スニーカー好きなら一度は耳にしたことのある「ニューバランス」。履き心地の良さやデザイン性の高さで、多くの人に愛されています。でも、ふと疑問に思いませんか?「ニューバランスってどこの国のブランドなの?」と。ここでは、そのルーツや発祥の地、そして現在に至るまでのグローバルな展開の歴史をじっくりと掘り下げていきます。
ニューバランスの発祥はアメリカ・ボストン
ニューバランスは、1906年にアメリカ・マサチューセッツ州ボストンで誕生しました。創業者はウィリアム・J・ライリー(William J. Riley)。イギリスから移住した靴職人で、当初は「New Balance Arch Support Company」という社名で、靴の中敷きやアーチサポートを製造していました。
彼が「ニューバランス」という名前をつけた理由は、鶏の足の構造にヒントを得たことから。鶏は3本の爪でバランスをとって立っていることに着目し、「足のバランスを新たにする(New Balance)」という発想をブランド名に込めたとされています。
つまり、ニューバランスはアメリカ発祥のブランドであり、そのルーツは「足に正しいバランスをもたらす」ことにありました。
アーチサポートからランニングシューズへ――転機を迎えた1960年代
創業からしばらくの間、ニューバランスは矯正用インソールやワークシューズ向けのサポート用品を中心に展開していました。ところが、1960年代に大きな転機が訪れます。
同社が発売した「トラックスター」というランニングシューズが、世界初の「ワイズ(足幅)展開」を持つモデルとして話題に。これにより、幅広い足型にフィットするシューズブランドとして一躍注目を浴びました。
当時のランニングブームと相まって、ニューバランスは機能性を重視するアスリートやコーチたちの間で急速に人気を拡大していきます。
経営者交代とブランド拡大――ジム・デイヴィスの登場
1972年、ボストンマラソン開催日に、ジム・デイヴィス(Jim Davis)がニューバランスを買収しました。彼のリーダーシップのもと、ブランドは家族経営から企業体制へと発展。製造体制やデザイン、販売網を強化し、ランニングシューズ業界での地位を確立していきます。
1976年には「320」というモデルが登場。このシューズは雑誌『ランナーズワールド』で「ベスト・ランニングシューズ」に選ばれ、ニューバランスの名を世界中に広めるきっかけとなりました。この頃からおなじみの「N」ロゴが定着し、ブランドの象徴として親しまれるようになります。
Made in USA・Made in UK――製造へのこだわり
他の大手スポーツブランドが次々と生産をアジアへ移すなか、ニューバランスは現在もアメリカとイギリスに自社工場を持っています。
・アメリカではマサチューセッツ州やメイン州などに工場を構え、「MADE IN USA」シリーズを展開。
・イギリスではカンブリア地方のフリンビー工場で「MADE IN UK」シリーズを製造。
この2つのラインは、クラフツマンシップと品質の高さを象徴する存在として知られています。生産コストの安い海外製モデルと区別され、「本国製」にこだわるファンも多いのが特徴です。
もっとも、全てのモデルが米英で作られているわけではありません。多くの一般モデルは中国・ベトナム・インドネシアなどアジア諸国でも生産されています。つまり、アメリカ発祥でありながら、グローバルな供給体制を築いているのです。
世界へ広がるニューバランス――グローバル展開の流れ
1970年代以降、ニューバランスはランニングだけでなくウォーキング、カジュアル、ファッションなど幅広い分野に進出しました。特に1980年代には「990」シリーズが登場し、高価格帯ながら圧倒的な支持を獲得します。
この時期からニューバランスは、アメリカ国内だけでなくヨーロッパやアジアにも積極的に進出。ヨーロッパではイギリス製モデルを中心にプレミアムラインとして展開し、日本をはじめとするアジアではフィット感と快適さが評価され、市場を拡大しました。
今日では、アメリカ・ヨーロッパ・日本・韓国など世界各国に拠点を持ち、グローバルブランドとして確固たる地位を築いています。
日本市場での成功――履き心地文化との相性
ニューバランスが日本で広く愛されている理由の一つに、「足幅」や「履き心地」へのこだわりがあります。日本人は欧米人に比べて足幅が広い傾向があり、ニューバランスのワイズ展開(D、2E、4Eなど)は非常に相性が良いのです。
また、1980年代以降、ニューバランスは日本限定カラーや別注モデルなどを積極的に展開。BEAMSやUNITED ARROWSなど人気セレクトショップとのコラボレーションも多数行い、ファッションシーンでも存在感を高めました。
六本木や銀座、大阪などには直営フラッグシップストアを構え、限定アイテムやパーソナルフィッティングサービスを提供。こうした取り組みが「日本市場で成功した海外ブランド」の代表例として評価されています。
機能性×デザイン性で進化するブランド哲学
創業から100年以上が経った今も、ニューバランスが大切にしているのは「フィット感」と「機能性」。これは、創業者ライリーが最初に作ったアーチサポートの理念と変わりません。
同時に、近年ではデザイン面でも進化を続けています。シンプルながら上質な素材を使い、日常に馴染むライフスタイルスニーカーとしての人気が急上昇。
「990」「2002R」「9060」「574」「996」など、時代ごとのトレンドを取り入れたモデルが次々と登場し、若年層から年配層まで幅広い層に支持されています。
さらに、環境配慮やサステナブル素材への転換も進行中。再生素材やリサイクルフォームを用いたモデルを展開するなど、次世代への責任あるものづくりを掲げています。
アメリカ発ブランドが守り続ける「クラフツマンシップ」
「ニューバランス=アメリカのブランド」という印象を形づくっているのは、単なる発祥地だけではありません。
ブランドの根幹には、「本当に良いものを、自分たちの手で作る」というクラフツマンシップが息づいています。
例えば、「Made in USA」シリーズは今も職人の手で丁寧に仕上げられています。大量生産ではなく、1足1足の品質を重視する生産スタイル。こうした姿勢こそが、世界中のファンがニューバランスを信頼する理由と言えるでしょう。
これからのニューバランス――グローバル×ローカルの融合へ
近年のニューバランスは、単なるスポーツブランドにとどまらず「ライフスタイル・カルチャーブランド」としての側面を強めています。
ファッションブランドとのコラボレーション、アーティストとの協業、限定カラーの展開など、国や文化を越えた活動が活発です。
一方で、地域市場へのローカライズも忘れていません。日本では足型やデザイン嗜好に合わせたモデルを開発し、韓国ではストリートカルチャーに根ざしたマーケティングを展開。グローバルブランドでありながら、各国の文化に寄り添う姿勢が支持を集めています。
まとめ|ニューバランスはどこの国のブランドか?
改めてまとめると――ニューバランスはアメリカ・マサチューセッツ州ボストン発祥のブランドです。
1906年の創業以来、足に寄り添うモノづくりを続け、今や世界中で愛されるスニーカーブランドへと成長しました。
「どこの国のブランド?」という問いに答えるなら、それは間違いなくアメリカのクラフツマンシップをルーツに持つブランド。
そして今は、アメリカから世界へ、「グローバルでありながらローカルに寄り添う」存在として進化を続けています。
100年以上経っても変わらないのは、足を支えるための「新しいバランス」を追求する精神。その原点が、今日のニューバランスを形づくっているのです。


