「トレッキングシューズ選びで迷ったら、とりあえずメレルのモアブを履いておけ」
アウトドア好きの間で、これほどまでに信頼されている言葉はありません。登山靴特有の「重くて硬い」というイメージを覆し、箱から出した瞬間から足に馴染む魔法のようなフィット感。それがメレルの代表作、メレル モアブシリーズです。
2007年の誕生から現在に至るまで、世界中で2,800万人以上に愛されてきたこのシリーズには、長い歴史と止まらない進化の物語があります。今回は、ファンならずとも知っておきたい「メレル モアブ 歴代」の歩みと、今選ぶべき一足について深掘りしていきましょう。
すべてのブーツの母「MOAB」が誕生した理由
メレルというブランドの歴史は、1981年に腕利きのカウボーイブーツ職人、ランディ・メレルがオーダーメイドのハイキングブーツを作り始めたことから始まりました。彼が追求したのは、一切の妥協を許さない「フィット感」と「機能性」です。
そのDNAを色濃く受け継ぎ、2007年に満を持して登場したのが初代「MOAB(モアブ)」でした。名前の由来は、広大な自然が広がるアメリカ・ユタ州の地名から取られていますが、実はもう一つの意味が隠されています。
それが、“Mother Of All Boots”(すべてのブーツの母)。
この強気なネーミングに違わず、モアブは当時のアウトドア業界に革命を起こしました。当時の登山靴はまだレザー製の重厚なものが主流でしたが、モアブはメッシュ素材を大胆に取り入れ、スニーカーのような軽快さと、ガレ場でもへこたれない安定性を両立させたのです。
伝説の始まり!初代モアブが築いた信頼
初代メレル モアブが登場した際、真っ先にその性能に注目したのはハイカーだけではありませんでした。過酷な環境下で活動する軍関係者、特に米海軍特殊部隊(SEALs)などのオペレーターたちが、自費で購入してまで戦地で愛用したというエピソードは有名です。
- 圧倒的な通気性: メッシュとスエードのコンビネーションにより、長時間歩いても靴の中が蒸れにくい。
- マルチスポーツ対応: ハイキングだけでなく、マウンテンバイクやキャンプ、さらには日常のウォーキングまで一足でこなせる汎用性。
- Vibramアウトソールの採用: 滑りやすい路面でもしっかり地面を掴むグリップ力。
「本格的な登山靴はハードルが高いけれど、スニーカーでは不安」という層のニーズに完璧に応えた初代は、瞬く間に世界的なベストセラーとなりました。
10年目の正統進化「モアブ 2」の衝撃
初代の登場から10年が経過した2017年、ついに待望の二代目メレル モアブ 2がリリースされました。見た目のシルエットは大きく変えず、中身を徹底的にブラッシュアップする「キープコンセプト」の進化は、多くのファンを安心させました。
モアブ 2で最も進化したのは、その「履き心地の安定感」です。
具体的には、フットベッド(インソール)の形状が見直されました。「M-Select FIT.ECO+」という独自の設計により、土踏まずを優しく、かつしっかりと支える構造へと変化。これにより、長距離を歩いた時の疲労感が大幅に軽減されました。
また、アッパーのサイドに配置されたシリコン製のラインが、足全体を包み込むようなホールド感を実現。防水透湿素材の代名詞であるGORE-TEX(ゴアテックス)モデルの人気もさらに加速し、「雨の日の最強シューズ」としての地位を不動のものにしたのがこの二代目です。
現行最強モデル「モアブ 3」は何が変わったのか?
