「ニューバランスって、どこの国のブランドなの？」
スニーカー好きなら一度は気になるこの疑問。実は、その発祥は100年以上前のアメリカ・ボストンに遡ります。この記事では、ニューバランスの原点から現在までの進化を、ブランド誕生の背景や歴史的エピソードを交えながらわかりやすく解説します。
ニューバランスの発祥地はアメリカ・ボストン
ニューバランスの始まりは1906年、アメリカ・マサチューセッツ州ボストン。
創業者は、アイルランド系移民のウィリアム・J・ライリー（William J. Riley）です。彼は立ち仕事で疲れやすい人々のために、足のアーチを支える「矯正用インソール（アーチサポート）」を開発しました。これが「New Balance Arch Support Company」としての第一歩でした。
ライリーが「New Balance（新しいバランス）」という名前を付けた理由もユニークです。
彼は庭でニワトリの三本爪の足を観察し、「三点でバランスを取る構造」から着想を得たと言われています。つまり、足のバランスを科学的に支えることで“新しい安定感”を提供したい――この理念がブランド名に込められているのです。
当初のニューバランスはまだスニーカーブランドではなく、医療用インソールやカスタムメイドの靴を製造する小さな工房。創業地ボストンは当時、産業や医療技術が盛んな地域で、機能性を追求するライリーの発想と相性のよい土壌でした。
矯正靴メーカーからスポーツブランドへの転換
長らく矯正靴を中心に製造していたニューバランスが、スポーツ分野へ進出したのは1930年代頃。1938年にはボストンの陸上クラブのために、初めてランニングシューズを手がけたと伝えられています。
1950年代までは限られた顧客向けにインソールや矯正靴を販売していましたが、1960年代に入り転機を迎えます。
当時のニューバランスは、「足長」だけでなく「足幅（ウィズ）」にも対応したランニングシューズを開発。これにより、一般消費者にもフィット感の高い靴として注目され始めました。
幅広・狭幅など、足囲に応じた細かなサイズ展開を行ったのは、スポーツシューズ業界でも非常に画期的なことでした。もともと矯正靴をつくっていたノウハウが、スポーツシーンに応用されたのです。
1970年代：ジム・デイヴィスによる再出発
1972年、ニューバランスの歴史を大きく変えた人物が登場します。
その名はジム・デイヴィス（Jim Davis）。当時28歳だった彼は、小規模だったニューバランスを買収しました。従業員6人・1日30足しか作れない小さな会社を引き継ぎ、世界的ブランドへと成長させた立役者です。
ボストンではちょうどランニングブームが起きており、デイヴィスはこの潮流を逃さず製品開発を強化。
ランニング専用モデルを次々と発表し、機能性の高さと履き心地でランナーから絶大な支持を得ました。1970年代後半には、既に「Made in USA」にこだわる姿勢を明確に打ち出していました。
さらに、デイヴィスの妻・アン・デイヴィスも経営に加わり、夫婦二人三脚でブランドの基盤を確立。機能性と品質を重視しつつも、ファッション性を取り入れる方向へと舵を切りました。これが、後の“ライフスタイルスニーカー”の誕生へつながっていきます。
1980年代：990シリーズの誕生と世界進出
1982年、ニューバランスを象徴する名作「990」が登場します。
「当時の最新技術をすべて詰め込み、価格は100ドル以上」という高級ランニングシューズとしてデビューし、アスリートだけでなく一般層にも大ヒット。ニューバランスのブランドイメージを一気に高める存在となりました。
990シリーズはその後、992・993・996などへと発展し、現在も続くロングセラーとなっています。
また同時期に、イギリス・カンブリア州フリンビー（Flimby）に工場を設立。「Made in UK」ラインを生産することで、ヨーロッパ市場にも進出しました。
こうした「地域密着型の製造」は、ニューバランスのこだわりの象徴。大量生産ではなく、地元職人の手による高品質な製品づくりがブランド価値を支えています。
