オニツカタイガーとイタリアのデザイナー、アンドレア・ポンピリオ。この2つの名前を聞いてピンとくる人も多いかもしれません。伝統ある日本ブランドと、ヨーロッパの感性を融合させたコラボレーションは、今やオニツカタイガーのイメージそのものを変えたといっても過言ではありません。今回は、両者の出会いから歴代コラボモデル、そして現在のブランドに息づくポンピリオの哲学までをじっくり掘り下げます。
アンドレア・ポンピリオとは？イタリア発のクリエイターが持つ美意識
アンドレア・ポンピリオは、プラダやサンローランなど名だたるブランドで経験を積み、自身のブランドでも知られるイタリアのファッションデザイナーです。彼の特徴は、クラシックなスタイルにストリートの要素をミックスさせる“コントラスト”の美学。
この「対比」こそが、後にオニツカタイガーのリブランディングにも大きく影響を与えました。スポーツの機能美を持つブランドに、洗練されたモードの感覚を注入したことで、単なるスニーカーブランドから「ファッションブランド」へと進化したのです。
コラボの始まり：2013年に生まれた新しいオニツカタイガー像
オニツカタイガーとアンドレア・ポンピリオのコラボは、2013年の秋冬シーズンに始まりました。当時のラインナップはスニーカーだけでなく、アパレルやバッグなどトータルなコレクション。ブレザーにショーツ、レギンスを合わせるといった大胆なスタイリングも登場し、スポーツとファッションの融合という新しいスタイルを打ち出しました。
この第一弾の成功によって、翌年以降もコラボは継続。2014年から2016年まで、毎シーズンのようにコレクションを発表し、東京のファッションウィークでも注目を集めます。やがてこのラインは、オニツカタイガーのプレミアムシリーズとして定着しました。
代表的な歴代コラボモデルたち
オニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオのコラボでは、数々の個性的なモデルが生まれました。その中でも特に象徴的なのが以下のようなアイテムです。
- MEXICO 66 DX MT
ポンピリオらしいモードな感覚とオニツカタイガーの伝統的なフォルムが融合した名作。ストリートでも支持され、後のブランド戦略を方向づけた重要な一足です。 - 2015年 White Sneaker Collection
ホワイトを基調としたシンプルなデザインながら、素材感やラインの美しさが際立つ夏モデル。クリーンで都会的な印象が特徴でした。 - 2017年 “Urban Safari” コレクション
厚底スニーカーやカモフラージュ柄、メッシュ素材など、ストリートとミリタリーを掛け合わせたアプローチ。機能性とファッション性のバランスが絶妙でした。
これらのモデルは、限定生産が多く、今では中古市場で高値で取引されることもあります。コレクターズアイテムとしての価値も年々高まっています。
2018年、アンドレア・ポンピリオがクリエイティブディレクターに就任
2018年、アンドレア・ポンピリオは正式にオニツカタイガーのクリエイティブディレクターに就任します。ここからブランドの進化はさらに加速しました。
それまでの「コラボライン」という枠を超え、ブランド全体の方向性を統括する立場に。スニーカー、アパレル、バッグだけでなく、広告ビジュアルや店舗デザインにも彼の美学が反映され、オニツカタイガーは“トータルファッションブランド”として生まれ変わりました。
ポンピリオがもたらしたデザイン哲学
アンドレア・ポンピリオがオニツカタイガーに持ち込んだ美意識は、大きく3つの軸に整理できます。
- スポーツ×モードの融合
スポーツウェアの機能性を保ちながら、洗練されたシルエットと素材で日常に溶け込むデザインを追求。動きやすさと美しさの両立がテーマです。 - 日本の伝統とミニマリズム
白や黒、黄、緑といった限られたカラーパレットで構成された2023年のコレクションは、日本の伝統服や“引き算の美”からインスピレーションを受けたもの。和の要素を世界に発信しています。 - アーカイブの再解釈
70年代のトラックパンツやクラシックモデルを現代的に再構築するなど、過去の遺産を尊重しながら新しい形で蘇らせています。過去と未来の橋渡しをするのがポンピリオ流です。
2020年代以降のオニツカタイガーとポンピリオの挑戦
ポンピリオ体制以降、オニツカタイガーは国際的なファッションウィークでも注目されるブランドへ成長しました。2020年以降のコレクションでは、アートとの融合やサステナブル素材の導入など、新たな試みが続いています。
たとえば、2023年のコレクションでは“Japanese Minimalism”をテーマに、無駄をそぎ落とした造形美を追求。2025年春夏では、70年代の細身トラックパンツなどのアーカイブを現代的にアップデートしています。伝統を未来へつなぐデザインが、今のオニツカタイガーを支えています。
コラボレーションがブランドにもたらした変化
アンドレア・ポンピリオの参加によって、オニツカタイガーは単なるスポーツブランドではなくなりました。
- ファッションブランドとしての存在感が確立された
- 海外ファッションウィークへの定期参加
- 若年層からモード層までの新しい顧客層の獲得
- スニーカー以外のアパレルラインの拡大
こうした変化によって、オニツカタイガーは“着るブランド”から“生き方を表現するブランド”へと成長しました。スニーカーはもちろん、ジャケットやパンツ、アクセサリーまで一貫した世界観を築いています。
限定モデルの価値と現在の評価
初期のコラボモデルは少量生産が多く、今では入手困難なものも多いです。中古市場では、状態の良いものが高値で取引されることもあります。
また、ファッション業界全体で“アーカイブ”や“ヴィンテージ”への関心が高まっており、2010年代のオニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオも再評価の波に乗っています。新作コレクションに興味を持ったファンが、過去のモデルを探す動きも増えており、その価値は年々上がっています。
未来へ続くオニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオの系譜
今後もアンドレア・ポンピリオのクリエイションは、オニツカタイガーの中心にあり続けるでしょう。スポーツとモードの融合、日本文化と欧州感性の交差というテーマは、世界のファッションシーンでも独自の立ち位置を築いています。
スニーカーからアパレル、さらにはカルチャー全体へ──。オニツカタイガーとアンドレア・ポンピリオの挑戦はまだ続いています。これまでの歴代コラボモデルを振り返ると、その歩みこそがブランドの進化そのものであり、未来のヒントが詰まっているのです。
オニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオの魅力は進化し続ける
2013年から始まったオニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオの関係は、今やブランドの核心となっています。伝統と革新、和と洋、スポーツとモード。そのすべてが交わるこのコラボは、単なる一時的な流行ではなく、長く続く文化的な融合の象徴です。
これからのオニツカタイガーを語るうえで、アンドレア・ポンピリオの存在を抜きにすることはできません。彼が描く“新しいオニツカタイガー”の物語は、これからも進化し続けるはずです。
