ランニングシューズを買うとき、「普段より1cm大きめがいい」と聞いたことがある人は多いと思います。でも、本当にそれが正解なのか、迷いますよね。この記事では、実際にどんな理由で「1cm大きめ」が推奨されるのか、そして逆にどんな失敗が起こるのかを、経験と理論の両面からわかりやすく解説します。
走るときの足は“伸びる”――1cm余裕を持つべき理由
まず、なぜランニングシューズは少し大きめを選ぶと良いと言われるのでしょうか。
それは、走っている最中の「足の変化」が関係しています。
人間の足は、歩行時よりもランニング時のほうが衝撃を強く受けます。着地のたびにアーチ(土踏まず)が一時的につぶれ、その分だけ足の長さが伸びるのです。特に長距離を走ると足裏が疲れ、アーチが下がった状態で固定されていきます。つまり、走り始めはピッタリでも、途中からシューズの中で指先が窮屈になっていくということ。
加えて、ランニング中は体温の上昇や血流の増加で足がむくみます。朝より夕方のほうが足が0.5〜1cmほど大きくなる人も多く、長時間のランニングではさらに広がります。
この「足の伸び+むくみ」を考慮すると、つま先に約1cmの余裕を持たせるのが理想的。多くのメーカーが「実寸+1cm」を目安にしているのは、こうした足の変化を前提にしたサイズ設定だからです。
1cm大きめを選ぶことで得られるメリット
「大きめ」と聞くと、ブカブカになってしまうイメージがありますが、ランニングではむしろ適度な余裕が走りを安定させます。具体的なメリットを見てみましょう。
1. つま先への負担が減る
つま先がシューズの先端に当たらないことで、黒爪や爪下内出血、指の痛みなどのトラブルを防げます。特に坂道の下りや長距離ランでは、足が前に滑りやすくなるため、少しの余裕が安全につながります。
2. むくみに対応できる
走行中に足が膨張しても、シューズがきつく感じにくくなります。長距離や夏場のランニングでは特に重要です。余裕があることで血流を妨げず、足全体の疲労を和らげる効果も期待できます。
3. 靴擦れやマメを防ぎやすい
小さすぎる靴は摩擦が一点に集中し、皮膚トラブルの原因になります。つま先に空間があることで、衝撃や摩擦を分散でき、結果的に足の健康を守ります。
このように、1cm大きめを選ぶことで、快適さと安全性をバランスよく確保できるのです。
ただし“大きければいい”は間違い。サイズを上げすぎると起こる失敗
ここで注意したいのは、「1cm大きめ」が「大きいほどいい」という意味ではないということ。
サイズを上げすぎると、今度は別の問題が出てきます。
1. かかとが浮く・ズレる
シューズ内でかかとが動くと、安定性が一気に落ちます。足首や膝に余分な負担がかかり、フォームも崩れやすくなります。特にスピードを出すランナーほど、かかとのホールド感が重要です。
2. 摩擦によるマメや靴擦れ
サイズが大きいと足が中で動きやすくなり、結果として摩擦が増えます。長時間走ると皮膚が熱を持ち、痛みや水ぶくれの原因になります。
3. フィット感が悪く、エネルギーロスが起きる
余裕がありすぎると蹴り出しの力が伝わりにくくなり、走るたびに“シューズが遅れてついてくる”ような感覚になります。スピードを求めるランナーにとっては致命的です。
このように、単純に「+1cm」にこだわるのではなく、“つま先に1cmの余裕がある状態”を基準にするのが正しい選び方です。
自分に合ったサイズを見つけるための実践ステップ
理論だけでなく、実際にどうサイズを確認すればいいかを整理しましょう。店頭でも自宅でもできるチェック方法です。
1. 足の長さと幅を正確に測る
かかとから最も長い指(多くは親指または人差し指)までを測ります。さらに、母趾と小趾の付け根を結ぶ部分をメジャーでぐるっと測って「足囲(ワイズ)」を確認。これで長さと幅の両方を把握できます。
2. 夕方に試着する
足は午後から夕方にかけてむくみやすいため、朝に試すより夕方に履いたほうが実際の走行時に近い状態で確認できます。
走る時間帯が夜なら、夜に試すのもおすすめです。
3. ランニング用ソックスを履いて試す
厚みの違うソックスでフィット感が変わるので、普段使うソックスを持参して試しましょう。
4. 試着時に歩いたり軽く走ったりしてみる
かかとが浮かないか、つま先に余裕があるか、シューズ内で足がズレないかを確認。
理想は、かかとがピッタリ安定し、つま先に人差し指1本分の隙間(約1cm)がある状態です。
どんな人に「1cm大きめ」がおすすめ?