技術革新と快適性へのこだわり
ニューバランスのシューズが評価される最大の理由は、やはり“履き心地”にあります。
創業当初の矯正靴づくりから受け継がれたフィット技術は、現代のスニーカーにも息づいています。
代表的なテクノロジーの一つが「ENCAP（エンキャップ）」です。これは、ミッドソールの外側に硬いポリウレタンを配置し、内側に柔らかいEVA素材を組み合わせる構造。クッション性と安定性を両立させる独自技術として、多くのモデルに採用されています。
また、足幅（ウィズ）の豊富さも他ブランドにはない特徴です。D（標準）から2E（やや広め）、4E（幅広）まで、細かくフィッティングが選べることで、幅広の足型を持つ日本人にも好まれています。
さらに、近年では環境への配慮も進化の一部。再生素材や植物由来素材を使ったモデルも登場し、サステナブルなブランドとしての一面も強調されています。
「Made in USA」と「Made in UK」が象徴するブランド哲学
ニューバランスの製造拠点は、今でもアメリカとイギリスに残されています。
とくに「Made in USA」モデルは、原材料の70％以上をアメリカ国内から調達していることが条件。品質管理を徹底し、クラフトマンシップを守る姿勢が評価されています。
一方、「Made in UK」モデルはイギリス北部フリンビー工場で生産され、上品なデザインと柔らかな履き心地で人気。どちらの国のモデルも、単なる製造地の違いではなく、地域ごとの文化や職人技術を背景に持っています。
この「生産地へのこだわり」は、グローバルブランドとして成長してもブレないポリシー。大量生産よりも品質を重視する姿勢が、ファッション好きやスニーカーマニアから高く支持される理由です。
日本でのニューバランス人気と文化的定着
日本では、1980年代後半からニューバランスの人気が拡大しました。
足幅が広く甲が高い日本人の足型に合うことから、機能性シューズとして信頼を得ています。また、990・996・574などの定番モデルは「どんな服にも合わせやすい」として、男女問わず愛用者が増加。
さらに、日本限定モデルやコラボモデルも多数登場。ビームスやアトモスなど国内ブランドとのコラボはもちろん、海外デザイナーとの協業による限定カラーも人気です。
最近では、クラシックなデザインを復刻した「Made in Japan」モデルも登場し、素材や仕立てへのこだわりを前面に押し出す動きも見られます。これにより、ニューバランスは単なるスニーカーではなく、「ストーリーのあるプロダクト」として再評価されています。
ニューバランスの進化が示すブランドの本質
ニューバランスの歩みを振り返ると、常に一貫しているのは「足を支える」という理念です。
創業当初のアーチサポートから始まり、ランナーの足、日常を歩く人の足、ファッションを楽しむ人の足――どんな場面でも快適さを提供してきました。
その背景には、技術と誠実さ、そして人間工学への深い理解があります。流行を追うだけではなく、履く人の生活を支えるプロダクトをつくり続ける。この姿勢こそが、100年以上続くブランドの強さなのです。
ニューバランスの発祥地と歴史が教えてくれること
改めて、ニューバランスの発祥地・ボストンという街に注目すると、そこにはブランドの哲学が凝縮されています。
ボストンはアスリート文化や職人気質が根付く街。ニューバランスが「機能」「品質」「誠実さ」を重んじるのも、この土地の精神が息づいているからでしょう。
“新しいバランス”という名前が示すように、ニューバランスは時代の変化に応じて常に進化を続けています。
それでも根底にあるのは、「人の足を支え、快適な歩みを提供する」という信念。ボストンで生まれたその思いが、今も世界中のスニーカーに息づいているのです。
ニューバランスの発祥地や歴史を徹底解説！ブランド誕生の秘密と進化の軌跡――
その物語は、単なるスニーカーの歴史ではなく、100年以上にわたって“人の歩み”を支えてきたクラフトマンシップの証なのです。
