「ニューバランス×レッドウィング」。この組み合わせを聞いて、胸が高鳴る人は多いはず。
アスレティックブランドの代表格・ニューバランスと、アメリカンワークブーツの象徴・レッドウィングが手を組んだのだから、それだけで“ロマン”を感じてしまう。
今回の記事では、この両ブランドのコラボレーションモデルの背景や魅力を、じっくりと紐解いていく。
ニューバランスとレッドウィング ― アメリカが誇る2大ブランドの邂逅
まず、このコラボが「なぜ熱い」のかを理解するためには、それぞれのブランドの成り立ちを知ることから始めたい。
ニューバランスは1906年にアメリカ・ボストンで誕生。
当初は矯正靴メーカーとしてスタートし、足の解剖学的な知識を基にした設計でランニングシューズを進化させてきた。現代では、ランナーだけでなくファッションシーンでも欠かせない存在だ。特に「Made in USA」や「Made in UK」ラインに代表されるクラフトマンシップは、スニーカーブランドの中でも突出している。
一方のレッドウィングは1905年、ミネソタ州で創業した老舗ブーツブランド。
炭鉱夫や工場労働者の足元を支えてきたワークブーツは、堅牢でありながらも美しい。使い込むほどに深みを増すレザー、トリプルステッチの縫製、グッドイヤーウェルト製法――どれを取っても、クラフツマンシップの塊だ。
そんな二つのアメリカンブランドが出会う。
「履き心地のニューバランス」と「革のレッドウィング」が融合する。
この時点で、ただのスニーカーでは終わらないことが分かる。
コラボモデル「M997RW」に込められた哲学
今回のコラボでベースとなったのは、ニューバランスの名作「M997」。
1990年に登場したこのモデルは、99Xシリーズの中でも特に完成度が高いとされ、今もなお高い人気を誇っている。ENCAP構造による安定性と軽量性を両立し、上質な素材を惜しみなく使ったプレミアムラインだ。
このM997を、レッドウィングが持つ伝統の素材で“再構築”したのが「M997RW」。
アッパーには、レッドウィングの象徴的レザー「Hawthorne Muleskinner Leather(ホーソーン・ミュールスキナー・レザー)」を採用している。
このラフアウトレザーは、ブーツの内側を外側として使う独特の加工法で、起毛感のある質感が特徴。耐久性に優れ、履き込むほどに艶が増していく。つまり、スニーカーでありながら“育てる靴”としての要素を持つのだ。
カラーはレッドウィングのブーツを思わせる温かみのあるタンブラウン。
サイドの“N”ロゴも控えめで、全体として落ち着いたクラシックな佇まいに仕上がっている。
ニューバランスのモダンなラインと、レッドウィングの無骨な表情が見事に調和している。
デザインディテールに宿る“職人の手仕事”
このコラボモデルを実際に手に取ると、まず感じるのは「質感の深み」だ。
表面を滑らかに仕上げたスニーカーとは違い、ラフアウトレザーの起毛感がまるでブーツのような重厚さを醸し出す。
ヒール部分にはレッドウィングを象徴するトリプルステッチがあしらわれ、ソールにはM997本来のENCAPミッドソールが搭載されている。つまり、機能性はそのままに、見た目と素材を“ワークブーツ仕様”に変えているわけだ。
さらに、インソールには両ブランドのロゴが刻まれており、細部まで抜かりがない。
この「コーブランディング」のデザインは、単なる見た目以上の意味を持つ。
それは“アメリカのクラフトマンシップの融合”を象徴しているのだ。
経年変化を楽しむ“育てるスニーカー”
レッドウィングといえば、経年変化を楽しむブーツの代名詞。
このコラボスニーカーにも、そのスピリットがしっかりと受け継がれている。
新品の状態では、毛足の長いラフアウトがやや硬めに感じるかもしれない。
だが、履き込むにつれて柔らかくなり、色味も深まり、自然な艶が出てくる。
雨風にさらされ、ブラッシングを重ね、レザークリームを入れていくうちに、まるで自分だけのブーツのような味わいが生まれる。
