靴の中にインソールをもう1枚重ねる「重ね敷き」。
サイズが少し大きい靴のフィット感を調整したり、クッション性を高めたいときに試したことがある人もいるかもしれません。
一方で、「重ねるのは良くない」「足に悪影響が出る」といった声もあります。
では実際のところ、インソールの重ね敷きは効果的なのでしょうか?
この記事では、専門家の見解や注意点を踏まえて、正しい使い方をわかりやすく解説します。
インソールを重ね敷きする理由と目的
そもそもなぜ、インソールを重ねて使う人がいるのでしょうか。
多くの場合、以下のような理由があります。
- 靴が少し大きく、フィット感を調整したい
- 歩行や立ち仕事で足が疲れるので、クッション性を強化したい
- 身長を少し高く見せたい、左右差を補正したい
- 既存のインソールに機能を追加したい
特に「靴が大きい」「かかとが浮く」といった悩みは多く、重ね敷きによって厚みを増すことで解消される場合もあります。
一時的な調整手段としては理にかなっているように見えますが、実は注意すべき点が少なくありません。
重ね敷きで得られるメリット
条件さえ合えば、重ね敷きには一定の効果があります。
フィット感の改善
靴が少し緩いとき、インソールをもう1枚追加すると内部の空間が減り、足が安定しやすくなります。
かかとが浮きにくくなり、歩行時のズレや摩擦を軽減できることもあります。
クッション性の向上
薄手の靴や長時間の立ち仕事では、衝撃吸収性の不足が足裏の疲労につながります。
柔らかいインソールを1枚重ねることで、着地時の衝撃が和らぎ、膝や腰への負担が減る場合があります。
サイズ調整や高さ補正
左右の足の長さが微妙に違う人や、靴の製造誤差でフィット感が異なる場合、下に薄いインソールを敷くことで微調整できます。
また、ヒールアップタイプを上に重ねることで、身長を少し高く見せることも可能です。
ただし、これらの効果はあくまで「靴と足の条件が合っている場合」に限られます。
無理に重ねると、かえって足を痛めることもあります。
重ね敷きに潜むデメリットとリスク
一見便利に見える重ね敷きですが、専門家の多くは「基本的に1枚使いが原則」と話します。
なぜなら、靴やインソールはもともと1枚を前提に設計されているからです。
靴の中が狭くなり、指先を圧迫する
厚みが増えることで、つま先の空間が減ります。
足指が自由に動かせなくなると、血行不良や痛み、巻き爪などの原因になることがあります。
また、足が前に押し出され、靴擦れを起こしやすくなることもあります。
インソールの機能が干渉する
アーチサポートや立体構造のあるインソールを2枚重ねると、形状の凹凸がぶつかり、足裏が不自然に傾く場合があります。
本来のサポート機能が失われ、かえってバランスを崩すことになりかねません。
歩行の屈曲点がずれる
靴底が自然に曲がる位置(屈曲点)は、足の関節の動きに合わせて設計されています。
厚みを増やすことでその位置がズレると、歩行時に違和感が出たり、前足部に負担が集中したりします。
安全性が低下することも
特に安全靴やワークブーツでは、設計通りの厚みや形状が保たれなくなると、耐衝撃性能や通気性に影響します。
靴本来の性能を損ねるリスクがあるため、重ね敷きは推奨されません。
専門家の意見:「重ね敷きは例外的に使うべき」
義肢装具士や靴職人、シューフィッターの多くは「重ね敷きは例外的な調整手段」としています。
特に次のような条件を満たす場合のみ、一時的に行っても問題ないとされています。
- 靴が少し大きく、内部に明らかな余裕がある
- 下に敷くインソールが平らで薄い素材
- 上に敷くインソールが主機能を担う(サポート・クッションなど)
- 足指が圧迫されず、かかとがしっかり収まる
つまり、**「重ねること自体が目的」ではなく、「靴のフィット感を微調整する手段」**として限定的に行うのが正しい考え方です。
正しいインソール重ね敷きのやり方
もし重ね敷きを試す場合は、次の手順を意識しましょう。
- まず靴のインソールを外してみる
取り外せるタイプなら、まず既存のものを外し、新しいインソールだけを入れてフィット感を確認します。
これだけで十分に改善するケースもあります。 - それでもゆるい場合のみ、下に薄いインソールを追加
重ねる場合は、下に薄手で平らなインソールを入れるのが基本。
厚みのあるタイプを重ねると足が圧迫されやすくなるので注意が必要です。 - 履いた状態でつま先やかかとの余裕を確認
歩いたときに足が前に押されないか、指先に当たらないかをチェックします。
圧迫感や違和感があれば、すぐにやめましょう。 - 使用後も定期的に状態をチェック
長時間使うと、インソール同士がずれたり、へたったりします。
定期的に外して形状を確認し、交換時期を見極めましょう。
重ね敷きが向いている人・向かない人
向いている人
- 靴がわずかに大きい
- 足の甲が低く、内部に余裕がある
- クッション性を少しだけ足したい
- 一時的に高さを調整したい
向かない人
- 靴がタイトフィットで、余裕がない
- 立体構造のインソールを使っている
- 長距離ランニングや激しい運動を行う
- 安全靴や職場指定の靴を履く
靴の種類や目的によって、重ね敷きの可否は大きく変わります。
たとえばスポーツシューズの場合、靴底の屈曲や反発力が性能に直結するため、厚みの変更は避けるべきです。
重ね敷き以外のおすすめ調整方法
「少し緩いけど、重ね敷きは怖い…」という人は、次の方法を試してみるのもおすすめです。
- 厚手の靴下を履く
靴下の厚みを変えるだけでも、フィット感はかなり調整できます。 - 部分パッドを使う
かかとや甲の部分に貼るパッドを使えば、局所的にフィット感を高められます。 - サイズ調整インソールを使う
靴のサイズを半サイズ程度小さくできる専用タイプもあります。
重ね敷きより安全で、靴の設計を崩しにくいのが特徴です。 - 専門店でフィッティングを相談
足の形や歩き方を測定してもらい、最適なインソールを選ぶのが一番確実です。
重ね敷きをする前に知っておきたい3つのポイント
- 「快適さ」と「安全性」は別物
柔らかい感触が一見快適でも、長期的に見ると足裏の筋力低下や姿勢の崩れにつながることがあります。 - 靴の設計を変える行為であることを理解する
メーカーは1枚のインソールを前提に靴を作っているため、厚みを加えることで想定外のバランス変化が起こる可能性があります。 - “応急処置”と割り切る
重ね敷きはあくまで一時的な対策。根本的には「足に合う靴」と「適切なインソール選び」が大切です。
インソールの重ね敷きは効果的?まとめと最終アドバイス
結論から言うと、インソールの重ね敷きは「一部の条件下では効果的」ですが、基本的には推奨されません。
靴に余裕があり、下敷きを薄く調整するなど慎重に行えば、フィット感やクッション性を改善できることもあります。
しかし、足指の圧迫や歩行バランスの崩れといったリスクがあるため、常用は避けたほうが安全です。
迷ったときは、専門店や靴修理店、シューフィッターに相談するのが確実です。
あなたの足型や靴の特徴に合わせたアドバイスを受ければ、無理のない快適な履き心地を得られるでしょう。
インソールの重ね敷きは、「万能な改善策」ではなく、「一時的な調整手段」。
靴選びとインソールの組み合わせを見直すことで、もっと自然で快適な歩行へとつながります。


