に交差させる方法です。締め付けが強く、しっかりフィットさせたい人向け。足首を安定させたいハイカットタイプの安全靴に向いています。
アンダーラップ通し
逆に下から上に通す方法で、圧迫感をやわらげたいときに最適です。脱ぎ履きが多い現場や、軽作業中心の人に向いています。
サブホールを使ったロック法
スポーツシューズでも採用されている「かかとロック」は、安全靴にも応用可能。最後の穴に紐を通して輪を作り、反対側にクロスさせて結ぶことで、かかとの浮きを防ぎます。階段の上り下りが多い職場や、滑りやすい床環境で特に効果的です。
ほどけにくい結び方３選
通し方を整えたら、次は結び方。ここではほどけにくく、作業中でも安定する実践的な方法を紹介します。
1. 蝶結び＋ひと結び（ダブルノット）
一番簡単で即効性のある方法です。通常の蝶結びをしたあと、輪の部分でさらにもう一度片結びを加えます。これだけで結び目の摩擦が増し、ほどけにくくなります。見た目もスマートで、脱ぐときも簡単です。
2. イアン・ノット
世界最速で結べると言われる結び方です。両側で輪を作り、左右を交差して一気に締めるだけ。スピードと安定性を兼ね備えており、朝の準備や休憩後の結び直しにも便利。スポーツ用シューズから安全靴まで応用できます。
3. イアン・セキュア・ノット
イアン・ノットをさらに改良した結び方。輪を交差させて二重に通すことで、ほどけにくさが格段にアップします。結び目がしっかり固定されるため、激しい動きでも解けにくく、屋外作業や足場の多い現場で特におすすめです。
フィット感を高めるコツ
「しっかり結ぶ＝きつく締める」ではありません。フィット感を高めるには、足の動きに合わせて“ちょうどよく締める”ことが大切です。
- つま先部分はやや余裕をもたせる
- 甲部分はしっかり固定する
- 足首は動きを妨げない程度に締める
この3点を意識すると、足の血流を妨げず、疲れにくい履き心地が得られます。結び終えたら、軽く歩いてみて、かかとが浮かないか確認しましょう。
紐の素材・長さにも注目
意外と見落とされがちなのが、紐そのものの素材と長さです。
平紐と丸紐の違い
平紐は摩擦が大きく、ほどけにくいのが特徴。対して丸紐は通しやすいですが、滑りやすく緩みやすい傾向があります。安全靴には平紐のほうが向いています。
紐の長さの目安
靴のハトメ数に合わせて選びましょう。
- 3〜4組の穴：60〜80cm
- 5〜6組の穴：90〜110cm
- 7組以上：120cm前後
紐が長すぎると結び目が大きくなり、作業中に邪魔になります。短すぎても結びづらいので、靴に合った長さを選ぶことが重要です。
紐の余りはどう処理する？
ほどけ防止のためには、余った紐の扱い方も重要です。ぶら下がった紐を踏むと転倒の危険があり、巻き込み事故にもつながります。
おすすめは、結び目を靴のベロ（シュータン）の内側に軽く入れ込む方法。見た目もスッキリし、紐が外に出て引っかかるリスクを防げます。高所や機械作業がある現場では、この「隠す結び目処理」が特に効果的です。
作業環境別のおすすめスタイル
安全靴の使用シーンによって、最適な結び方も少し変わります。
滑りやすい床・油汚れの多い現場
→ 「イアン・セキュア・ノット」でしっかり固定。
滑って転倒するリスクを最小限に抑えられます。
脱ぎ履きの多い倉庫・事務系現場
→ 「蝶結び＋ひと結び」で時短＆安定。
短時間で結び直せて、業務効率も上がります。
長時間の立ち仕事・歩行作業
→ 「パラレル通し＋イアン・ノット」の組み合わせ。
足全体の圧が均等になり、疲労軽減につながります。
紐タイプ安全靴のメリットと注意点
最近はダイヤル式（Boa）やマジックテープ式の安全靴も増えていますが、紐タイプには紐ならではの良さがあります。
- 足の形や甲の高さに合わせて微調整できる
- フィット感が高く、長時間履いても安定する
- 部品交換が容易で、長く使える
一方で、結び方を誤ると安全性が下がる点には注意が必要です。特に油・粉塵・水などが多い現場では、紐が滑って緩みやすくなるため、定期的なチェックを習慣化しましょう。
毎日のチェックが安全を守る
どんなにしっかり結んでも、時間の経過や動きによって紐は少しずつ緩みます。以下の習慣を取り入れるだけで、安全靴の性能を最大限に引き出せます。
- 出勤前に紐の緩みと摩耗を確認する
- 休憩ごとに軽く締め直す
- 紐が毛羽立ってきたら早めに交換する
これだけで「気づかぬうちに紐がほどけていた」というトラブルを防げます。安全靴を守るのは、結び方だけでなく“日々の点検”です。
まとめ：安全靴の紐の結び方を極めて、安全も快適さも手に入れよう
安全靴の紐の結び方は、単なる習慣ではなく「安全を支えるスキル」です。
通し方を整え、結び方を工夫し、紐の素材と長さを見直すことで、ほどけにくく足にフィットした一足になります。
今日からは、ただ結ぶのではなく「正しく、ほどけにくく、快適に」結ぶことを意識してみてください。小さな工夫が、作業中の安心とパフォーマンスを大きく変えてくれます。
