スニーカー好きなら一度は聞いたことがある「ニューバランスのENCAP(エンキャップ)」。
ニューバランス 990シリーズやニューバランス 574など、数々の名作に搭載されているこの技術は、「歩きやすい」「安定感がある」と評判ですが、実際にどんな仕組みなのか知っていますか?
この記事では、ENCAPの構造や効果をわかりやすく解説しながら、「安定性とクッション性の違い」を丁寧に検証していきます。長く快適に履けるスニーカーを選びたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
ENCAPとは?ニューバランスを支えるミッドソール技術
ENCAP(エンキャップ)は、ニューバランスが1980年代に開発した独自のミッドソール技術です。
1985年に登場した名作「ニューバランス M1300」に初めて採用され、その後「ニューバランス 574」「ニューバランス 990」シリーズなど多くの人気モデルに搭載されてきました。
仕組みを簡単に言うと、柔らかいEVAフォームの芯を、硬くて耐久性の高いポリウレタン(PU)で包み込んだ構造です。
“ENCAP=Encapsulate(包み込む)”という名前の通り、EVAをPUで覆うことで、クッション性と安定性を両立させています。
EVAは軽くて柔らかい素材で、足に伝わる衝撃をしっかり吸収します。
一方、PUは硬くて形状を保ちやすく、長期間使用しても変形しにくい特徴があります。
この2つを組み合わせることで、「柔らかすぎず、硬すぎない」ちょうど良い履き心地が生まれるのです。
ENCAPの仕組みをわかりやすく解説
ミッドソールの内部は大きく分けて2層構造になっています。
- 内側(コア):EVAフォーム
柔らかくて軽い素材。衝撃を吸収し、足裏に心地よいクッションを提供します。 - 外側(リム):ポリウレタン(PU)
ミッドソール全体を包み込むように配置され、形状を保ち、横ブレを防ぎます。
この構造によって、EVA単体のスニーカーでは感じにくい「安定感」が得られます。
たとえば、歩行中に体重が外側や内側に傾いても、PUの枠がしっかり支えることで足の軸がブレにくい。
結果として、長時間歩いても疲れにくく、立ち仕事や旅行でも快適に過ごせるのです。
ENCAPが生まれた背景と進化の歴史
1980年代のランニングシューズ業界では、「クッション性の高い軽量フォーム」が注目されていました。
しかし柔らかいフォームは耐久性に欠け、長く履くとすぐにへたってしまうという課題がありました。
ニューバランスはそこで「EVAの柔らかさを残しながら、形状を保つ構造を作れないか」と考え、PUで外側を補強するアイデアにたどり着きます。
こうして誕生したのがENCAP技術です。
初搭載されたニューバランス M1300は、当時のランナーたちから「雲の上を歩くようだ」と絶賛され、当時の価格3万円(当時としては超高級)にもかかわらず大ヒットしました。
以後、ENCAPはニューバランスの“象徴的ミッドソール”として改良を重ねながら、現代のモデルにも受け継がれています。
ENCAPの効果①:クッション性を高めるEVAフォーム
ENCAPの中心にあるEVAフォームは、足に伝わる衝撃を吸収する役割を担っています。
歩くたびに地面から受ける力を和らげ、膝や腰への負担を軽減します。
一般的なスニーカーでは、このクッション部分が柔らかすぎると沈み込みが大きくなり、安定感を失いやすくなります。
しかしENCAPの場合、PUのリムがそれをしっかり支えるため、柔らかすぎず、弾力のある安定したクッション性を保てます。
履き心地としては「ふわっとしているけれど、地面をしっかり感じられる」という印象。
長時間の歩行でも底つき感が少なく、足裏全体で地面をとらえる感覚が続きます。
ENCAPの効果②:安定性を生むPUリム構造
ENCAPのもう一つの強みが「安定性」です。
PUリム(ポリウレタンの枠)がEVAを包み込むことで、ソール全体の横方向やねじれの動きを抑え、歩行中のブレを防止します。