すべてのランナーに同じ基準が当てはまるわけではありません。走る距離や環境によって、適切な余裕の取り方は変わります。
向いている人
- フルマラソンなど、長距離を走る人
- 下り坂やトレイルなど、足が前に出やすい環境で走る人
- 足がむくみやすい、またはアーチが低下しやすい人
- 普段の靴でつま先が当たりやすい人
注意が必要な人
- 5km以下の短距離やスピード練習中心の人
- フィット感を重視するレースモデルを履く人
- 足幅が細めで、靴の中で足が動きやすい人
もし迷う場合は、同じモデルのサイズを0.5cm刻みで履き比べてみると、違いがよくわかります。
よくある失敗例とその対策
実際に「サイズを間違えた」と感じた人の体験から、注意すべきポイントを学びましょう。
失敗1:つま先が当たって爪が黒くなる
小さいサイズを選んだことで、指先が常にシューズの先端に当たってしまうパターン。特に下り坂で起こりやすいです。
→ 対策:つま先に1cmの余裕を確保する。
失敗2:かかとが浮いてマメができる
サイズを上げすぎてかかとが安定しないケース。
→ 対策:かかとのホールド感を重視し、靴紐をしっかり結んで調整。
失敗3:余裕がありすぎて走ると疲れる
足が靴の中で前後に動き、エネルギーが分散。特にスピードランでは顕著です。
→ 対策:1cmより大きくしすぎない。フィット重視のモデルを選ぶ。
ブランドやモデルによって“サイズ感”は違う
アシックス、ナイキ、ミズノ、ニューバランスなど、ブランドによって「同じ25.5cm」でもフィット感が違います。
理由は、木型(ラスト)の形や幅設定が異なるからです。
たとえばアシックスは日本人の足形に合わせてやや幅広に作られている一方、ナイキは欧米人向けの細め設計が多い傾向があります。そのため、同じ「+1cm」でもブランドによって感じ方が違います。
また、同じブランドでも「レースモデル」「クッションモデル」などシリーズごとにサイズ感が変わることもあります。初めてのモデルを選ぶときは、必ず試し履きをしてから判断するのが安心です。
サイズ選びの“正解”は「つま先に1cmの余裕+しっかりしたホールド」
ここまで見てきたように、「ランニングシューズは1cm大きめを選ぶべき?」という問いの答えは、**“はい、ただし条件付きで”**というのが現実的な結論です。
- つま先に約1cmの余裕を持たせる
- かかとや足幅がしっかりフィットしている
- 試着は夕方・ランニング用ソックス着用で行う
この3点を守れば、自分にぴったりのサイズが見つかります。
大切なのは、数字だけにとらわれず、実際に履いたときの感覚を確かめること。
「1cm大きめ」という言葉はあくまで目安であり、最終的な判断は“走ってみて快適かどうか”にあります。
ランニングシューズは1cm大きめを選ぶべき?最後にもう一度まとめ
ランニングシューズ選びで最も多い悩みが“サイズ感”。
普段履きと同じ感覚で選ぶと失敗しやすいのは、ランニング中の足が変化するからです。
- 走ると足は伸び、むくみも起こる
- その変化を見越してつま先に約1cmの余裕を
- ただし、大きすぎると逆効果になる
- 夕方の試着・ホールド感の確認・用途別の調整が鍵
結局のところ、「大きめを選ぶ」は万能な正解ではありません。
けれど、あなたの走り方や足の特徴に合わせて“適度な1cm”を見つけることができれば、それがあなたにとってのベストサイズです。
シューズのサイズが合うだけで、走りは驚くほど軽くなります。
次にランニングシューズを選ぶときは、ぜひ「1cmの余裕」を意識してみてください。


