革靴好きなら一度は耳にする名前、クロケット&ジョーンズ。
1879年にイギリス・ノーサンプトンで創業した老舗ブランドでありながら、今も世界中の紳士たちを魅了し続けています。
今回はそんなクロケット&ジョーンズの「履き心地」に焦点を当て、その実力と快適さの真相を深掘りします。
履き心地を支える伝統製法と木型の精度
クロケット&ジョーンズの靴が「履き心地が良い」と語られる最大の理由は、伝統的なグッドイヤーウェルト製法にあります。
この製法は、中底にコルクを敷き詰め、その上にアッパーとアウトソールを縫い合わせる構造。履くほどにコルクが沈み、足の形に沿って沈み込むため、まるでオーダー靴のようにフィットしていきます。
また、同ブランドは木型(ラスト)の設計にも非常にこだわっています。
ラスト337や348といった名作木型は、ヒールカップの形状や甲の高さ、ウィズ(足幅)に微妙な差を持たせており、足型に合ったモデルを選ぶことで抜群のフィット感を得られます。
履き心地の“良さ”は、単なるクッション性ではなく「足と靴が一体化する感覚」によってもたらされるのです。
革が育つほどに増す快適性
新品のクロケット&ジョーンズを履いた瞬間、「やや硬い」と感じる人もいるでしょう。
しかしそれは高品質なフルグレインレザーを使っている証拠。履くうちに徐々に柔らかくなり、足に吸い付くような感触へと変化していきます。
特にオードリー(Audley)などの定番モデルでは、履き込むほどに甲の革がしなやかになり、中底のコルクが沈んで足裏に馴染んでいく過程が体感できます。
革靴の履き心地は“買った瞬間”ではなく“育てた時間”によって完成します。
クロケット&ジョーンズは、まさに「履きながら快適になっていく靴」なのです。
ソール構造と歩行時の安定感
履き心地を語る上で無視できないのがソールの構造。
クロケット&ジョーンズには伝統的なレザーソールだけでなく、「シティソール」や「ダイナイトソール」など、用途に応じた選択肢があります。
レザーソールは返り(屈曲性)が良く、履き込むほどに柔らかくなり、エレガントな歩き心地を楽しめます。
一方、ラバーソール系のモデルはグリップ力とクッション性を重視しており、雨の日や長時間歩く日にも安心。
特に“シティソール”は軽量で柔らかく、ドレス感を損なわずに快適さをプラスしています。
最新コレクションでは「コンフォート・カジュアル・ソール」と呼ばれるウェッジラバータイプも登場。
軽快な履き心地を実現しつつ、ドレス靴の上品さを保つ革新的な進化です。
モデルによる履き心地の違い
クロケット&ジョーンズの履き心地は、モデルや木型によって微妙に異なります。
例えば、ローファーのハーバード(Harvard)はアンラインド仕様(裏革なし)で、足当たりが柔らかく軽やか。素足でも心地よいと評判です。
一方で、ベルグレイブ(Belgrave)のようなドレスモデルは甲がしっかり締まり、フォーマルなフィット感が特徴。
ブーツ系のモールトン(Moulton)やアイリー(Islay)では厚めのソールが採用され、長時間の歩行やアウトドアシーンでも疲れにくい構造になっています。
つまり、同じブランドでも「どんな場面で履くか」によって快適性の印象は変わるのです。
ビジネスならオードリー(Audley)、休日の軽装にはハーバード(Harvard)やキャベンディッシュ(Cavendish)、悪天候時にはモールトン(Moulton)やアイリー(Islay)といった選び分けが理想です。
サイズ選びが履き心地を左右する
履き心地を最大限に引き出すには、正確なサイズ選びが不可欠です。
クロケット&ジョーンズの靴はUKサイズ表記で、日本サイズよりも若干大きめ。
さらにウィズ(E・F・Gなど)によっても履き心地が変わります。
日本人は甲が低く幅が広い傾向があるため、細めのラストだと踵が抜ける、逆に幅広ラストだと甲に遊びが出る場合があります。
購入前には必ず試着し、甲のフィット感と踵のホールドを確認するのがポイントです。
また、履き始めはやや窮屈でも、数回履くうちに革が伸びてちょうど良くなります。
「最初からゆるい靴」は、後にフィット感が失われやすいので注意しましょう。
日本人の足型と相性はどうか?
海外ブランドの革靴というと「日本人の足に合いにくい」と思われがちですが、クロケット&ジョーンズは比較的相性が良いブランドです。
その理由は、ラストの設計が多様で、細身からゆったりめまで幅広く展開されているから。
たとえば、ラスト314は甲高・幅広の日本人にも合いやすく、ローファーにも最適。
逆にラスト348のようなシャープなシルエットは、足幅が細めの人にフィットします。
さらに、日本正規代理店のスタッフはフィッティングに精通しており、的確なサイズ選びをサポートしてくれます。
この点も、国内で安心して選べる理由の一つです。
長く履くほど快適になる理由
履き心地が“完成”するまでに時間がかかるのがクロケット&ジョーンズの特徴。
それはマイナスではなく、「自分の足に合わせて育つ」靴だからです。
中底のコルクは体重のかかり方に応じて沈み込み、アッパーの革は足の形を記憶して伸びていく。
結果として、半年〜1年ほどで“自分専用の靴”のような履き心地になります。
履くほどに返りが良くなり、足の疲れも軽減。
まさに、時間をかけて完成する快適性と言えるでしょう。
履き心地を保つためのメンテナンス
どんなに優れた靴でも、手入れを怠れば快適性は失われます。
クロケット&ジョーンズの履き心地を長く維持するには、以下のポイントが大切です。
- 使用後はシューツリーを入れて型崩れを防ぐ
- 革が乾燥しないよう定期的にクリームで保湿する
- ソールが減ったら早めに修理へ出す
グッドイヤーウェルト製法の靴は、ソール交換が可能です。
これにより何十年も履き続けられるため、「快適性を育てながら維持できる」という点でもコストパフォーマンスに優れています。
高級革靴としての価値と快適さのバランス
クロケット&ジョーンズの靴は決して安価ではありません。
しかし、購入直後からの満足度だけでなく、履くほどに増す快適さと耐久性を考えると、その価格は十分に納得できるもの。
短期間で履きつぶすスニーカーとは異なり、手入れをしながら10年、20年と履き続けられる。
この「長く履ける快適さ」こそが、高級革靴の本質的な価値です。
クロケット&ジョーンズの履き心地まとめ
クロケット&ジョーンズの履き心地は、一言でいえば「時間とともに完成する快適さ」。
最初の数回は硬さを感じても、次第に足に馴染み、歩くほどに心地よさが増していきます。
伝統製法、上質な素材、丁寧な木型設計が組み合わさることで、履く人の足に合わせて変化していくのです。
高級革靴の実力とは、履き込むほどに「自分の靴になる」こと。
クロケット&ジョーンズは、その過程すら楽しめる稀有なブランドといえるでしょう。
本物の革靴の快適さを味わいたい人に、間違いなくおすすめできる一足です。