この構造は特にヒール部分に効果的です。
着地時にかかる体重のバランスをしっかり受け止め、かかとが左右にぐらつくのを防いでくれます。
足首が安定しやすくなるため、疲れにくく、怪我のリスクを減らす効果も期待できます。
さらに、PU素材はEVAよりも耐久性が高く、ソールの寿命を延ばす役割も果たします。
毎日の通勤や立ち仕事でも、へたりにくく長く使えるのがENCAPの大きな魅力です。
クッション性と安定性の違いを検証
ニューバランスのソール技術には、ENCAPのほかにも「Fresh Foam」や「FuelCell」などがあります。
それぞれ得意分野が異なり、履き心地にも大きな違いがあります。
- Fresh Foam:非常に柔らかく、ふわふわとしたクッション感が特徴。ジョギングや日常使いに最適。
- FuelCell:高反発フォームで、弾むような推進力を重視。ランナー向け。
- ENCAP:やや硬めで安定感重視。立ち仕事や長時間歩行に向いている。
つまりENCAPは、「柔らかさと安定感のバランス」を求める人にぴったりの構造です。
柔らかすぎず、硬すぎない。その“ちょうど良さ”こそが、多くのユーザーから支持されている理由です。
ENCAPが採用されている代表的なモデル
ENCAPはニューバランスの名作ラインで幅広く採用されています。
以下は代表的な例です。
- ニューバランス 574
クラシックな見た目と安定した履き心地が魅力。ENCAP構造を最も象徴するモデルの一つです。 - ニューバランス 990v6
現行の990v6でもENCAPを採用。ABZORBやFuelCellなどの新素材と組み合わせ、より上質なクッション性を実現しています。 - ニューバランス 1300 / ニューバランス 1500
ENCAP初期搭載の系譜。クラシックながらも機能的な履き心地で、愛好家が多いモデルです。
これらのモデルは「見た目はレトロでも中身は最新テクノロジー」という点で共通しており、ENCAPがニューバランスのデザイン哲学と深く結びついていることがわかります。
ENCAPのデメリットや注意点
どんな技術にもメリットとデメリットがあります。ENCAPにもいくつか注意点があります。
- やや硬めの履き心地
柔らかい履き心地を求める人には、Fresh FoamやFuelCellの方が合うかもしれません。 - 重量がやや増す
PU素材を使用しているため、軽量モデルと比べるとわずかに重く感じることがあります。 - 経年劣化(加水分解)のリスク
PU素材は湿気や温度によって劣化しやすいため、保管環境に注意が必要です。
とはいえ、これらの点を理解していれば、ENCAPの安定感と耐久性は大きな魅力になります。
特に「長く履けるスニーカーが欲しい」という人には最適な選択肢です。
ENCAPがおすすめな人・シーン
次のような人には、ENCAP搭載モデルが特におすすめです。
- 通勤や立ち仕事などで長時間歩く人
- 足のブレを抑えて安定した歩行を求める人
- クッション性と耐久性のバランスを重視する人
- クラシックな見た目と機能性を両立させたい人
ENCAPは日常使いから軽いランニングまで幅広く対応でき、シーンを選ばず履ける万能構造です。
“硬すぎず柔らかすぎない履き心地”を求めるなら、まず試してほしい技術といえます。
まとめ:ニューバランスENCAPの仕組みと効果を理解して選ぶ
ニューバランスのENCAPは、EVAフォームによるクッション性とPUリムによる安定性を融合させた革新的なミッドソール技術です。
柔らかさと安定感を両立させた履き心地は、日常使いから長時間歩行まで幅広く活躍します。
安定性を求めるならENCAP、柔らかさを求めるならFresh Foam、反発力を求めるならFuelCell。
それぞれの特性を知ることで、自分の足に本当に合った一足を選べるようになります。
長く快適に履けるスニーカーを探しているなら、ぜひ「ニューバランスENCAP」の構造と効果を理解したうえで、次の一足を選んでみてください。