この“変化を楽しむ時間”こそが、M997RW最大の醍醐味。
スニーカーでありながらブーツのように“エイジング”を味わえる一足は、数あるコラボの中でも極めて希少だ。
履き心地と機能性 ― スニーカーとしての本領も健在
素材の重厚感に目を奪われがちだが、やはりニューバランス。履き心地は抜群だ。
ENCAP構造のソールが生み出す安定感、クッション性、歩行時のバランスは、まさにM997シリーズの真骨頂。
レッドウィングのレザーが持つタフさと、ニューバランスの快適性が見事に融合している。
ただし、一般的なスニーカーに比べると、最初の履き始めはやや硬い印象を受ける。
これはラフアウトレザー特有の特性で、履くうちに足になじんでくるので心配はいらない。
むしろこの“慣らし”の過程こそ、革靴好きにはたまらないポイントだろう。
ファッションとの相性 ― “アメカジの粋”を足元に
見た目の印象からして、M997RWはアメカジスタイルとの相性が抜群だ。
リジッドデニム、チノパン、太めのワークパンツなど、無骨なボトムスと合わせると存在感が際立つ。
一方で、スニーカーらしいシルエットがあるため、ジャケットやスラックスと合わせてドレスダウンするのも洒落ている。
つまり、ブーツのようでありながら“重くなりすぎない”。これが最大の魅力だ。
また、秋冬はもちろん、春先にもマッチする万能カラー。
ワーク感をほどよく残しつつ、上品な印象もあるため、シーズンを問わず活躍してくれる。
限定性と入手難易度 ― コレクター垂涎の一足
M997RWは2019年に数量限定で発売されたモデルで、現在は入手困難となっている。
国内では一部のニューバランスオフィシャルストアやセレクトショップのみで販売され、即日完売した店舗も多かった。
当時の定価は35,200円(税込)。アッパー素材や製造クオリティを考えれば、むしろ“お値打ち”と感じた人も多いはずだ。
現在は中古市場や海外オークションサイトで見かける程度で、状態の良い個体は希少。
再販の予定は明らかにされていないが、人気と反響を考えると、今後の復刻や新たなコラボモデルに期待が集まっている。
お手入れのコツ ― 長く愛用するために
ラフアウトレザーを長持ちさせるコツは、何より「手入れを怠らないこと」。
起毛革は汚れが目立ちやすいが、ブラッシングを習慣にすれば清潔に保てる。
雨の日に履いたらしっかり乾かし、保湿スプレーやレザークリーナーを使うと良い。
また、長期的に履くことで起毛がつぶれ、独特の艶が生まれていく。
ブーツのエイジングと同様、履くたびに“自分の足に馴染んでいく”変化を楽しめるのが、このコラボスニーカーの魅力でもある。
ニューバランス×レッドウィングが示した新しい価値観
このコラボレーションは、単なる限定モデルではなく、「スニーカーの新しい方向性」を提示したとも言える。
軽さや速さだけを追い求めてきたスニーカーの世界に、“素材の重み”と“時間の経過を楽しむ価値”をもたらした。
それは、流行よりも本質を求める人にこそ響く提案だ。
両ブランドが持つアメリカンクラフトマンシップ――
それを足元で感じられるこの一足は、まさに“文化の融合”ともいえる存在。
履くたびに味が出て、時間とともに完成していく。そんな体験を与えてくれるのが、M997RWなのだ。
ニューバランス レッドウィング コラボ ― “一生モノのスニーカー”を求めるあなたへ
ニューバランスとレッドウィング。
異なるフィールドで頂点を極めた二つのブランドが出会い、互いの哲学を共有した結果、生まれたM997RW。
それは単なるスニーカーでも、ブーツでもない。
「履くほどに味わいが増す、一生モノの相棒」だ。
丁寧に作られた靴を、自分の足で、時間をかけて育てていく――。
そんな贅沢な楽しみを味わいたい人にこそ、このコラボスニーカーを手にしてほしい。
ニューバランス レッドウィングの名を冠するこの一足は、まさに現代のクラフトスピリットを体現する傑作だ。