そして2022年、さらなるアップデートを遂げて登場したのが現行モデルのメレル モアブ 3です。一見すると「2」と似ていますが、その中身は驚くほどの進化を遂げています。
最大の変更点は、足裏のクッション性とサポート性です。
ミッドソールには、衝撃吸収性に優れた「メレル・エアクッション」に加え、新開発の高反発EVAフォームを採用。これにより、岩場に足をついた時の衝撃を和らげつつ、次の一歩を出すための推進力を生み出してくれます。
さらに、アウトソールも進化しました。Vibram社と共同開発した「TC5+」というコンパウンドを継続採用しつつ、ラグ(溝)のパターンを刷新。泥が詰まりにくく、濡れた岩の上でもより滑りにくい設計になっています。
また、現代のモノづくりに欠かせない「サステナビリティ」も意識されています。シューレースやライニングには100%リサイクル素材を使用しており、地球環境を守りながら自然を楽しむというアウトドアの精神を体現しています。
軽さを極めた異端児「モアブ スピード」シリーズ
歴代の王道モデルとは別に、近年注目を集めているのがメレル モアブ スピードです。これは、伝統的なモアブの安定感に、トレイルランニングシューズの「軽さ」と「スピード感」を融合させたハイブリッドモデルです。
特に2024年に登場した「モアブ スピード 2」は、厚底シューズのような高いクッション性が特徴。従来のモアブが「どっしりと歩く」ための靴だとしたら、スピードは「軽快に駆け抜ける」ための靴です。
「登山靴はやっぱり重いのが苦手」という方や、ファストパッキング、夏場のフェスなどでアクティブに動き回りたい方には、このスピードシリーズが新たな選択肢となっています。
ローカットかミッドカットか?用途別の選び方
モアブシリーズを選ぶ際に必ず突き当たるのが、「高さ」の選択です。歴代モデルのどれを選ぶにしても、ここが最も重要なポイントになります。
ローカットモデルの魅力
メレル モアブ 3 ゴアテックス ローのようなローカットは、足首の自由度が高く、脱ぎ履きが非常にスムーズです。
- おすすめのシーン:キャンプ、野外フェス、整備された遊歩道の散策、雨の日の街履き。
- メリット:スニーカー感覚で履けるため、普段着にも合わせやすい。
ミッドカットモデルの魅力
メレル モアブ 3 ゴアテックス ミッドのようなミッドカットは、足首をしっかりホールドしてくれます。
- おすすめのシーン:日帰り登山、低山ハイク、荷物が重い時の歩行。
- メリット:不整地で足首を捻るリスクを軽減し、靴の中に小石や砂が入るのを防いでくれる。
初心者が「これから山登りを始めたい」と考えているのであれば、まずは安定感のあるミッドカットを選ぶのが正解と言えるでしょう。
防水性能「ゴアテックス」は本当に必要?
モアブには、メレル モアブ ゴアテックスモデルと、防水機能のない「ベンチレーター」モデルが存在します(※日本展開はゴアテックスが主流)。
結論から言えば、日本の山やアウトドアシーンで使うなら「ゴアテックス一択」です。
山の天気は変わりやすく、たとえ晴天の予報でも朝露に濡れた草むらを歩くだけで靴の中まで浸水することがあります。ゴアテックスは外からの水をシャットアウトしつつ、靴の中の蒸れを外に逃がしてくれるため、一日中快適に過ごせます。
一方で、真夏の非常に乾燥した地域でしか履かない、あるいは圧倒的な通気性だけを求めるという特殊な状況でない限り、防水モデルを選んでおいて後悔することはありません。
サイズ選びで失敗しないためのチェックポイント
メレルの靴は、一般的に「日本人の足に合いやすい」と言われています。それは、欧米人に比べて幅広・甲高な足の形を考慮した設計になっているからです。
さらに、メレル モアブ ワイドという、通常よりもさらに幅を広げたモデルも用意されています。「いつも小指が当たって痛くなる」という方は、ぜひこのワイドモデルを試してみてください。
サイズ選びのコツは、登山用の厚手の靴下を履いた状態で、つま先に1cm程度の余裕(捨て寸)があるものを選ぶこと。下り坂でつま先が靴の先端に当たってしまうと、爪を痛める原因になります。カカトをしっかり合わせた状態で、指が自由に動かせるかどうかを確認しましょう。
メレル モアブ 歴代モデルを履きこなしてフィールドへ!
初代から続く「Mother Of All Boots」の血統は、最新のメレル モアブ 3において一つの到達点を迎えました。
歴代モデルを振り返ってみると、メレルがいかに「ユーザーの足を守ること」と「歩く楽しさを提供すること」に心血を注いできたかが分かります。タフな現場で戦うプロフェッショナルから、週末のキャンプを楽しむファミリーまで、これほど広い層に支持される理由は、その揺るぎない品質にあります。
もしあなたが、次のアウトドアパートナーを探しているのなら。あるいは、雨の日の通勤をもっと快適にしたいと考えているのなら。
迷わず「メレル モアブ 歴代」の名作たちの中から、自分にぴったりの一足を見つけてみてください。箱から出して足を入れたその瞬間、あなたはきっと、次の目的地へ歩き出したくなるはずです。


