Hender Scheme(エンダースキーマ)のmipシリーズは、スニーカー好きから革靴愛好家まで幅広い層に注目される存在です。見た目はスニーカーのようでありながら、製法は本格的な革靴。手仕事による温かみと素材の高級感を両立させた独自のシリーズです。今回はその中でも人気の高い「mip」シリーズの履き心地を中心に、素材の質感やサイズ感まで詳しく解説していきます。
エンダースキーマ mipシリーズとは?
まずはmipシリーズのコンセプトをおさらいしましょう。
「manual industrial products(マニュアル インダストリアル プロダクツ)」という名の通り、工業製品であるスニーカーを“手工業的に再構築”するというアイデアがベースになっています。大量生産のスニーカーを、あえて職人の手で一足ずつ丁寧に作り直す。それがmipシリーズの最大の特徴です。
たとえば、mip-04やmip-12などは誰もが知る名作スニーカーをモチーフにしていますが、素材はすべて高品質なレザー。ヌメ革やベジタブルタンニン鞣しのカウレザーなど、時間とともに風合いが増す天然素材を使用しています。この「育てる革靴スニーカー」という発想が、エンダースキーマらしさの象徴とも言えるでしょう。
素材の質感とエイジングの魅力
エンダースキーマ mipシリーズでまず感じるのは、革の存在感です。
アッパーには植物タンニンで鞣されたヌメ革が多く使われており、履き始めは明るいベージュのような色味。それが日光や摩擦、手の油分などによって徐々に飴色に変化していきます。使い込むほどに艶が増し、自分だけの風合いへと育っていく――まさに“エイジングを楽しむ靴”といえます。
ライニング(内側)にはピッグスキン(豚革)を使ったモデルも多く、足当たりは柔らか。直接素足で履いても不快感がなく、徐々に足に馴染んでいく過程を楽しめます。革の厚みはしっかりとありながらも、決して重すぎず、ほどよい張り感と上品な艶が共存しています。
また、ソールにはレザーソールを採用したモデルが多く、そこにラバーを貼り付ける「ハーフラバー仕様」も選択可能。滑りにくく耐久性も高いため、街歩きにも十分対応できます。職人による手作業での仕上げが多く、一足一足に微妙な個体差があるのも魅力のひとつです。
履き心地の実際:革靴のようでスニーカーのよう
肝心の履き心地については、一般的なスニーカーとはかなり異なる印象です。
最初に足を入れたときは、しっかりとしたホールド感と革特有の硬さを感じます。スニーカーのように“ふかふか”したクッション性はなく、どちらかといえばドレスシューズに近いフィット感。しかし、数回履くだけで革が徐々に柔らかくなり、驚くほど足に馴染んできます。
履き口がタイトに作られているモデルも多く、初めて履くときはシューホーンが必要になることもあります。ただ、その分、履いてしまえば足全体を包み込むような安心感があり、ホールド感の高さは抜群です。
クッション性は控えめながら、ライニングとインソールの柔らかさが効いており、歩行時のストレスは少なめ。革靴らしい「地面を感じる感覚」と、スニーカーらしい「軽やかさ」の中間に位置する履き心地です。
サイズ感とフィッティングの選び方
エンダースキーマ mipを選ぶうえで重要なのがサイズ感です。
多くのショップスタッフやユーザーのレビューによると、mipシリーズはスニーカーよりも革靴に近いサイズ選びが基本。たとえば、普段スニーカーで27cmを履いている人なら、mipでは「26.5cm相当(サイズ5)」がちょうど良いことが多いようです。
理由は、レザーが履き込むうちに伸びていくから。初めは少しきつめでも、数回履けば自分の足型に合わせてフィットしていきます。逆にスニーカー感覚で大きめを選んでしまうと、履き込むうちにゆるくなってしまう可能性があるので注意が必要です。
また、履き口が狭いモデルでは最初の足入れがやや大変。革が馴染むまでは、シューホーンを使って慎重に履くのがおすすめです。革靴のように“育てる感覚”で付き合うと、最終的には驚くほど足になじみ、快適な履き心地へと変化します。
実際の使用感とエイジングの過程
実際に履いてみると、エンダースキーマ mipは「時間とともに完成する靴」という表現がぴったりです。履き始めは硬く、足の甲やかかとに少し当たる感覚がありますが、革が柔らかくなると驚くほどしなやかに変化します。アッパーには自然な皺が入り、色味は深く艶やかに。履くほどに愛着が増していくタイプの靴です。
一方で、クッション性を重視する人や軽さを求める人にはやや重厚に感じるかもしれません。ソールも革靴仕様のため、ランニングシューズのような反発感はありません。ただ、その“重み”こそがエンダースキーマらしい存在感を生み出しています。
街歩きや通勤など、日常使いには十分な快適性を持ちつつ、スニーカーでは得られない上質な質感と履き込む楽しみが味わえます。とくにレザー好きにはたまらない一足でしょう。
素材ケアと長持ちさせるポイント
mipシリーズを長く愛用するためには、革のケアが欠かせません。
履いた後はブラシでほこりを落とし、定期的に革用クリームを塗って保湿することで、ひび割れや乾燥を防げます。ヌメ革は水に弱いため、防水スプレーを併用するのもおすすめです。履き込むうちにできる皺や色ムラも、この靴の“味”として楽しめます。
また、レザーソールを採用しているモデルでは、底がすり減る前にハーフラバーを貼っておくと耐久性がアップします。公式でもラバー補強のオプションが用意されており、雨の日でも安心して履けるようになります。
どんな人におすすめ?
エンダースキーマ mipは、すべての人に“快適なスニーカー”とは言えません。しかし、以下のような人には間違いなく魅力的な一足になるはずです。
- スニーカーのデザインが好きだが、素材には上質さを求めたい人
- 革靴の質感や経年変化を楽しみたい人
- 一足の靴をじっくり育てたい人
- ファッション全体を引き締める存在感を求める人
一方で、軽くて柔らかいスニーカー感覚を求める人には少しハードルが高いかもしれません。mipシリーズは「履くほどに馴染む」という前提を理解したうえで選ぶことが大切です。
エンダースキーマ mipの履き心地まとめ
エンダースキーマ mipは、見た目の新鮮さだけでなく、履く人のライフスタイルに寄り添う“育てる靴”です。
履き始めは硬く、やや無骨に感じるかもしれませんが、革が柔らかくなった瞬間にその印象は一変します。足を包み込むようなフィット感、深みを増す革の艶、そして使うほどに愛着が湧く過程。どれもこのブランドならではの魅力です。
革靴とスニーカーの中間に位置する独自の存在として、長く履くほどに自分の一部になるような特別な体験を与えてくれる――それがエンダースキーマ mipの履き心地です。
時間をかけて育てたい靴を探しているなら、このシリーズは間違いなく有力な選択肢になるでしょう。


